クナド国記「春姫」本筋シナリオの感想・レビュー

ライターが考えた中二的世界観の設定を、面白みも無く諾々と読まされたような感じ。
全能チートキャラ夏姫はその異能により新たな生命(春姫)まで創出してしまった。
夏姫の異能は次第に強化され、ついには世界と一体化する程までになる。
世界の驚異となる敵を倒さずに放置していたのは自分の存在を確信する指標とするため。
だがいよいよ世界と完全に同化する寸前、自分が創った春姫に敵の討伐を促される。
アッサリと敵を倒した夏姫だが瓦解する敵の中から主人公を見つけて人間と言ってしまう。
すると言霊の力により夏姫は人間化し流れ弾が当たって死にそうになる。
そこで敵の再生する力を利用することで死を免れ、主人公をスパイユニットとして派遣した。
最終的に主人公が自らを犠牲にして夏姫の野望も敵の侵略も止め世界を平和にして終わる。
エピローグではアッサリと主人公が復活して超ご都合主義的ハッピーエンドとなる。

ライターの考えた妄想的中二国家の記録を読まされてる感が強い

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  • メインヒロイン春姫の存在が途中からどっかへ行っちゃった(実質夏姫√)
    • 世界設定は金属とか鉄とかが人類の脅威として敵となっている世界観。人々は小国を形成し敵に抗いながら生き延びていた。人類が生き延びることが出来たのは異能を獲得したから。中でも言霊を操り、言ったことの全ての事象が現実となる異能が最強だった。この言霊の使い手の中でも特異的な力を発揮したのが夏姫。彼女はハイパーチートキャラであり何でもできた。その能力は交配をせずとも新しい人類を創出できてしまうほど。春姫はこれにより作られた。しかしハイパーチートキャラであるが故に、並び合う他者がおらず、自己の存在が曖昧となっていく。ついには世界と一体化していく。
    • 夏姫が敵を殲滅できるのにしなかったのは、敵がいることで自己の存在を確定できるから。そのため夏姫は自分の存在が無くなる寸前まで敵を倒そうとはしなかった。だが夏姫に創り出された同じ言霊遣いである春姫は、夏姫に敵を倒すように述べ、言霊が現実化する。こうして夏姫はようやく敵を倒しに行く。敵はアッサリ倒せた。やったね。この戦いの中で夏姫が瓦解する敵を見ていると、なんと崩れ行く敵の身体の中に人間を発見する。これが主人公であった。夏姫は思わず「人間」と言ってしまったため、自分が神に近い身体からフツーの人間化し、流れ弾に当たって瀕死となる。初めて痛みを経験した夏姫は敵が再生しようとしていたのを利用して存在の消滅をとりとめる。そして主人公に異能を施すと春姫の下へスパイユニットとして送り出すことになる。
    • そしてラストバトル。春姫は直前で戦力外通告。主人公のみバトルに赴く。金属の敵は人間が怖いから恐怖により襲い掛かってきていただけだったことが判明する。そのため勝たせてあげることで納得し、金属の敵の問題は解決する。そしてハイパーチートキャラ夏姫の精神的問題もケアする。主人公は自分の命を賭して金属の敵および夏姫の問題を解決する。主人公は国の記録を書き記しており夏姫に題名を請う。夏姫はクナドという。日本神話で死んだイザナミを迎えに黄泉の国にイザナギが行った際、逃げ帰ったイザナギがバリヤー的なものに使った杖がクナドなのだとか。そしてエンドロールが流れてイイハナシダナー的な演出が無理やりなされて終わる。だがエピローグで夏姫はアッサリ復活する。ここで春姫が夏姫に対して世界がどうなってもいいから主人公がいて欲しかったと、セカイ系的なワガママを言う。神に近い言霊遣いであった春姫が人間らしいエゴを発揮したことがポイント。夏姫は消滅して主人公が復活する。ハッピーエンドとなる。
    • 雰囲気的には疑似的な国家の『うたわれるもの』とか『千の刃濤』に近いが、結局夏姫という個人を巡る問題に終始してしまい国家経営とか内政プレイが全て置き去りにされた。社会体制の話とかに入りかけても、用語の羅列がチョロっとでるだけで全然掘り下げないで終わるので薄っぺらすぎる。こんな程度なら最初から入れなければ良かったのにと思うレベル。喫茶店作っただけで貨幣経済とか。ジャンプラの『ハイパーインフレーション』レベルとまでは行かなくとも、もう少しちゃんと描いて欲しかったものよ。また人類の脅威となっていた金属の敵というのも上手く扱えておらず、強引に風呂敷を畳んだ感じが強すぎる。シナリオやストーリーを楽しむというよりは、作者の考えた中二的世界観の設定を追っていくだけの記録という感じ。その点だけ挙げればまさに国記と言えよう。

 
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