ブルーアーカイブ「魔法少女ヘヴィキャリバー~エラの野望と正義の資格~」の感想・レビュー

守月スズミ物語。力の行使とその正当性、力を振るう責任を負う覚悟に関するおはなし。
スズミは自警団として自主的に治安維持活動に従事し街の秩序を守っていた。
だがしかし、不良たちから自警など暴力に基づく従属支配にすぎないと詰られる。
すなわち何の正当性も無く他者を暴力で服従させているのは不良と同じ穴の狢だというのだ。
不良の苦し紛れの難癖はスズミの図星を突くものであり彼女のトラウマを刺激した。
スズミは元正実だったが共同生活を前提とした集団行動に馴染めず退部した過去があった。
それでも街の治安を守りたいという思いから自主的に野良活動を行っていたのだが……
PTSDが発動したスズミはメンタルクラッシュし、自警団を辞めることを考えてしまう。
それを救うのが宇沢たちでありニチアサ魔法少女系変身戦闘ヒロイン女児アニメから力の行使を学ぶ。
たとえ正当性が無くとも誰かを守れる力を正しく行使できれば正義は後からついてくる。
宇沢との魔法少女活動により改めて正義とは何かについて考えたスズミはトラウマを克服する。

スズミ的帰納法~正しい力の行使の積み重ねがきっと正義になるんだよ~

共同生活に基づく集団行動に馴染めなかった守月スズミ
  • 共同生活を前提とした集団生活に馴染めなかったスズミ
    • 本イベストの主人公は守月スズミ。彼女は自警団として自主的な街の治安維持活動で社会に貢献していたが、ある時不良を鎮圧した時にトラウマを抉られることになる。不良はスズミが公的に認められた治安機関に所属しているわけでもなく暴力で無理やり自分の良いように他者を服従支配させているだけだと責め立てる。不良と同じ穴の貉なのではいかと糾弾されるのである。これらの非難はボコされたスケバンたちの最後っ屁みたいなものであったが、スズミの黒歴史を刺激するものであり、メンタルクラッシュする。そのショックはかなり大きく、スズミは自警団を辞めようとする程であった。
    • 元々スズミはきちんとした公的機関に所属し、その上で行政サービスに基づく市民生活の向上として治安維持を提供し、平和な街を守りたかった。本当に純粋無垢な思いを掲げて正実(※正義実現委員会・ブルアカ界の治安機関の一つ)の門を叩いたのだが……。正実は軍隊のような組織であり徹底した上下関係と厳しい規律に基づく集団行動を尊んでおり共同生活を強いられたのである。スズミは思春期において他者の目から自分がどのように映るか過敏になっている年頃であり、必要以上に他者と合わせようとしたため次第に疲弊していった。結局、その先に待っていたのは挫折であり、憧れであった正実に入ったのにそこからドロップアウトしたという深い失敗体験は、スズミのトラウマとなったのであった。一人になったスズミは孤独になったが、静かで平穏な日々を甘受することができ、次第に寛解されていった。スズミは自分が集団生活に馴染めないと認識した上で、それでも平和な社会を守りたいという思いは消せず、自主的に自警団を名乗り活動を始めたのであった。

 

スズミと先生の初めての時の想い出
  • 力を使う根拠と正当性に関する一考察~ニチアサ魔法少女系変身戦闘ヒロインを中心に~
    • スズミに問われる問題は力を行使する正当性について。自警団活動はスズミが勝手にやっていることであり、そこに正当性の根拠はない。正実が暴力を用いて反社会体制を鎮圧できるのは、行政機構の一つとして組織されているから。すなわち公的に保障された「正義」により暴力が正当化されているのである。それ故、スズミは自警団活動を辞め市井に埋没しようとするのだが……そんなスズミの助けになるのが、彼女を慕う自警団仲間である宇沢のニチアサ知識であった。
    • 辞職の二文字がチラつくなかで、スズミは遊園地における治安維持活動を行うことになる。そこで潜入調査の一環としてキャストに紛れるためにニチアサ魔法少女系変身戦闘ヒロイン女児アニメのコスチュームを身に纏うことになった。ニチアサを視聴しているユーザーの皆さんはご存じであろうが、近年のニチアサ魔法少女系変身戦闘ヒロインは中々含蓄深い内容となっており、少女の挫折や葛藤が丁寧に描かれることも多い。わんぷりでは動物愛護を唱える純真な少女に対して人類が経済活動により種々の動物を絶滅に追いやった現実が突きつけられるし、ヒープリでは地球環境の保護と向き合う少女に対し地球を一番汚しているのは人類である糾弾する。まさに力を使う根拠と正当性を問われるのがプリキュアという作品であり、スズミイベストではこれをメタっているところに面白みがある。宇沢の役割はこのニチアサ魔法少女系変身戦闘ヒロインのテーマ性をスズミに伝えることにあったのだ。

 

先生を守ったことで自分の力の使い方の意味を知るスズミ
  • 力を振るう正当性とは何か~スズミが出した答え~
    • メンタル不調の中でスズミは敗北を喫してしまうが、それでもこどもたちの「ぷいきゅあがんばえー」の力で立ち上がる。劇場版プリキュアではミラクルライトを振って敗北しかけたプリキュアを復活させ皆の力で元気玉を打つが、本イベストもその原理である。そしてスズミが力を振るう正当性について答えを出すきっかけとなるのが我等が先生なのである。先生は悩めるスズミに対し、初めて先生が指揮を執った日のことを引用しながら、彼女を励ます。これにより彼女の承認欲求と自己肯定感は満たされていく。そう、スズミは先生にとって初めての女(のうちの一人)なのである!!。そして戦闘の最中、先生が敵から攻撃を食らった際に、スズミは身を挺して先生を守護する。その時、スズミは気づくのだ。自分が力を振るう理由を。「誰かを守る力がこの手にあって、たとえそれが正義ではなくとも。その力を私が私の手で正しく使うことができるのであれば――それだけで十分なんです」とスズミは答えを出して覚醒する。
    • 言うなれば正実が正当性の下で力を振るうのは演繹法。スズミが皆を守るために力を行使することを積み重ねて正当性を得ることは帰納法であろう。スズミは自分の立場が不良のようなものと認めた上で、それでも皆を守ることを諦めない。宇沢と共にプリキュア的決め台詞を引用しながら必殺技を放つシーンは是非見て欲しい演出となっている。おススメ!「みんなの平和のために!誰ひとり分かってくれなくても!どんなときだって!私たちは……今日も守ってみせる!」との言葉はまさにスズミや宇沢の自警団活動のメタファーも同然であった。中高生という多感な時期は自己の存在理由や生きる価値について悩む。レゾンデートルについて考える。独文で云えば疾風怒濤の年代であるから当然である。自分の命の使い方、人生の意義、社会における個人の役割、自分の役目。色々と言葉はあれど、スズミは自分の人生を少し深めることができたのであった。
「誰かを守る力がこの手にあって、たとえそれが正義ではなくとも。その力を私が私の手で正しく使うことができるのであれば――それだけで十分なんです」
力を振るう意味とその正当性
スズミ×レイサの自警団コンビも尊い