『いろとりどりのヒカリ』〜セカイ再構築編の感想・レビュー〜

『いろとりどりのヒカリ』はセカイの観測者としての使命を放棄したことにより自責の念にかられるおはなし。
前作『いろとりどりのセカイ』の攻略ヒロインたちは全て正ヒロインを救済するための捨て駒でした。
その捨て駒を踏み台にし正ヒロインと穏やかな生活を送る主人公くんでしたが、悔恨がフラッシュバックします。
そうして折角得た安寧を捨て正ヒロインを置き去りにし再び『いろとりどりのセカイ』へと回帰していくのでした。

『いろとりどりのセカイ』の概略

『いろとりどりのセカイ』は正ヒロインの真紅ゲーです。はっきりいって全ては真紅のためにあります。主人公くんはセカイの観測者でしたが、恋というものが知りたくなります。そこで恋に生きる少女;藍を拉致して色々と話を聞くうちに、藍の姉である真紅に興味を持ち始めます。そうして主人公くんは真紅と恋をするために、セカイ構築を行います。そのセカイとは主人公くんと真紅が協力して少女救済をすることにより、二人のフラグを立てるためだけにあるセカイでした。そのセカイを成り立たせるために仕立て上げられたのが『いろとりどりのセカイ』のヒロインズなのでした。主人公くんはゼロから恋を知るために記憶を消去し、自作自演のシナリオとキャラクターをプレイしていくことになったのです。まさに世界観を成り立たせるためだけの装置的なヒロイン!!これがいわゆる「安易なキャラゲーを脱するためヒロインに存在意義をもたせようとしたらただの装置になっちゃたよ」状態ですね(リトバスやスマガなどが代表例)。そんなわけで真紅と二人で少女救済をし、各ヒロインのシナリオを通して恋することを学んだ主人公くんは、真紅を攻略するために獅子奮迅。結局、セカイの観測者としての役割は真紅の妹の藍が代わってくれることになりハッピーエンドを迎えたのでした。ですが、主人公くんは自分のいいようにヒロインたちを構築したことや、藍を代償として真紅と結ばれたことに煩悶を抱いているのでした。

正ヒロインとの後日談からセカイ再構築までの流れ

続編の『いろとりどりのヒカリ』は、正ヒロイン真紅と改編後のセカイで過ごすところから始まります。改編後のセカイでは「いろとりのセカイ」とは異なる「現実的な」悩みを抱いた少女たちとして捨て駒ヒロインたちが再集合します。加奈は海洋学者であるママンに留守番にされ、澪は両親が不仲で家庭不和、その他ヒロインもそんな感じ。そんな悩める少女たちの寂しさを紛らわせ、少しの助けとなるために、真紅は学生寮にヒロインズを集め、時間を共有していたのでした。その真紅の優しさに報いるために、ヒロインズたちは、真紅の悩みに協力してくれることになります。真紅先生のお悩みは、自分の「女」としての魅力に自信を持てないこと。そのため、各ヒロインズたちから「お嫁さんクラブ」と称して「女」としての魅力を磨くことになります。この「お嫁さんクラブ」では各ヒロインが一つずつ講釈をするのですが、そのスキルを真紅が身につけると、少女たちの悩みは偶発的に解決されて学生寮から去っていくというシステムになっております。そして、誰もいなくなった。一方で主人公くんは、藍にセカイ観測者としての役割を押し付け、真紅と穏やかな生活をしていることに後ろめたくおもっているのでした。また真紅とフラグを構築するために、捨て駒ヒロインたちに悲劇の役割を押し付けたこともシコリとなっていました。そんな悔恨もあってか、主人公くんは再びセカイの意思とやらから呼び戻されます。そして主人公くんなりのプレゼントとして真紅の名前入りウェディングヴェールを手渡すと、「いろとりどりのセカイ」へと回帰していくのでした。取り残されちゃう真紅先生。こうして各捨て駒ヒロインズたちのアフターストーリーを選択できるようになるという仕掛けなわけです。

観波加奈√の概略

「いろとりどりのセカイ」で主人公くんが加奈に課したシナリオは「母親の死に際に喧嘩別れし看取ることもできず、神隠しにあったセカイで知識を餌とする害虫に脳内を食いつぶされていく」という悲劇でした。そのため、記憶を食われないようにするため加奈は必死に読書に励むという設定にされていたのです。主人公くんは前作1周目のプレイでは記憶が消去されているため、自分で設定したキャラクター表現であるとは露知らず、加奈の少女救済劇に奮闘するのです。そんな加奈が主人公くんに救われた後のアフターストリーが描かれていきます。このシナリオのテーマとなっているのが「お母さんは、子どものためなら、セカイの法則さえ捻じ曲げる」ということです。シナリオの大局は主に2つの展開に分かれており、第1段階が狐の娘「蓮」のお母さん探しで、第2段階が加奈の母親との和解です。前作で蓮の母親の白は魂狩りにあってしまうわけですが、その魂が回帰してきたので、回収に向かうというものです。時空の扉で異世界ジャンプを繰り返し「いろとりどりのセカイ」(文字通りとしての)を経験する描写が分量の大半を占めています。結果としては、紆余曲折を経て蓮は白の魂と邂逅することができ、蓮はきちんと「さよなら」とお別れをし、白は娘の自立を確信します。そしてライターの輪廻転生解釈を聞かされるのです。「死んだ魂は生まれ変わって新しい命となるので、年下の子たちは自分の大切な人かもしれないから優しくしなさい」と言われましたよ。次に加奈シナリオの第二段階ですが、今度は加奈自身の母親との邂逅です。加奈ママの魂はあっけなく発見されました。加奈ママの願いは、加奈と綺麗な景色を見ること。加奈の願いはママンと「さよなら」することです。主人公くんは加奈の願いを叶えてやろうと、打ち上げ花火を点火するのでした。綺麗な景色見れたよ!!こうして加奈の未練は解消され、主人公くんとの子どもにママンの魂が転生するといいねと結婚します宣言でハッピーエンドでした。