人類の歴史を変えた8つの出来事?・? 岩波ジュニア新書  2012

中高生向けに8つのテーマから歴史的背景を考えさせてくれる内容。
8つのテーマは、言語・宗教・農耕・お金・民主主義・報道機関・原子爆弾である。


そのテーマそのものを解説するのではなく、あくまでも歴史的な変遷を考慮して語ってくれる。倫理と世界史の教科書の記述をテーマに沿って再構成し、世界史で説明してくれないところ・理解しにくい所を平易なですます調で解説している。読み物としては面白いものとなっており、なかなか楽しめた。どうでもいいことだが、8つの出来事の「産業革命」と「原子爆弾」は、前者は科学技術発展史であるし、原子爆弾も戦争形態の変遷を扱うものなので、厳密には「産業革命」、「原子爆弾」とはいえないような気もする。まぁサブタイトルの見出し的なインパクトを与えるために、このように設定したのかもしれないが。


昨今はグローバル・ヒストリーがブームであり、そこにおいて文明史・人類史といった比較的スパンの長い期間を射程にすることが唱えられているが、その観点で書かれたとも考えることができる。また言語帝国主義・人間の生存理由と宗教の意義・農耕牧畜と新石器革命・貨幣の誕生から金融経済への進展、報道機関と権力の癒着、衆愚政治と民主主義の腐敗、産業史における技術発展の要因、国民国家の総力戦体制における戦争形態の変化などの基礎となる考え方が述べられているので、それらに対する興味を植え付けることができることもできるだろう。