猫撫ディストーションExodus「出エジプト編・黙示録編」の感想・レビュー

哲学思想ゲーファンディスク。本編のギズモ√の補完と背景設定の伏線回収が行われるはなし。
本編ギズモ√では唐突に打ち切られ現世でギズモに似た少女と結ばる尻切れトンボ展開だったが・・・
琴子及びギズモと協力し無限ループを繰り返す世界から脱出し、ギズモを中心とした世界改変を行う。
琴子は可能性世界でしか存在できず、主人公はギズモの世界を確定するのである。
最終的に猫神が信仰される世界が創出されており、琴子も猫耳少女として迎え入れられる。

雑感とか


  • 琴子死亡後の七枷家崩壊
    • 七枷琴子は三年前に死亡した。それ以来七枷家は空中分解。父親は仕事に逃げ、姉は主人公くんと子作りをすることで琴子の生まれ変わりを求めたが主人公くんに拒絶されてヤンキーになり、母は何とか家族を維持しようとした結果すり切れた。主人公くんは琴子が死んだ世界を認めることはできず無職ニートと化した。主人公くんが唯一言葉を交わすのは、猫のギズモのみ。主人公くんはこの猫を琴子が転生したものと見なすことで自我の均衡を保とうとした。主人公くんは母はパートで稼いだ金を一日千円与えられ、日中はプラプラする毎日を送っていた。家族の間では会話もなくなり、こうして七枷家は崩壊していったのである。


  • 可能性世界の出現
    • 琴子死亡後、父親は七枷家崩壊に際して世界改変を試みる。七枷家を家ごと可能性世界へと吹き飛ばしたのだ。主人公くんは偶々ショッピングモール内で閉店時間過ぎまで昼寝をしており閉じ込められていたおかげで無事であった。主人公くんが家に帰るとそこには消滅した家と大穴が。こうして最初の主人公くんは可能性世界で七枷家が繰り広げる世界改変の観測者となったのである。本編では主人公くんが一人のプレイヤーとして七枷家の皆さんと永遠を求めて答えを見つけていく。姉√は全てを鉱物とすることで物事を確定させて永遠を得ようとした。母親√では家族を植物に引いては世界と一体化させることで永遠を得ようとした。ギズモ√では猫を否定し現世と戻ることで新たな出会いを獲得。柚√では幼馴染みを選ぶことできちんと現実に生きることを選んだ。こうして可能性世界の中において主人公くんは本編において様々な多元宇宙を確定していったのである。



  • 出エジプト編における可能性世界
    • 数多の多元世界を観測者として確定させていった主人公くんだが、そこに死んだ琴子の救いはなかった。故に琴子が救われる永遠を求めようとする。ここで全体の観測者としての主人公くんと一人のプレイヤーにしか過ぎない主人公くんが同期を始める。琴子を救うには永遠とループを繰り返すしかない。このループを壊すことができるのは猫耳メイドのギズモの存在。ギズモは主人公くんが琴子の代償として求めたものであるので、猫のギズモを人間にできれば琴子に執着してループを繰り返すこともなくなるのである。琴子は閉じられた世界にバグを起こすことでループ世界を壊そうとする。その時、プレイヤーとしての主人公くんを守る装置となるのが永久装置として見立てた「ししおどし」。あの和風の庭にあって水がチョロチョロすると竹がカッコンとするやつですよ。主人公くんは琴子死亡後、時間を認識することを拒絶していた。なぜなら時計をみると時間が伸びたり縮んだりしているように感じるからだ。しかし「ししおどし」で計測する視覚と聴覚での時間の把握では守られているように感じるではないか。このことを琴子は竜安寺の石庭や桂離宮を引用しながら次のように解説してくれます。「この音が竹と石のぶつかる音にしか聴こえなければ、何も観ることはできません。でも、この響きの中に永遠を観たのなら、ただの裏庭が広大な宇宙にも観えるでしょう……庭の中のさまざまなモノを宇宙に『見立て』ているんです。それを観測することで観る者の中に世界を創り出す」。主人公くんはギズモを人間にする過程において世界を観測することとし、新たな世界を創出するのであった。
    • ちなみに琴子は可能性へと還った。ループ世界を永遠としようとしていた超越者としての主人公くんは、観測対象がいなくなってしまった世界で過ごすことになった。そこへ可能性を確定させることのできる姉さんが現れ、観測対象の居なくなった世界を固定化させて幕を閉じる。



  • ギズモ世界
    • 新たに世界創出されたギズモ世界では、猫神が崇拝されており、その化身として猫耳少女が出現する世界であった。琴子が産まれなかった世界でもある。琴子以外の七枷家は可能性世界の姿のままで再び家族を構成しており、主人公くんも無職ニートを脱していた。主人公くんは猫耳少女ギズモに人間の価値観や思考を教えながら家族とは何かについて考えていく。人間は家族を形成し子をなし未来に繋げ拡散していく。「人間はときどき『世界』を観すぎて、自分が人間だってことも忘れちまう。だから自分たちが『命』であることをいつも見続けることができるように『家族』ってのがあるんじゃないかな?」。こうして主人公くんは人間の感情を獲得した猫耳少女と結婚し新たな家族を形成する。そして琴子は猫神が崇拝される世界において猫耳少女として存在を獲得したのであった。