出典:http://www.ibo.org/globalassets/publications/history-tsm-2017-jp.pdf
知識の網羅ではなく主要概念の取得
- 「歴史」で重点が置かれる6つの重要概念(原因、結果、連続性、変化、重要性、観点)は、授業で扱うことのできるすべてのトピックをつなぐ「概念の軸」となるように設計されています。DPの「歴史」ではさまざまなトピックの組み合わせが可能ですが、この「概念の軸」があることにより、多様な選択肢のなかから教師がどのトピックを選んでも、一貫性のあるコースを設計できるようになっています。
コース概要の設計
- ステップ1:「指定学習項目」を1項目選ぶ
- ステップ2:「世界史トピック」を2項目選ぶ
- ステップ3:「HL地域選択項目」を学習する(HLのみ)
- 内部評価
指定学習項目
- 「指定学習項目」の内容
- 「指定学習項目」では、異なる地域を取り上げる事例研究が各2つ用意されています。選択した「指定学習項目」の事例研究は必ず2つとも学習しなければなりません。以下の「指定学習項目」から1項目を選択して学習します。
- 1. 軍事指導者(中世における2人の有名な軍事指導者、モンゴルのチンギス=ハンとイギリスのリチャード1世を取り上げ、彼らがもたらした影響を考察する)
- 2. 征服とその影響(スペインによる征服)
- 3. 世界規模の戦争への動き(1931年から1941年までの軍備拡張)
- 1つ目の事例研究は1931年から1941年にかけての日本の拡張政策
- 2つ目の事例研究は1933年から1940年にかけてのドイツとイタリアの拡張政策
- 特に拡張の理由、主な出来事、拡張に対する国際的な反応に重点を置きます。
- 4. 権利と抗議運動(20世紀半ばの権利と自由を求めた闘争)
- 5. 紛争と介入(20世紀後期の紛争と介入)
- 比較手法(コンパラティブ・アプローチ)
- 事例研究を2つとも学習することにより、生徒は、異なる地域で起きた類似する出来事について学ぶことができます。この結果、2つの事例の類似点と相違点を探し出し、またなぜこのような類似点や相違点が存在するのかを考察するよう促されます。
- この比較手法( コンパラティブ・アプローチ) を教師が取り入れやすくするために、「指定学習項目」の2つの事例研究は、3つの同じ副題で構成されています。例えば、ルワンダとコソボの事例研究はいずれも、「紛争の原因」、「過程と介入」、「影響」という副題に沿って学習するようになっています。
- このように2つの事例研究で同じ副題を使うことは、2つのテーマを共通のキーワードで読み解くことになり、それにより生徒は2つの事例の両方に内在する「因果関係」や「対立」といった共通の概念を見つけ出すことになります。
- さらに、2つの事例研究の類似点と相違点に対する理解を深めることによって、生徒は本コースで習う他の史実に対しても、より効果的に理解を深める力をつけることが期待できます。
- 「指定学習項目」の出題形式
- 「指定学習項目」は、資料問題によって構成される「試験問題1」で評価されます。「試験問題1」は、基本的に( 読解力、資料分析能力などを試される) スキル重視の試験。
- 「指定学習項目」は基本的に読解力や資料分析能力などを鍛えることに重点を置いている。
世界史トピック
- トピックの内容
- 教師は、12の「世界史トピック」のなかから2項目を選択します。トピックは広範囲にわたる時代(中世、近世、近代)を網羅するものになっています。各トピックには必ず学習しなければならない指定の学習内容が設けられています。
- 1. 社会と経済(750–1400年)
- 社会と経済• 社会構造と社会制度の変化
- 人口変化の影響、飢饉や疫病の影響
- 社会における女性の役割:経済的役割とそれ以外の役割
- 貿易の性質とその発展、経済システムの変化、課税
- 輸送交通の変化
- 知的・文化的発展• 主な人物が果たした役割とその重要性
- 思想や文化の伝播に影響した要因
- 芸術と文化の発展の重要性とその影響、建築の発展
- 科学と技術の発展
- 宗教と社会• 宗教組織:宗教組織と経済、宗教組織が社会に与えた影響
- 宗教的指導者:政府や行政における宗教的指導者の役割、統治者と宗教的指導者の対立
- 宗教的少数派の扱い、宗教迫害
- 宗教の普及
- 社会と経済• 社会構造と社会制度の変化
- 2. 中世の戦争の原因と結果(750–1500年)
- 3. 王朝と支配者(750–1500年)
- 王朝と支配者• 個々の支配者たち:権力と支配の性質、目的と功績
- 支配を正当化、強化、維持するために用いられた方法
- 王朝・王国の拡張:拡張の理由、権力拡大のために用いられた方法、侵略と入植
- 法、統治機関
- 行政• 統治・行政のモデルと方法
- 宗教法と世俗法の起源
- 法の執行と解釈
- 役人の任務と役割、貴族やエリートの役割変化• 王朝および支配者の成功と失敗
- 権力に対する内部と外部からの挑戦、挑戦に打ち勝った例
- 抵抗と政治的敵対勢力、対立関係と継承問題
- 王朝と支配者• 個々の支配者たち:権力と支配の性質、目的と功績
- 4. 過渡期の社会(1400–1700年)
- 社会と経済の変化• 変わりゆく社会構造と社会制度、社会における女性の役割
- 人口増加と人口移動
- 社会的少数者の待遇
- 経済の変化:貿易の発展と変化、商人と旅行者の役割と影響
- 文化的・知的変化• 芸術活動、文化活動、知的活動
- 異文化間交流
- 科学と技術の発展、これらの発展がもたらした社会的・文化的影響
- 主な知識人や科学者が果たした役割とその重要性
- 宗教の変化
- 宗教と国家:相互作用と関係性、国家の支えとしての宗教、国家への挑戦としての宗教
- 宗教の拡大と改宗
- 宗教分裂、宗教紛争、宗教的差別、宗教的迫害
- 社会と経済の変化• 変わりゆく社会構造と社会制度、社会における女性の役割
- 5. 近世の国家(1450–1789年)
- 権力と支配の性質• 既存の国家と新たな国家、権力を強めた国家と衰退の道をたどった国家
- 統治の方法とモデル、政治構造や政治組織の変化の理由、国内政策、臣民の扱い
- 個々の支配者たち:イデオロギー、支配の性質、野望と達成、正当性、成功と失敗
- 権力の拡大• 既存国家の拡大、拡大の政治的・経済的理由
- 既存国家の政治組織:統治の構造と政治構造、統治のモデルと方法、宗教と国家の関係
- 植民地帝国の建設と拡大、領土の拡大と獲得の政治的・経済的理由
- 植民地の政治組織:植民地支配における統治の構造と政治構造、統治のモデルと方法、宗教と国家の関係
- 権力への挑戦と紛争
- 権力維持のための方法、反対勢力への対処
- 支持と抵抗、権力への挑戦、挑戦はどの程度退けられたのか
- 植民地支配に対する挑戦:抵抗、反乱とその影響、植民地競争―競争と紛争
- 対立関係と緊張、継承問題
- 権力と支配の性質• 既存の国家と新たな国家、権力を強めた国家と衰退の道をたどった国家
- 6. 近世の戦争の原因と結果(1500–1750年)
- 戦争・紛争の原因• イテオロギー的要因、政治的要因
- 経済的要因、資源をめぐる競争
- 宗教的要因
- 短期的要因、長期的要因
- 戦争・紛争の過程と結果への影響
- 指導者の役割とその重要性
- 軍隊の召集:兵役と傭兵、課税
- 軍隊の編成、戦術:地上戦と海戦
- 技術進歩の重要性
- 外国勢力の関与と影響
- 結果• 和平調停の成功と失敗
- 経済、政治、領土への影響
- 社会と宗教への影響
- 人口の変化と人口移動
- 戦争・紛争の原因• イテオロギー的要因、政治的要因
- 7. 産業化のはじまり、発展とその影響(1750–2000年)
- 産業化のはじまり• 産業化の理由および鍵となった要因、人的資源と天然資源、政治的安定、インフラ
- 技術進歩が果たした役割とその重要性
- 個人が果たした役割とその重要性
- 主な発展がもたらした影響とその重要性
- 輸送手段の発展
- エネルギーと電力に関係した発展
- 産業基盤、鉄鋼
- 大量生産
- 通信手段の発展
- 産業化がもたらした社会的・政治的影響
- 都市化および都市と工場の成長
- 労働条件、労働組織
- 政治的代表、産業化への抵抗
- 生活水準への影響、疫病と平均寿命、娯楽、リテラシーとメディア
- 産業化のはじまり• 産業化の理由および鍵となった要因、人的資源と天然資源、政治的安定、インフラ
- 8. 独立運動(1800–2000年)
- 9. 民主主義国家の発展(1848–2000年)
- 10. 独裁主義的国家(20世紀)
- 11. 20世紀の戦争の原因と結果
- 戦争の原因
- 経済、イデオロギー、政治、領土に関連する原因とその他の原因
- 短期的要因と長期的要因
- 戦争の過程と結果への影響
- 戦争の種類:内戦、国家間の戦争、ゲリラ戦
- 技術開発、交戦圏—陸、海、空
- 人と経済資源の動員の度合い
- 外国勢力の関与や影響
- 結果• 和平調停の成功と失敗
- 領土変更
- 政治的影響
- 経済・社会・人口への影響、女性の役割や地位の変化
- 戦争の原因
- 12. 冷戦:超大国間の緊張と対立(20世紀)
- 対立関係、不信、和解
- 指導者と国家
- 冷戦が引き起こした危機
- 冷戦が引き起こした危機の事例研究:異なる地域の2つの危機の詳細な事例研究:2つの危機の原因、影響、重要性の考察と比較
- 「世界史トピックの出題形式」
- 「世界史トピック」は、小論文形式の「試験問題2」で評価されます。試験問題は、各トピックの指定の学習内容に基づいて出題されます
- 「世界史トピック」の指導方法
- それぞれの例を単独または単に時系列に沿って教えるのではなく、テーマに基づいたり比較したりしながら教えることで、「試験問題2」に備えるための効果的な指導となります。
- 時系列に沿って1つずつ学習するよりも、テーマや比較に基づいたアプローチをとって、指定の学習内容を1つ(例:「独裁主義的国家が出現するに至った状況」)取り上げ、その要素に関連して4つの例を学習していくほうが効果的でしょう。このように学習することにより、4つの例の間の類似点と相違点を見つけ出す機会が生徒にもたらされます。
- 1つの要素を終えたら指定学習内容の次の要素(例:「独裁主義的国家の設立のために用いられた方法」)に進み、ここでも4つの例を学習しながら、類似点と相違点を見つけていきます。
HL地域選択項目
- 概要
- 1:貿易と交流:中世の世界におけるシルクロード(750-1500 年)
- 2:日本の武家時代(1180-1333 年)
- 3:東アジアと東南アジアの探検、貿易、交流(1405-1700年)
- このセクションは、ヨーロッパと東アジア諸国がこの地域で行った探検の理由と影響に焦点をあてます。入植者たちが先住民社会に与えた影響に重点を置きながら、ヨーロッパ諸国による初期の入植について学習します。また、中国と日本の「内向化」および鎖国政策の背後にある動機についても考察していきます。このセクションは、貿易に重点を置きますが、社会面・文化面での交流や相互作用についても学習することが求められます。
- 中国の「外への関心」:中国の造船計画、「朝貢船」、皇帝の船団の設立、鄭和の大航海、海外貿易の増加
- 日本の「外への関心」:ポルトガルとの貿易の確立(1543年)、他のヨーロッパ諸国からの交易商人の到来、宣教師
- インド・ヨーロッパ間の貿易開始の重要性とその影響:ヴァスコ= ダ= ガマ(1498年)、マラッカ王国占領(1511年)、マゼランの航海(1519年)
- スペイン人、ポルトガル人、フランス人、オランダ人、イギリス人の遠征の理由と影響、およびその入植の性質、ヨーロッパからの入植者が先住民に与えた影響、社会・宗教・文化の交流、人口と領土の変化
- 中国の「内向化」:中国の孤立主義の高まり、孤立政策、外航船の破壊(1525年)をはじめとする船への制限
- 日本の「内向化」:17世紀の日本の孤立主義、外国人の出入国を制限した鎖国政策、貿易と商業に対する厳しい規制、4つの「玄関口」の設立
- 孤立政策が中国と日本に与えた社会的・政治的・経済的影響
- このセクションは、ヨーロッパと東アジア諸国がこの地域で行った探検の理由と影響に焦点をあてます。入植者たちが先住民社会に与えた影響に重点を置きながら、ヨーロッパ諸国による初期の入植について学習します。また、中国と日本の「内向化」および鎖国政策の背後にある動機についても考察していきます。このセクションは、貿易に重点を置きますが、社会面・文化面での交流や相互作用についても学習することが求められます。
- 4:ムガル帝国の隆盛と衰退(1526-1712年)
-
- このセクションでは、インド亜大陸にヨーロッパ人が到来する前の最後の王朝について詳しく学習します。権力の掌握と強化、およびムガル支配に対する反対勢力について考察していきます。このセクションは、バーブルによってムガル帝国が建国された1526 年からバハードゥル・シャー1世が死去した1712年までの期間を扱います。
- ムガル権力の起源と隆盛:バーブルとフマーユーン
- インド亜大陸におけるムガル支配の強化:国内政策、軍事政策、宗教政策、経済政策、文化政策
- ムガル帝国の指導者それぞれの重要性:アクバル、シャー・ジャハーン1世、アウラングゼーブ
- ムガル帝国の宗教間の協調と対立がもたらした影響
- 国内の抵抗の理由と影響
- 社会面・文化面・経済面の功績
- ムガル帝国衰退の内的要因と外的要因
-
- 5:東南アジアの植民地主義とナショナリズムの発展(1750-1914年)
- このセクションは、ヨーロッパとアメリカ合衆国の帝国主義体制と植民地化政策が東南アジアの先住民社会と政治システムに与えた影響に焦点をあてます。東南アジアへの植民地拡張の理由と、植民地化の性質および影響について分析します。また、植民地制度や、現地の人々の入植者に対する反応の類似点と相違点、さらにナショナリズムの高まりを導いた要因も検証していきます。セクションの最後には、第一次世界大戦の勃発までにこれらの国々でどの程度ナショナル・アイデンティティーが形成されたかを考察します。
- インドネシアにおけるオランダ植民地制度の政治構造と経済的・社会的・文化的影響:文化制度、強制栽培制度、自由主義政策、オランダ東インド会社の衰退、オランダ国家による管理の強化と倫理政策の導入(1901年)
- インドシナにおけるフランス植民地制度の政治構造と経済的・社会的・文化的影響:フランス領インドシナの成立(1887年)を導いた要因
- フィリピンにおけるスペイン植民地制度の政治構造と経済的・社会的・文化的影響:フィリピン独立革命(1896年)、リサール、ボニファシオ、アギナルドが果たした役割の重要性
- フィリピンとアメリカ合衆国:米西戦争(1898)、アメリカ合衆国による植民地支配
- インドネシア、フィリピン、インドシナにおけるナショナリズムの高まり
- シャム王国、独立維持の内的要因と外的要因、ラーマ4世(モンクット)、ラーマ5世(チュラロンコン)
- このセクションは、ヨーロッパとアメリカ合衆国の帝国主義体制と植民地化政策が東南アジアの先住民社会と政治システムに与えた影響に焦点をあてます。東南アジアへの植民地拡張の理由と、植民地化の性質および影響について分析します。また、植民地制度や、現地の人々の入植者に対する反応の類似点と相違点、さらにナショナリズムの高まりを導いた要因も検証していきます。セクションの最後には、第一次世界大戦の勃発までにこれらの国々でどの程度ナショナル・アイデンティティーが形成されたかを考察します。
- 6:インド、アフガニスタン、ビルマ(1750-1919年)
- このセクションは、ヨーロッパ帝国主義のインド亜大陸とその周辺国への進出と、その結果生じたイギリス、フランス、ロシアの対立に焦点をあてます。この地域への進出の理由と、最終的に統治権を得たイギリスによる支配の性質と影響について分析します。また、イギリス支配に対する抵抗運動の成功と失敗についても考察していきます。
- イギリス東インド会社の拡大:プラッシーの戦い(1757年)、マラーター戦争、マイソール戦争
- インドにおけるイギリス植民地制度の経済的・社会的・文化的影響、イギリス東インド会社の役割(1773-1857年)、ジェームズ・ラムゼイ(初代ダルハウジー侯爵)とウィリアム・ベンティンクによる政策の影響
- インド大反乱(1857年)の原因、インド大反乱が招いた政治的・社会的・経済的結果
- 1858年から1914年までの主要な展開:インド統治法(1858年)、ベンガル分割(1905年)、モーリー=ミント改革(1909年)、第一次世界大戦の勃発、イギリス領インド帝国の社会的・経済的影響
- 合憲団体の発展とその重要性、「国民意識」の高まり、インド国民会議(1885年)と全インド・ムスリム連盟(1906年)
- アフガニスタン:イギリスとロシアの対立、「グレート・ゲーム」、北西辺境州、第一次、第二次、第三次アングロ・アフガン戦争、 アフガニスタン王家の政策、イギリスによる影響への抵抗
- ビルマ:ミンドン王、ティーボー王、独立性の喪失の理由、第一次、第二次、第三次英緬戦争、ビルマにおけるイギリス植民地制度の経済的・社会的・文化的影響、抵抗運動とナショナリズムの高まり
- このセクションは、ヨーロッパ帝国主義のインド亜大陸とその周辺国への進出と、その結果生じたイギリス、フランス、ロシアの対立に焦点をあてます。この地域への進出の理由と、最終的に統治権を得たイギリスによる支配の性質と影響について分析します。また、イギリス支配に対する抵抗運動の成功と失敗についても考察していきます。
- 7:伝統的な東アジア社会への挑戦(1700-1868年)
- このセクションは、18世紀半ばから19世紀半ばまでの「帝国」としての中国と日本に焦点をあて、これらの国が欧米列強の到来とそれに伴った貿易、外交代表、市民権の要求といった問題にどのように対処したかを考察していきます。欧米列強の到来と同時期に起こった国内の社会・経済の変化は、中国と日本の既存政権の権力維持に圧力をかけることになりました。
- 8:オセアニアにおけるイギリスの植民地主義とナショナル・アイデンティティーの出現(1788-1919年)
- このセクションは、19世紀半ばから20世紀前半にかけてのオーストラリア、ニュージーランド、太平洋諸島におけるイギリスの植民地支配の理由と性質に焦点をあてます。入植者が先住民社会に与えた影響の大きさと性質について、さらに入植者と先住民の対立の理由を考察していきます。セクションの最後には、オーストラリアとニュージーランドの発展における第一次世界大戦の重要性について分析します。
- 先住民社会と初期の植民地移住による影響、ワイタンギ条約(1840年)
- 入植計画、オーストラリアとニュージーランドへの移住、初期の植民地移住、土地分配、牧畜社会、スクオッターと土地選択法
- 先住民と入植者の間の緊張関係の理由と影響
- ゴールドラッシュの社会的・経済的影響、都市の発展、労働運動の出現
- 憲法の発展、ナショナル・アイデンティティーの高まり、オーストラリア連邦結成運動、オーストラリア連邦憲法制定会議、自治領としての地位の獲得(1901 年オーストラリア、1907年ニュージーランド)
- 第一次世界大戦がオーストラリアとニュージーランドに与えた政治的・社会的・経済的影響、オーストラリア・ニュージーランド軍団(ANZACs)、ガリポリの重要性
- 太平洋諸島におけるイギリスの統治の性質と影響
- このセクションは、19世紀半ばから20世紀前半にかけてのオーストラリア、ニュージーランド、太平洋諸島におけるイギリスの植民地支配の理由と性質に焦点をあてます。入植者が先住民社会に与えた影響の大きさと性質について、さらに入植者と先住民の対立の理由を考察していきます。セクションの最後には、オーストラリアとニュージーランドの発展における第一次世界大戦の重要性について分析します。
- 9:東アジアの初期の近代化と帝国の衰退(1860-1912年)
- このセクションは、19世紀半ばから20世紀初頭までの中国と日本の歴史的展開に焦点をあてます。まずは、中国においてほぼ不成功に終わった近代化と改革について考察します。保守派と大衆による変化への抵抗は、洋務運動や戊戌の変法の頓挫、義和団事件の発生からもうかがえます。一方で、中国とは対照的に、日本はこの時期に急速な近代化に成功し、アジアのなかで欧米列強の権力に対抗する国家へと成長しました。
- 10:インドのナショナリズムと独立(1919-1964年)
- このセクションは、第一次世界大戦の終結、独立の達成、そして国家の発展へと推移した1919年から1964年までのインドのナショナリズムに焦点をあてます。鍵となった団体や人物の重要性、インド亜大陸の分離独立の原因、さらに分離独立後にインド国家の権力を強化した国内政策について分析します。
- 第一次世界大戦の影響:自治の要求
- アムリットサル事件(1919年)をはじめとする主な政治展開の重要性、インド統治法(1919年)、サイモン委員会(1928年)、英印円卓会議(1930-1932年)、1935年のインド統治法に対する反応
- 主な団体および人物が果たした役割とその重要性:インド国民会議と全インド・ムスリム連盟、ガンディー、ジャワハルラール・ネルー、ジンナー
- 独立闘争、非協力運動、不服従運動、塩の行進(1930年)、クイット・インディア運動(1942年)
- イスラーム分離主義の拡大、「二民族論」、ラホール決議(1940年)
- 第二次世界大戦の影響:チャンドラ・ボース、クリップス使節団(1942年)、イギリス権力の弱体化、マウントバッテン、独立の達成、インド亜大陸の分離独立(1947年)の理由
- 独立後のインド:民族紛争と宗教紛争、藩王国、カシミール、ネルーの国内政策の成功と失敗
- このセクションは、第一次世界大戦の終結、独立の達成、そして国家の発展へと推移した1919年から1964年までのインドのナショナリズムに焦点をあてます。鍵となった団体や人物の重要性、インド亜大陸の分離独立の原因、さらに分離独立後にインド国家の権力を強化した国内政策について分析します。
- 11:日本(1912-1990年)
- このセクションでは、明治時代終焉後の日本と、当時の日本が議会制民主主義制度の確立に失敗した理由を学習します。また、満州と中国での侵略行為を引き起こすこととなった軍国主義と過激なナショナリズムの台頭、そして「大東亜共栄圏」と呼ばれる東アジア、東南アジア、太平洋にまたがる大日本帝国の建設の試みについても探究します。
- 第一次世界大戦と戦後会議の影響
- 大正デモクラシー:自由主義的価値観の発展と二大政党制の出現
- 軍国主義および過激なナショナリズムの台頭の理由とその影響:軍の政治的影響力の増大、政治クーデターと暗殺
- 満州事変(1931年)と中国侵略(1937年)、欧米諸国との関係への影響、日独伊三国同盟(1940年)、アメリカ合衆国の禁輸措置(1940年)
- 日本と太平洋戦争(1941-1945年):パールハーバー( 真珠湾) 奇襲の決定、初期段階の成功、敗北の理由
- アメリカ合衆国の占領(1945-1952年):社会的・政治的・文化的変化、「逆コース」(1950年)
- 日本の「経済の奇跡」(高度経済成長)の理由、グローバル化による社会面・文化面・経済面の影響
- このセクションでは、明治時代終焉後の日本と、当時の日本が議会制民主主義制度の確立に失敗した理由を学習します。また、満州と中国での侵略行為を引き起こすこととなった軍国主義と過激なナショナリズムの台頭、そして「大東亜共栄圏」と呼ばれる東アジア、東南アジア、太平洋にまたがる大日本帝国の建設の試みについても探究します。
- 12:中国と朝鮮(1910-1950年)
- このセクションは、1910年から1950年にかけての中国と朝鮮に焦点をあてます。中華民国成立後の中国で起きたナショナリズムと共産主義の台頭、さらに1910年の韓国併合によって正式化され、日中戦争の間にさらに圧政的になった、日本による朝鮮支配の性質について考察します。セクションの最後には、国共内戦で中国共産党はなぜ勝利したのか、そして中国国民党にとってこの敗北が何を意味したのかについて考察します。
- 中国のナショナル・アイデンティティーの形成:袁世凱、孫文、対華21カ条要求(1915年)、新文化運動、ヴェルサイユ条約(1919年)、五四運動(1919年)、軍閥主義の影響
- 中国国民党の統治:中国国民党の統率力とイデオロギー、蒋介石、「南京十年」(1927-1937年)の間の国内政策の成功と失敗
- 中国における共産主義の台頭:中国共産党のイデオロギー、第一次国共合作、上海クーデター(1927年)、延安、江西ソヴィエト、長征、毛沢東
- 日本による中国侵略の影響、満州(1931年)、第二次国共合作、日中戦争(1937-1945年)、国共内戦(1946-1949年)、対立の性質、中国共産党の勝利の理由
- 日本による朝鮮支配の影響:韓国併合(1910年)の社会的・政治的・経済的影響、日中戦争の朝鮮への影響:日本による強制労働と徴兵、慰安婦、朝鮮半島の38度線による分割(1945年)、李承伴、金日成
- 台湾と中華民国:蒋介石による統治の性質:戒厳令(1949年)、白色テロ(1950年)、台湾独立運動のはじまり
- このセクションは、1910年から1950年にかけての中国と朝鮮に焦点をあてます。中華民国成立後の中国で起きたナショナリズムと共産主義の台頭、さらに1910年の韓国併合によって正式化され、日中戦争の間にさらに圧政的になった、日本による朝鮮支配の性質について考察します。セクションの最後には、国共内戦で中国共産党はなぜ勝利したのか、そして中国国民党にとってこの敗北が何を意味したのかについて考察します。
- 13:東南アジアにおける世界大戦の影響
- 14:中華人民共和国(1949-2005年)
- このセクションでは、中国共産党の統治下の中国に焦点をあて、毛沢東指導下の共産党がその支配と社会主義国構想を拡大することによって生じた大きな変化について学習します。国内政策が政治・社会・経済に及ぼした影響に重点を置き、さらには毛沢東の死後の中国経済の近代化についても考察します。
- 毛沢東指導下での共産主義国家の確立(1949-1961年)、主要な政策、土地改革、整風運動、百花斉放百家争鳴(1956年)
- 社会主義への移行、経済発展の成功と失敗(1949-1961年)、第一次五カ年計画、大躍進政策、第二次五カ年計画
- 社会の発展、女性の権利、保健、教育
- 文化大革命:理由、「四人組」、政治・社会・文化への影響
- 外交政策と外交問題(1949-1976年)、米中関係、中ソ関係の確立と破綻、地域大国および世界の大国としての中国
- 毛沢東の死後の権力闘争、華国鋒、蠟小平の復活と「四人組」の打倒
- 蠟小平指導下の中国(1976-1997年)、経済の発展、「四つの近代化」、政治展開、天安門事件(1989年)の原因と結果、江沢民
- このセクションでは、中国共産党の統治下の中国に焦点をあて、毛沢東指導下の共産党がその支配と社会主義国構想を拡大することによって生じた大きな変化について学習します。国内政策が政治・社会・経済に及ぼした影響に重点を置き、さらには毛沢東の死後の中国経済の近代化についても考察します。
- 15:アジアの冷戦
- このセクションは、第二次世界大戦後のアジアにおける冷戦と共産主義の影響に焦点をあてます。マラヤ、朝鮮半島、ベトナム、カンボジア、アフガニスタンで紛争が勃発した理由と、これらの紛争の性質、および外国勢力の関与の重要性について考察します。また、これらの紛争がその後10年にわたって及ぼした影響についても分析します。
- マラヤ:「非常事態」(1948-1960年)、マラヤ共産党、イギリス(イギリス連邦)の反応、紛争の性質、解決と「遺産」
- 朝鮮半島:朝鮮戦争(1950-1953年):原因、国際社会の反応、結果、朝鮮半島の政治経済への影響
- ベトナム:ベトナム独立同盟会(ベトミン)、ホー= チ= ミン、第一次インドシナ戦争(1946-1954年)、ベトナム戦争(1956-1975年):原因、戦争の性質、国際関与、結果、ベトナムの政治経済への影響
- カンボジア:シハヌークによる支配の失敗、クメール・ルージュのイデオロギー、ポル・ポト、ベトナム戦争の影響、クメール・ルージュ政権の性質と影響、ベトナムによるカンボジア侵攻と内戦、国際社会の反応、1993年の選挙
- アフガニスタン:ソ連のアフガニスタン侵攻(1979年)の理由と影響、紛争の性質、国際関与、ソ連軍の撤退(1989年)、内戦(1989-1992年)
- このセクションは、第二次世界大戦後のアジアにおける冷戦と共産主義の影響に焦点をあてます。マラヤ、朝鮮半島、ベトナム、カンボジア、アフガニスタンで紛争が勃発した理由と、これらの紛争の性質、および外国勢力の関与の重要性について考察します。また、これらの紛争がその後10年にわたって及ぼした影響についても分析します。
- 16:1947 年以降の南アジアの発展と課題
- このセクションは、1947年以降の南アジアの歴史に焦点をあて、新たに建設された国家であるパキスタン、バングラデシュ、セイロン(スリランカ)が直面した課題と、これらに対して政府や指導者がとった異なるアプローチについて考察します。また、この地域における紛争の理由と影響についても学習します。
- ネルー指導下の外交政策と経済の発展、インドとパキスタンの関係、印パ戦争(1947、1965、1971年)、原因と結果、バングラデシュの独立(1971年)
- インド:インディラ・ガンディー、ラジーヴ・ガンディー、ナラシンハ・ラーオ指導下における社会・政治・経済の発展と課題
- パキスタン(1947-1991年):建国、社会、政治、経済の発展と課題、東パキスタンと西パキスタンの間の摩擦、文化と言語の違い、憲法をめぐる国民投票(1991年)、ジンナー、アイユーブ・ハーン、ズルフィカール・アリー・ブットー、ジア=ウル=ハク、ベーナズィール・ブットー
- バングラデシュ:建国、社会、政治、経済の発展と課題
- セイロン(スリランカ):建国、社会、政治、経済の発展と課題、シンハラ人とタミル人の対立、1971年の反乱、内戦、シリマヴォ・バンダラナイケ
- このセクションは、1947年以降の南アジアの歴史に焦点をあて、新たに建設された国家であるパキスタン、バングラデシュ、セイロン(スリランカ)が直面した課題と、これらに対して政府や指導者がとった異なるアプローチについて考察します。また、この地域における紛争の理由と影響についても学習します。
- 17:第二次世界大戦後のオセアニアの発展(1945-2005年)
- 第二次世界大戦中のアジアの動きは、オーストラリアとニュージーランドのイギリスへの依存を揺るがし、そのため両国は、日本の脅威と戦うためにアメリカ合衆国に助けを求めるようになりました。また、日本の敗北を受けて戦略を変更した両国は、アメリカと同盟関係を築き、その結果、強い反共産主義路線をたどることになりました。オーストラリアもニュージーランドも、イギリスとヨーロッパだけでなく、1960年代にはアジア諸国からの移住も受け入れ始めたことにより、より多文化的な社会を築きました。また両国とも、世界情勢、特にアジアと太平洋の情勢に関して、国際機関でより積極的かつ独立した役割を担うようになりました。さらに、イギリスとのつながりが弱体化するにつれ日本との経済的なつながりが徐々に強化され、その後は中国や東南アジア、太平洋諸島の新興経済国ともつながりをもつようになりました。
- 18:アジアの社会・文化・経済の発展(中国、日本、インドを除く)(1980-2005年)
- このセクションでは、2つの事例研究を行うことが要求されます。生徒は、事例研究の対象としてアジアの2国を選択します(中国、日本、インドを除く)。なお、選択した国は、試験答案の冒頭部分に明記します。