雑録

IBDP「歴史」教師用参考資料における「学習の方法」と「指導の方法」

出典:http://www.ibo.org/globalassets/publications/history-tsm-2017-jp.pdf

学習の方法

  • ねらいと目的
    • DPの「歴史」は「学習の方法」の5つの主要スキル(思考スキル、コミュニケーションスキル、社会性スキル、リサーチスキル、自己管理スキル)を高めることに重点を置いています。
  • 思考スキル
    • 内容の単なる暗記ではなく、高いレベルの思考(分析や評価など)を要するアクティビティーを生徒に提供する。
    • 「 歴史」の授業で学んだ異なる例やトピックを互いに結びつけ、比較するよう生徒を促す。
    • 振り返りのアクティビティー(リフレクティブ・ジャーナルやオンライン上のブログまたはポッドキャストなど)を歴史の授業に取り入れる。
    • 「 歴史」の授業で生徒に記事を読ませる際、少人数のグループに分けて、「単語−表現−文章」(カギとなる単語、表現、文章を、生徒が蛍光ペンや下線などでマークする)のように思考のルーチンを可視化するアクティビティーを行う。これにより、記事にしっかりと向き合えるようになる。また、特定の単語、表現、文章を選んだ理由について生徒に話し合わせる
  • コミュニケーションスキル
    • グループに分かれて、歴史上の特定の人物や出来事の重要性について討論する。
    • DPの「歴史」にとって欠かせない論文を書くスキルを高めるための時間をとる。論文の構想の練り方、段落の構成方法、序論の書き方、結論の書き方などに関連するアクティビティーを行う。
    • 視覚資料、演説、インタビュー、地図など、さまざまな種類の歴史資料に触れさせることにより、視覚リテラシーなどのスキルの向上を図る。
    • 選択した「指定学習項目」に含まれる要素を各生徒に振り分け、それぞれが与えられた要素の「エキスパート」となるべくリサーチを行って、クラスメート全員の前で口頭プレゼンテーションを行う。これにより、生徒の口頭プレゼンテーションのスキルの向上を促す。
    • 歴史学者の書いた文献を読む際、彼らがどのように議論を構築し、それを効果的に展開しているかを見つけ出すよう促す。
  • 社会性スキル
    • グループ研究など、共同作業が必要な形成的評価の課題を生徒に与える。
    • 生徒が互いの成果物を評価する機会を与える。
    • 「 歴史」における重要概念の1つが「観点」であるため、歴史上の特定の問題や出来事に関して、別の観点に立って考慮することが必要となるアクティビティーを行う。
    • 近くのIBワールドスクール(IB認定校)で「歴史」を学習する生徒と協働する機会(オンラインもしくは対面で)をつくれるかどうか検討する。
  • リサーチスキル
    • 学問的誠実性の重要性と、筆記課題や口頭課題で他人のアイデアを使う場合は出典を必ず正確に明記することの重要性について、生徒と話し合う。
    • 「 歴史」のコースの早い段階から、1つの標準的な出典表記方法を一貫して使うよう習慣づける。
    • 生徒の内部評価課題の準備を促すため、関連する歴史資料を自分で特定し、探し出すことを課す形成的評価の課題を与える。
    • 歴史の授業および資料を扱うアクティビティーのすべてを通じて、資料の価値と限界についての分析を取り入れるようにする。
    • 内部評価課題と課題論文で生徒が特に難しいと感じるのは、適切な研リサーチクエスチョン究課題を設定することである。このため、限られた時間内で行う研究として適切な、具体的かつ的の絞れた研究課題(リサーチクエスチョン)を組み立てる練習の機会を設ける。
  • 自己管理スキル
    • 生徒と一緒に「歴史」の内部評価課題の作成計画を立てる。この際、作成の段階をいくつかに分けて、それぞれに中間締め切りを設ける。
    • 成果物を提出したあと、それをもう一度見直して改善するよう促す。
    • 自分に合った復習方法を見つけるため、さまざまな方法を試してみるよう促す。
    • 生徒の学習量がなるべく均等に配分されるように、TOKの論文や課題論文(EE)、他の科目の内部評価課題など、主な課題の締め切りを考慮に入れたうえで、「歴史」の評価の日程をコーディネーターと相談しながら検討する。
    • DPの「歴史」を学ぶ生徒に期待する特質や行動(時間に正確であること、締め切りを守ること、挑戦すること、上手に集中することなど)の見本を、自ら示すようにする。

指導の方法

  • 指導の目的とねらい
    • DPの「歴史」は、IBの教育における重要な価値観と原則を示した6つの「指導の方法」(探究を基本とした指導、概念に重点を置く指導、「ローカル」と「グローバル」の両方のレベルで文脈化した指導、効果的なチームワークと協働に基づく指導、すべての生徒のニーズに応じて差別化した指導、評価の情報に基づく指導)によって支えられています。
  • 探究を基本とした指導
    • 新たに学習する歴史のトピックについて、生徒に情報を与えるのではなく、自分たち自身で情報を調べるよう促す。
    • 最初から答えを与えるのではなく、生徒から質問するよう働きかける。
    • 現地訪問や実地調査、もしくは教室内でのロールプレイやシミュレーションなど、経験に基づく学習を歴史の授業に取り入れる機会について検討する。
    • 「 歴史」の単元を計画する際に、生徒間の議論や討論を促すような論題について考える(課題で扱うトピックや議論・討論につながるような、生徒にとって扱いやすい問いでなければならない)。
  • 概念に重点を置く指導
    • 「 歴史」では6つの重要概念(変化、連続、原因、結果、重要性、観点)に重点が置かれているため、授業を計画する際には、毎回の授業でどの概念が特に重要かを特定するようにする。
    • 「 権力」や「アイデンティティー」など、他の科目でも学ぶ可能性のある概念に関連づける機会をつくる。
    • 歴史上の特定の出来事の原因について学習する際、「因果関係」という幅広い概念を生徒が理解し、異なる種類の原因(経済的要因、政治的要因など)を特定できるよう促す。
    • 事実に関する問い、概念に関する問い、議論を呼び起こすような問いなど、さまざまな種類の問いを各単元で投げかけるようにする。
  • 「ローカル」と「グローバル」の両方のレベルで文脈化した指導
    • 生徒が興味をもっているのであれば、「歴史研究」で自分の住んでいる地域の歴史に関するトピックを研究できることを伝える。
    • 複数の解釈や説明に触れることで、生徒が歴史上の出来事の複雑さを理解するよう促す。
    • 「 変化」など、歴史における抽象的な概念を扱う際には、常に具体的な例に概念をあてはめることで、それが現実の世界で何を意味するのかを生徒が理解できるよう促す。
    • 世界史の学習は生徒の国際的な視野を育てるための絶好の機会であるため、その機会を最大限活用するような授業を計画する。
    • 「 歴史」の学習を通じて生徒は、現在の世界が形づくられるまでの過程で重要な役割を果たした歴史上の出来事を学習し、過去と現在の出来事の間にある複雑な相互関係性について理解を深める機会を得る。このため、「権力」、「不平等」、「対立」、「権利」など、今日の社会でも重要な概念を歴史のトピックのなかに見出し、また歴史を通じてこれらの概念を学習するようにする。
  • 効果的なチームワークと協働に基づく指導
    • 生徒が歴史問題について議論や討論をする際、お互いを尊重するよう促す。
    • 「 歴史」を担当する他の教師と協働して授業の計画を立てる。または自分の授業計画に対して他の教師のフィードバックを求める。
    • 生徒間の協力を促進するだけでなく、生徒と教師の間の協力とコミュニケーションを促進することも重要であるため、「どの要素を理解できたと思うか」、「どの要素が難しかったか」などのフィードバックを生徒からもらうよう定期的に促す。また、この情報を後の授業計画に活かす。
  • すべての生徒のニーズに応じて差別化した指導
    • 歴史上の出来事に関する主な情報をまとめる際、概念マップ、フローチャート、図表など、生徒が自分の学習スタイルに合ったものを見つけるよう促す。
    • 「 観点」は「歴史」の重要概念の1つであるため、生徒がもつ多様な文化的視点を「歴史」の授業でどのように活かせるかを検討する。
    • 「 歴史」の授業や単元を計画する際、優秀な生徒の意欲を高めるため、彼らには応用が必要な課題を与えることを検討する。
    • 新しいトピックの学習を始める際には、既習の知識を活かして、新しいトピックについてすでに知っていることがあるかどうか、何を知っているかを考えさせる。
  • 評価の情報に基づく指導
    • 形成的評価は、教師と生徒が学習についてのフィードバックを得る機会となるため、「学びのための評価」と呼ばれることが多い。そのため、「歴史」の単元を計画する際には、用意した課題が学習についての効果的なフィードバックをもたらすかどうかに配慮する。
    • これまでの「歴史」の試験問題を使って、生徒に小論文の練習問題を与える。ただし、これは適切な段階で実施し、改善できる点について建設的なフィードバックを提供する。
    • 外部評価のマークバンド(採点基準表)と内部評価規準を生徒がよく理解しておくようにする。必要であれば、「生徒向け」にアレンジしたマークバンド(採点基準表)をコースの早い段階で導入し、生徒がプレッシャーを感じないようにする。