雑録

IBDP「歴史」の三要素(内容・概念・スキル)とそのなかの一つの「概念」の詳細

出典:http://www.ibo.org/globalassets/publications/history-guide-2017-jp.pdf

  • IBDP「歴史」の三要素とはなにか
    • IBDP「歴史」は内容、概念、スキルという3つの主要素に基づいて構成されています。これら3つの要素は不可分な関係にあると考えられています。
    • 概念
      • 「概念」とは、大きなレベルの有力な思考であり、科目の領域内と領域外の両方において重要です。概念は、「既存のスキーマと認知的枠組みに知識を統合させる」(Anderson, Krathwohl 2001)ことにより、生徒を「知識」から「理解」のレベルへと導きます。また、古い知識と新しい知識の間の架け橋になるとともに、異なる科目領域間や文脈間での知識の行き来を促す役割も担います。あるトピックの背後に存在する「大きなレベルの思考」を理解することは、「なぜそのトピックを学ぶのか」という問いの核心へと生徒を導きます(Perkins2010 などの文献を参照してください)。
    • 内容
      • DPの「歴史」では、「内容」も非常に重要な役割を担います。概念的な理解をもつには、「事実に基づく知識」という確たる基礎が必要になるためです。また、具体的な例や事例研究は、抽象的な概念を具体的に示し、概念を特定の文脈に置いて考えるのに役立ちます。
    • スキル
      • DPの「歴史」の学習を通じて、生徒は、歴史学の方法論とその実践についての理解を身につけるよう促されるべきです。歴史学のスキルを指導することは、歴史に対する生徒の理解を深めるだけでなく、将来そのスキルを歴史学や関連分野の研究で応用する足場をつくります。これらのスキルは、単独で扱うのではなく、文脈に応じた適切なやり方で、シラバス全体を通じて導入していくことがきわめて重要です。

DPの「歴史」で使用する主要「概念」の詳細

  • DPの歴史における6つの主要概念
    • 原因、結果、変化、連続、重要性、視点という6つの主要概念に重点を置いています。
    • これらの概念を用いることにより、生徒は、歴史の問題について批判的に思考できるようになります。
  • 原因
    • 歴史学的見地から論理的に思考できる人は、過去に関する主張の多くが「ある一連の出来事がなぜ起こったのか」をより徹底的に説明し理解しようとする試みであることを認識しています。歴史を深く理解している生徒は、歴史上の出来事のほとんどが多種多様な原因の相互作用によって起きるものであり、そのなかでどの原因が重要かつ重大だったか、どの原因が個人レベルでコントロールできたか、またはできなかったかについて、根拠に基づいて判断することが要求されるという認識をもっています。
  • 結果
    • 歴史を学ぶということは、過去の事象がその後の社会や人々にどのように影響したかを理解するということです。歴史学的手法を用いて論理的に思考できるようになった生徒は、歴史上の重要な出来事や人物が及ぼした短期的、長期的な影響の両方を理解し、説明することができます。その出来事や人物についての証拠と解釈を用いて、歴史上の異なる時点での比較を行い、それらの事象が長期にわたる重要な影響をどの程度もたらしたかを判断します。
  • 変化
    • 歴史の学習には、人々や出来事がもたらす変化の度合いを研究するという側面が含まれます。「変化」という概念を議論することによって、例えば「変化がなかった」と主張されている局面で本当に変化がなかったのかどうかを考察し、その変化を見つけようとしたり、逆にある人や出来事が重要な変化をもたらしたとされている局面で、具体的な根拠を用いて定説となっている理論や仮定に疑問を投げかけたりするなどの、高度な議論が促されます。歴史上の変化に対する生徒の質問や判断は、内容を深く理解し、かつその出来事の前後の状況を比較したうえで形成されなければなりません。
  • 連続
    • 歴史の学習ではしばしば、重大な変化が起こった局面に焦点があてられますが、変化のなかにはゆっくりと長い時間をかけて起こるものもあり、また歴史には重大な「連続性」があることも、生徒は認識しなければなりません。例えば、歴史上の大きな変化のただ中にあってなおも相当の連続性が存在した時代があったという認識を示すことにより、生徒は、歴史に対する深い知識と理解を証明することができます。また、例えば外交政策に変化があった局面で、政治指導者の交替がそれをもたらしたのか、むしろ前政権の政策を映し出した結果だったのかを、生徒は問いかけ、考察することができます。
  • 重要性
    • 歴史とは、単に過去の出来事をすべて記録する学問ではありません。むしろ、過去の証拠や痕跡を通じて保存された記録であって、誰かが意図的に記録・伝達しようとした過去の側面だと言うことができます。このため、なぜある側面が記録され歴史に組み込まれることになったのかを問いかけるよう、生徒に奨励すべきです。同様に、どの人物、どの出来事が歴史から除外されたのか、なぜ除外されたのかも考察するよう、奨励すべきです。さらに、生徒の質問は、歴史上の出来事、人物、集団、展開の相対的な重要性、ひいてはその重要性に関するこれまでの主張が根拠に基づくものかどうかを考察・評価するよう促すような質問であるべきです。
  • 視点
    • 歴史は時として、他の視点を考慮に入れない偏った「国家神話」とも言える壮大なストーリーを広めるためや、特定の視点を優位に立たせるために、利用もしくは乱用されることがあるという認識を、IBの生徒はもたなければなりません。生徒は、過去に対する複数の視点に対して疑問を投げかけ、批評し、比較し、根拠に基づいた裏づけを行うよう奨励されます。また、過去に記録されたすべての出来事に対して、異なる視点や反対の視点があり得ることを認識すべきです。さらに、社会的少数者や女性をはじめ、さまざまな人々が過去の同じ出来事に臨んでどのように異なる経験をしたかを、一次資料の情報や歴史学者の見解を用いながら調査・比較することもできます。このような学習を通じて複数のものの見方を探究することと国際的な視野の育成の間には、とりわけ深いつながりがあります。