「タユタマ2 WEB体験版」の感想・レビュー

面白い。モゑキャラを通して社会のマイノリティーに対する同化政策・価値観の押しつけを表現しているはなし。
「共生」「共存」「融和」といった理想を掲げるメインヒロインが「幻想」として断罪される所がグッとくる。
体験版は二項対立が巧みに使われ、自分の正義は相手にとっては正義ではないことに気づかせる構造となっている。
しかし現実でも融和には統合と排除の原理が働き、右派勢力の台頭が目覚ましい。
そんな中で広げた大風呂敷をどのように畳むのかに注目が集まる。ご都合主義になったらげんなりしそう。

体験版の面白いところ等

  • 本質を理解せず高尚な理想を掲げて自己満足していたメインヒロインが叩き潰されます
    • メインヒロインは共存・共生・融和を掲げる女の子。地道な活動により地元住民からは好意的な存在として受け入れられていました。しかしメインヒロインはその本質を理解しているかというとそうではなく「高尚な理想を掲げる」という行為に惹かれているような側面も見せています。それは自分の考えが無条件に相手に受け入れられるという盲目性からもうかがわれます。確かに、社会のためとか公共の福祉のためとかを持ち出されると尻込みしてしまいがちですが、だからといってそれに全員が納得できるわけではないのです。メインヒロインの「正義」が多数派の「正義」であり、それは少数派にとっては「価値観の押しつけ」にもつながるものだったのです。そしてそれは現実のものとなっていきます。メインヒロインは社会の秩序が崩されると、あっさりと周囲が見えなくなってプッツンし、暴力で相手を屈服させようとしてしまいます。そしてその時、自分の価値観と相反するアンチテーゼに直面してアイデンティティ崩壊。「共存とかいっても大多数のために個を犠牲にしなければならないなんて全体主義につながるじゃん?俺らは地域主義で行くぜ的な主張」に直面し、自己を見つめ直す契機となるのでした。果たしてメインヒロインは「多文化共生」に対する「地域主義」を止揚することはできるのでしょうか。これをご都合主義やファンタジー展開ではなくしっかりと描き出すことができればかなり良いシナリオの作品になるのではないでしょうか?

  • 今のところヒロインBが空気
    • 多文化共生を掲げるメインヒロインと地域主義を掲げるヒロインCはそれぞれ主張がありキャラが立っているのですがイマイチ印象が薄いのがヒロインB。「主人公くんのトモダチポジションヒロインは動かしやすく他ヒロインルートでは大活躍するのだが個別ルートは残念になるの法則」が発動しそうです。それというのも、メインヒロインとヒロインCが価値観の相違をぶつかり合わせるの対し、ヒロインBで扱われるテーマが内面的なものだから、というのが理由として挙げられます。いや、ヒロインBのキャラクター造詣も頑張っているんですよ?主人公くんとの「ワケアリ」ポジションであり、共に家族に対して問題を抱えているだけでなく、主人公くんにだけ心を許すという独占欲刺激要素も盛り込まれています。もし本作品が単なるキャラゲーであるならば人物像の掘り下げにおいて優位となるのでしょう。しかし如何せん本作で提示されている主題に(体験版の時点では)ヒロインBが絡んでいくことはできていないので難しいところ。「ワケアリ」属性も体験版であっさりと消費されてしまったので、ヒロインBのキャラ設定である異能(精神干渉)・富裕階層の養女問題がどのように描かれるかでヒロインB個別ルートの面白さが左右されそうです。