ルリのかさね 祐咲√の感想・レビュー

高校生から始める幼馴染(幼くない)生活。フラグ構築まで時間をひたすら積み重ねる。
『すみれ』や『ラムネ2』よろしく根暗系ぼっち女性がテーマで主人公くん家の神社の手伝いを契機に明るくなる。
しかしそれは主人公くんとだけの関係性であり、居心地の良いダベリ仲間というぬるま湯につかっていたのだ。
高校を卒業して10年、二人で同窓会に参加するが、拭い切れない過去に直面する。
ぬるま湯の関係性から脱却するために見合いをするヒロインは、それにより主人公くんの尊さを知る→フラグ成立。
余談だが、るり死亡√で神は鎮めるものであり利益の為に祈る対象ではないと強調していたのに、矛盾しまくり。

作風としては良かったのだが、物語を形成する重要な題材で√ごとに矛盾が生じるという複数シナリオライターの弊害


  • 神凪(神を鎮めること)と祈祷(神仏に利益を求めること)
    • 神道とか詳しくは知らないので何とも言えないのですが、物語を構築する重要な題材として「神の在り方」が設定されているのに、ライターの解釈が大きく矛盾してしまっています。片岡とも先生のシナリオにおいて、神は「鎮める対象」であると強調されており、絶対に主人公くんは神に欲望を叶えてもらおうとはしません。それ故、最後の場面で死にゆくルリを眼前にした主人公くんが神に縋るというシーンが意味合いを持つのです。一方で、もう一人のライターさんは、もうめっちゃ神様欲望を叶える存在。そもそもの祐咲√を形作る根幹が「50円のお賽銭」であり、それは祐咲が「人見知りを直してもらおう」と願ったものでした。そしてフラグ構築も「50円のお賽銭」でなされます。祐咲のお賽銭を主人公くんが回収し、その50円に主人公くんが金額を重ねて、仕事帰りにジュースを買い、神社の階段で二人でたわいもない会話をしながら時間を重ねるという内容になっています。二人でまったりした関係を10年間も続けるというのは作風としては大好きです。しかし、どうしても本編であるルリ死亡√との矛盾が頭をチラついてしまい素直に楽しめないのでした。(※本編では主人公くんのバイト代は御神籤の売り上げであり、お賽銭については触れられていない。)
    • 複数シナリオライターの弊害により作品としての矛盾が生じる例は多々あります。『かにしの』の主人公くんの性格が本校系√と分校系√でまるで違う人物だとか、『Clover Day's』で「双子のどちらか一方を選ぶ」を深刻なテーマとしているのに、別の双子ヒロインではあっさり3Pしてたりとか。本作品でも神主という職業設定であり、ホスピス(不治の病)と宗教の関係性って結構重要なテーマなだけに、こうもまぁ作風が違うと、何とも言えない気分になるのでした。