ルリのかさね ルリ√感想・レビュー

ヒロインが死ぬ鬱ゲー。分岐エンドは死亡・死なない・バカエロの3種類。片岡とも先生はルリ死亡エンド担当です。
死生観を描き、人間の存在証明を示すため、ひたすら死による別離が扱われ続けていく片岡とも作品。
しかも今回は早期治療すれば治ったにも関わらず、わずかなすれ違いにより「死の責任」を背負ってしまう。
二人だけの閉じられた世界という極度のセカイ系の中、人生の価値づけを迫られるシーンは切なくなる。
そして何より、ルリが死んだ後も主人公くんの世界は続いていくわけで、その後の日常場面が見所である。
描写は短いがルリ死後の日常でルリと過ごした時間の表象が現われる描写には心が揺さぶられる。

世界と繋がらない極度に狭いセカイの中で、人生の生きた価値を見いだせただろうか?


  • 「死の責任」とすれ違い
    • 主人公くんとルリは歳の離れた叔父さんと姪っ子。主人公くんの姉夫婦が仕事で忙しく、ルリがちょくちょく神社に遊びにくることになったことから関係性が始まります。二人がある程度仲良くなったある日、主人公くん及びルリの親が事故死したため、二人だけ取り残されてしまいました。学生であるためルリを世話できないと考えた主人公くんは一度はルリの幸せを思い施設に預けようとします。しかしルリが主人公くんの元にいることを望んだことから、お互い苦楽を共にしようぞ!と人生を賭ける事を誓ったのでした。こうしてルリは姪っ子から義妹へと変わり、主人公くんの神社で生きていくことになりました。ルリのために良いお兄ちゃんであろうとして授業参観に行ったり、絆を交わしたりして関係性を深めていくところはグッときますね。
    • しかし不幸は続くもので、ルリは難病を患ってしまうのです。初期治療を行えば根治するはずものでしたが、主人公くんに迷惑をかけることで嫌われたくないと思ったルリは自分が元気であると偽り続けてしまうのです。こうして病気が悪化したルリはホスピスとなり、余命幾ばくもなく死を待つ存在となったのです。主人公くんはルリがホントウのことを話してくれなかったことにショックを受け、思わずルリを叩いてしまいます。これが二人の関係にヒビを入れることとなり、ギクシャクしたものとなってしまいます。ルリが小学校に通ったのは低学年の間のみで、以後は学校にも行かず主人公くんの神社の社務所で時を過ごすようになります。通院暮らしをしながら関係が冷え込みつつも絶縁状態とはならない微妙な間柄は心を抉ってきます。


  • 和解と死別
    • そのようななかでギクシャクした関係はどのように恢復するのでしょうか。ある時、ルリの通院中の送迎の際、いつものように会話も弾まない中、ルリが更地を発見します。神社業を営む主人公くんは地鎮祭を主な収入としているため、過去において更地を見つけたら報告にするように言い含めていたのです。それが数年の歳月を経て繰り返されます。これを契機に心が動いた主人公くんはルリを買い物に誘います。主人公くんの些細な歩み寄りが呼び水となり二人は再び会話をするようになっていったのです。
    • しかしながら、幸せな時間は長くは続きません。死が二人を分かつ時がやってきます。余命が後1年であると宣告されるのです。最後の時を明るく振る舞おうとする主人公くんですが、ルリはまた鬱々モードへ。むしろ主人公くんを避けるようになります。ルリはこれまでの人生を振り返ります。学校に通ったのは低学年まででそれ以降はセカイの全てが主人公くんであり、何か自分の生命に意味はあったのであろうかと。一方主人公くんは最後に自分の信条を捻じ曲げてまで神に祈ろうとします。神主として割かし厳格に育った主人公くんは、神には利益を期待するものではなく、鎮めるものであるとして、神頼みは一切してこなかったのです。そんな主人公くんがルリの最期のために祈る所は何とも感動するシーンではないでしょうか。そしてその主人公くんの信条を知っているルリは、その祈祷を目の当たりにし最後の願いを告げるのです。自分を叱ってほしいと。そして自分は主人公くんにとって良いイモウトであれたかを問うのです。主人公くんとの二人だけのセカイで生きてきたルリにとって自分の価値は全て主人公くんに委ねられていたのです。主人公くんは神前にルリを連れていくとそこで契りを告げます。ルリの人生が肯定された瞬間でした。
    • こうしてルリは短い生涯を終えるのですが、主人公くんの日常はこれからも続いていきます。主人公くんの残りの日常の中にはルリと過ごした習慣が色濃く残存しています。ルリは死んでしまいましたが、主人公くんの人格を形成する上での大きな要因となり、人生の一部となったのでしょう。スタッフルームの片岡ともさんのメッセージも感慨深いものがあります。