未来ラジオと人工鳩「薊野椿姫シナリオ」の感想・レビュー

世界を犠牲に生存している主人公が、世界の為に死のうとするも、女に実存を見出し生きる話。
典型的なセカイ系のパターンであり、世界がどうなってもイイから愛する女との関係に全てを収束させる。
フラグ構築の重要な要素である、椿姫が死んだ師とのケジメをつける場面も描かれず不完全燃焼。
主人公視点の地の文で「椿姫」呼びなのに会話文の呼称が「薊野教授」なのも違和感。
フラグ構築後は淡々と伏線を回収しただけのように感じられた。

世界と女一人を天秤にかけて女を選ぶというセカイ系パターン


  • 人工鳩が増加し続けているのは何故かという伏線の回収
    • 物語の設定を成立すると、この作品では空に放たれた人工鳩が電波食いを行っており、インターネットやケータイ電話などの電波が全て失われています。体験版の時点では、葉月かぐやは人工鳩たちの補助脳で生かされていることが明らかになり、電波食いを止めさせるために自殺することになります。主人公くんはそのショックでラジオ放送から葉月かぐやの死までの記憶がなくなり、喋ることができなくなり、味覚も感じられなくなりました。葉月かぐやが死ねば人工鳩はいなくなり電波食いは終わるはずでした。しかし一向に人工鳩は減らず、電波食いも終わらないのです。そのことを解明するために、薊野教授は足繁く事故現場に通う毎日でしたが、薊野教授√では主人公くんがそれを手伝うことになります。
    • 教授手伝いの中で、主人公くんは薊野教授が尊敬していた師のAIを見つけ出します。これをラジオに組み込むことで師のAIと会話することを可能にするのです。これを薊野教授にプレゼント。教授はこのAIと会話することで過去の自分に区切りをつけるという重要な演出なのですが、大事なところがカットされており、この場面は見ることができません。この「過去との区切り」により薊野教授と主人公くんのフラグが成立するので、ここはちゃんと描くべきだろうと思ったのは私だけではないはず。
    • で、シナリオが進んでいくうちに、飛行機事故で唯一生き残ったのは越百秋奈であり、主人公くんではないことが判明する。秋奈√ではこれが秋奈がいるから過去はまぁいいかで終わるのですが、薊野教授√ではちゃんと確かめに行きます。するとどうでしょう。主人公くんはもう既に1回死んでおり、葉月かぐやと同様に人工鳩による補助脳で行かされていることが判明します。つまりはかぐやが死んだのに人工鳩の電波食いが終わらなかったのは、主人公くんの存在のせいだったのです。これを受けて主人公くんは自殺しようとするのですが、薊野教授による世界なんてどうでもいいから私の為に生きろエンドとなります。
    • エピローグではとってつけたかのように伏線回収がされ、未来ラジオで過去に情報を送る信号を開発します。シナリオの途中で変な異音がしたのは、これだったのさーというオチ。