Heritage tourism(014~015)【発表】「歴史教育とコンテンツツーリズムとヘリテージツーリズムの融合」

ヘリテージツーリズム論演習のラストは、各々が作ったツアープランの発表でした。
ちなみに私が作ったプランはこれ【↓】
h30shimotsuki14.hatenablog.com

5分発表・5分質疑応答ということで、以下は発表前に作っておいた原稿メモ。勿論発表の時は何も見ずにやったので、この通りに喋ったわけではない。

1.歴史教育とツーリズム

(1)歴史教育の問題点

  • ①歴史を学ぶ意義
    • 歴史を学ぶ意義は色々とあり、さまざまな理由付けによって正当化されます。そのうちの一つを挙げれば、「現在生きている国家や社会をよりよく生きる為」ということができるでしょう。私達が生きている国家や社会は突如として出現したのではなく、長い年月をかけて作られたものです。そのため、それらがどのようにして出来上がったかを知ることで、国家や社会に対する理解がより深まり、現代をよく生きることが出来るのです。E.H.カーでいうところの歴史とは過去と現在の尽きることのない対話なのです。
  • ②試験をパスするための手段化と日常生活との断絶
    • しかしながら、現代日本の高校の授業は学習目的が試験をパスするための手段にしか過ぎなくなってしまっています。大学受験の受験科目だから勉強する、高卒の資格をとるためにカリキュラムで必修単位だから勉強する。それ故、本来なら歴史とは自己と国家・社会との関りであるはずなのに、日常生活とは全く関係の無い机上の空論であるとの感覚に陥りがちです。
  • 歴史教育とツーリズム
    • だからこそ、学校の勉強が自分たちの生活・文化と関わりのある事として実感できるように繋がり意識を持たせねばならないのです。その一つとして活用できるのがツーリズムです。旅行・観光を通して、歴史や文化を体験することで、自分たちの生活と歴史が関わりあるものだと感じられると思います。

 

2.コンテンツ産業と歴史・文化・景観

  • 大衆娯楽の浸透性
    • とりわけツーリズムのひとつであるコンテンツツーリズムは、小説・映画・ドラマ・漫画・アニメ・ゲームなどのコンテンツ産業は若者との親和性が高いです。現在は「聖地巡礼」ともいわれる、作品の中で登場した舞台をめぐることが旅行行動として定着しています。しかも、コンテンツツーリズムは単に舞台に来るだけではなく、そこで物語のイベントを追体験したり、その景観がシナリオ読解上どのような効果を持つのかを考察したりすることも楽しみの一つとなっています。故に、注目されていなかった土地が「神聖視」されるようになり、そこに価値付けが生じるのです。そして、このことは、その土地がどのような土地であるのかという地域的関心を喚起させます。つまりは、その土地や地域に全く関係の無い第三者が作品を通して地域と繋がり、その歴史的成り立ちや文化にも興味を発生させるのです。

3.京アニ版『Kanon』栞ルートと琴似

  • ①琴似発寒川ハッサムコタン
    • では札幌市琴似はどのような地域なのでしょうか。琴似は京アニ版『Kanon』の栞ルートで主に登場します。不治の病のヒロイン:栞がもうすぐ死ぬため最後に通学を許可されるのですが、その時の通学路になっているのが琴似発寒川沿岸なのです。この琴似発寒川流域にはハッサムコタンが形成され、アイヌの居住地となります。つまり京アニ版『Kanon』の栞との登下校を追体験するなかで、先住民族の要素を取り扱うことができるのですね。
  • ②琴似と屯田兵
    • 続いて長栄橋が挙げられます。『Kanon』の栞ルートでは姉妹の絆がテーマとなっており、栞の姉の香里は妹が間もなく死ぬことに耐えきれず、妹などいないと言い張ることで自我の均衡を保とうとします。しかし栞は残りの時間を姉と過ごしたいと思っており、主人公の祐一はこの姉妹の仲を取り持つために奮闘するのです。この時、香里を説得しようとするのが、長栄橋なのですね。この長栄橋は橋の欄干が有名です。よくよく見ると、欄干の絵のモチーフが屯田兵と開墾になっているのです。ここから琴似が屯田兵村だったことに繋げられます。
  • 先住民族と入植者のコロニアルな関係
    • 以上により京アニ版『Kanon』の栞ルートの聖地巡礼から、琴似という地域にはアイヌの居住地があり、そこへ北海道で初の屯田兵村が形成されたことが学べるのです。琴似という地域は本通りを始め屯田兵村に基づいて築かれた街であり琴似屯田兵村兵屋跡や琴似屯田歴史資料館、屯田の森、琴似神社など様々な屯田兵関係の観光資源があります。『Kanon』の栞ルートの舞台を訪れたコンテンツツーリストの方々に、琴似がどのような地域なのかを是非体感してもらいたいところですね。