雑録

抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか2製品版 ROUTE1「秋野水引シナリオ」の感想・レビュー

バカゲーに見せかけた社会派ゲーのぬきたしシリーズ。「2」は許容と共存がテーマ。
「包摂と排除の原理」により、人間は共同体の統合性を高めるため、異端を創って排斥する。
それがマイノリティに対する差別を生み出すのだが、この問題を解決するにはどうすればいいか。
LGBTのため差別され怨恨に駆られた秋野水引は、無秩序と混乱を望み社会体制の転覆を図る。
秩序の為にマイノリティを排除した結果「無敵の人」を生みだし秩序が崩壊するという矛盾を抉り出す。
そんな現状に対し、主人公くんは価値観の異なる者たちの相互理解と共存を提唱するのだ。

秋野水引のキャラクター表現とフラグ生成過程

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  • LGBTであるため排斥され続けた少年が、所謂「無敵の人」となり、無秩序状態を作り出し、破滅と混乱を現出しようとする話
    • 【1】秋野水引は肉体的な性は男性でしたが、社会的な性は女性でした。そのため差別や偏見を受けることも多く、マイノリティとして苦しんできたのです。そんな水引も最初からテロルを手段としたのではなく、左派的な社会運動による権利の伸長を目指したこともあったのです。しかしそれらの左派運動の現実を知った水引は絶望します。結局、水引は自分は理解されることなんてないんだと痛感することになり・・・生存理由を肯定できない、社会に内包されない、失うものが何もないという状態に陥ります。こうして秋野水引は「無敵の人」になったのでした。
    • 【2】憎悪に燃える水引でしたが、安易な自爆テロなどには走らず、建設的な計画を立てていきます。一見すると水引は、暴力革命による社会体制の変革とマイノリティによる独裁を唱えていたかのように見えました。しかしその実態は、社会体制を転覆させることができれば後の事などどうでもよく、破壊と混乱・破滅と混沌だけを追い求めていたのです。
    • 【3】主人公くんは秋野水引のことが痛いほどよく分かりました。なぜならば、秋野水引の姿はあり得たかもしれない自分そのものだったからです。主人公くんも男性の生殖器が他人よりもとても大きいということで苛めを受け、コンプレックスを抱いて生きてきました。幸い主人公くんは、そんな自分を受け容れてくれる仲間たちに恵まれ、闇堕ちすることはなかったのですが、もし一歩どこかで可能性が違ったら、十分に秋野水引のような存在になりえたのです。だからこそ、主人公くんは何としてでも秋野水引を止めなければならなかったのです。
    • 【4】人間は元来価値観の異なるイキモノです。しかし前近代における小さなコミュニティでは共同体を維持するために多様な個性は潰されてきました。人々の移動が少なく、マイノリティであることが悪いという時代では、その問題性は顕在化することはありませんでした。しかしグローバル社会になり、価値観の異なる人々・社会集団との接触が多くなると、「価値観が違うということは当たり前」という世の中となってきます。それ故、異なる価値観を排斥するのではなく、融和を図ることが求められるようになったのです。価値観が異なる人々を差別や偏見により集団から排除してしまうと、無敵の人を生みだしテロが起こって社会秩序が不安定化してしまうことはもう火を見るよりも明らか。この世界では「共存」が求められているのです。
    • 【5】まぁ、そうはいっても、価値観が異なる人々が相互理解をするのは難しく、一朝一夕には解決しません。そのためには、諦めずに粘り強く長い対話を行うことが重要なのです。忍耐と寛容。暴走する秋野水引に対して、主人公くんは何度も追いすがり説得します。自分が理解されないからといって、理解してもらう努力を放棄し、それをLGBTのせいにしているに過ぎないと指摘します。その一方で、「肉体は男性であるけれども心は女性である」秋野水引のことを認めると熱い心をほとばしらせます!そのことを実証するために主人公くんが示したのが、秋野水引でも性的興奮を喚起されるということでした。主人公くんは男性でありノーマルであり健全です。そんな主人公くんが、男である秋野水引に性的反応を示すことが出来ると菊門に肉棒を突っ込むのです。それは秋野水引にとって自分が女として承認され、受け入れられたことの何よりもの証拠。こうして秋野水引問題は解決し、ハッピーエンドを迎えます。

 
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マイノリティは、いつだって理解されない。だったら、理解される必要がある。けれど、それは暴力的に理解を求めるのではなくて。ただ、そこに存在していることを、知らしめることで。無理解な相手に、自分という存在を許容させることだ。分かってくれなくてもいい。無関心でもいい。ただ、その場にいることを認めてくれること。マイノリティという存在を、許容させること。暴力的な理解を求めるのではなく、無意識の差別でもなく。その許容こそが、俺たちに必要なものなのだ。すべての人間が、すべての人間を許容できるようになれば。理解できない相手が存在するということを、ただ許せるようになったら----マイノリティは、それだけで生きていける。

 
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