ベビプリの時にもシスプリ回顧が行われたが、2019年現在本家本元がVtuberとしてメディアミックスするとのことでシスプリ回顧が話題になっている。便乗して私もシスプリ回顧をする。
【目次】
当時の社会的背景
日本が衰退していく過程を体感した時代
- シスプリから振り返る90年代~ゼロ年代の時代閉塞的な状況
- 90年代からゼロ年代にかけて流行したコンテンツ群は、ネットの普及もあってか、当時青春時代を過ごした多感な時期の若者の多くを、沼に引きずりこんだと言える。
- しかしこういったコンテンツ群が流行った一因にとして、社会的・経済的背景があったことも忘れてはならない。90年代~ゼロ年代は本当に社会が不安定だったのである。今ここで思いつくものを適当に列挙するが、ソ連崩壊、バブル崩壊、55年体制崩壊、オウム事件、阪神大震災、アジア通貨危機、2000年問題、9.11テロ、イラク戦争、小泉新自由主義改革、リーマンショック等々が挙げられる。(さらに2011年に東日本大震災が起こり「六重苦」と民主党政権の崩壊、アベノミクスのトリクルダウン理論で現在に至る)
- 本当にこの時期の日本社会には深刻な空気が蔓延しており、そういった時期に青春時代を過ごさざるを得なかった人々は、「時代の閉塞的な状況」及び「失われた30年」という経済状況が醸し出す雰囲気に抑圧されていたのである。こういった社会状況だったからこそ、90年代からゼロ年代にかけて時代状況を反映するような「狂気」のコンテンツ群が生み出されていったのだ。今でこそフツーであるが、イキナリ妹が12人できるとか狂気の沙汰と言えよう(厳密には初期のシスプリは9人で関係性も兄:妹=1:1だったが、のちに新妹として春歌・四葉・亞里亞の3人追加されたり、兄:妹=1:12になったりした)。
- そして今、90年代~ゼロ年代のコンテンツ群が次々と20周年を迎える時期にあると言える。この現象はシスプリだけでなく時代の狂気にさらされた人々の青春の回顧なのだ。
二次創作がオリジナルコンテンツを盛り上げる現象
- シスプリと二次創作に関すること
- 私は基本的にオリジナルから入ることは少なく、流行っている作品のパロディや二次創作を眺めるのが好きというタイプである。昔は個人ニュースサイトやCG定点観測でリンク貼られていたものを見ていたし、現在も尊敬する方々が紹介している絵を眺めている。スマホゲーもやったことはなく、艦これ、FGO、アイマス(デレステ、ミリシタ、シャニマス)などは、たまたま目にする二次創作を楽しんでいるという状況だ。n次創作がオリジナルのコンテンツを盛り上げる要素であることはこれまでも指摘されているが、私はその影響をモロに受けていると言えよう。
- さてシスプリについても同様であり、シスプリそのものよりも二次創作漫画やSS、同人誌を見て楽しんでいた口である。そのため、当時どのような二次創作作品があったのかについて掘り起こしてきたので、ここに記しておく。現在まで生き延びている作家先生たちの作品もある。
二次創作群
和泉つばす作品
和泉つばす『Love&Peace』翡翠亭、2001.8、(C60作品)
和泉つばす『ぷちめいど』 琥珀亭、2001.12、(C61作品)
和泉つばす『遠愛進化論』翡翠亭、2002.10、(Cレヴォ32作品)
- 概要
- 和泉つばす先生の衛本。衛から外国の学校に行くことになったと告げられたあにぃは動揺して情緒不安定になる。衛が明るく笑顔で振るまう姿を見て、あにぃは発狂し、ガラス窓を殴り始めるというドメスティックバイオレンスな展開になっている。この頃の和泉つばす先生は強姦に嵌っていたようで、あにぃが衛を無理やり手籠めにしてしまうのであった。別離に対して衛は別れるからこそ笑顔で居ようとしたのに対して、兄は別れるのにどうして笑顔なんだ!と憤怒する「すれ違い」がウリになっている。あとがきではシスプリ2期(プリピュア)の決定よりも、月姫のアニメ化に喜ぶ和泉つばす先生を見ることができる。
みけおう作品
鈴平ひろ作品
鈴平ひろ『Pouring my honey to you all night long』HEART WORK、2000.12、(C59作品)


- 概要
- 現在だとNavel系列の作品でお馴染みの鈴平ひろ先生のシスプリ本。画力的には2000年の時点でもう既に完成されており、クォリティの高い絵柄となっている。内容はキャライラスト&短編漫画で表紙の千影漫画がメインとなっている。前書きでは、旧妹・新妹問題(シスプリ初期は12人の妹ではなく9人であり、後に3人追加された)について言及しており、当時のシスプリ界隈の雰囲気を知る貴重な資料となっている。またキャラ造形に対しても鈴平ひろの視点からコメントがなされており、キャラに対してどのような属性を付与し、設定を加えるかについて勉強になる。千影の漫画描写では中二的なセリフや言い回しに工夫が見られる。シスプリの千影というキャラクター造形は、現在で言えばデレマスの蘭子等の系統に受け継がれたという事ができるかもしれない(千影は素で言っているが、蘭子はそれを演じようとしているので違いがあるかもしれないが)。