これまでコンテンツツーリズムとヘリテージツーリズムの重層性を研究してきた。コンテンツツーリズムはこれまでとは違う客層を発掘し、従来の文化財などの歴史資源に新たなスポットライトを当てる。これにより文化財が再評価され、保存・継承の対象となり、新たな地域資源となる。そしてその文化財は普及のために教育に活用される。今回は、コンテンツツーリズムにより再評価された文化財を活用し、そこから高校日本史の授業を開発し、実践した。
今回の趣旨
郷土に伝わる伝統的な祭祀が、コンテンツ作品のシナリオ構成において、ストーリーを動かす重要なイベント素材となるケースがある。その一例が『あの花』で登場した「秩父吉田の龍勢」である。物語の影響力は大きく、人を動かす原動力なり「地元の祭り」であったものが全国規模で着目されるようになった。また、その伝統技術を絶やさぬよう有志によってサポーターが結成され、情報発進による認知度の向上と文化の保護活動が行われている。さらに地元の小中学校においても埼玉県の教育事業である「博物館・美術館等と学校との連携による学びについて」が展開され、そのうちの「博物館・美術館等を活用した子供パワーアップ事業」により龍勢の技術継承が行われている。このようにしてコンテンツツーリズムにより地域の価値が普遍化され、ついに「龍勢」は国指定の重要無形文化財にまでなったのである。
以上のように「秩父吉田の龍勢」の価値が「地域」や「地元」の枠を出て普遍化・一般化され「国」の文化財となった以上、当該地域以外でも龍勢という文化財を用いた教科教育を行うことができる。文化財を媒介として地域の歴史を、高校日本史という視点で再構成する、テーマ史的主題学習を展開できよう。
【授業実践】現代に継承される伝統的祭祀から受験日本史を学ぼう!
1.導入
埼玉県って知ってる?
コンテンツツーリズム『翔んで埼玉』の動画を見せる。埼玉県は観光資源がイマイチ着目されずブランド調査の魅力度ランキングでも2018年で43位になるなどの状況である。それを打開するため埼玉県は、観光業を始め人気のコンテンツ作品とコラボする戦略を取っている。さらには選挙にもコンテンツを利用し、知事選の投票率を上げようとした。