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  • 昭和45(1970)年告示高等学校学習指導要領の解説:『高等学校学習指導要領解説 社会編』(大阪書籍 1972年5月)

    学習指導要領解説における主題学習

    • 高等学校学習指導要領解説における主題学習の取扱いについて、その変遷を分析する。それにより主題学習が、どのようなねらいのもとで設置されたのかを明らかにする。
    • 対象とする学習指導要領解説は、主題学習が公的に導入されたと位置づけられる昭和35(1960)年版学習指導要領の解説以降
    • 今回対象とする解説
      • 文部省『高等学校学習指導要領解説 社会編』大阪書籍 1972年5月

    前回の改定において世界史がA科目とB科目に分かれ、B科目として深く内容を取り扱うために導入された主題を選ぶ学習であったが、昭和45(1970)年改訂につき世界史は一つの科目として一元化された。では主題を選ぶ学習はどうなってしまったのであろうか。『高等学校学習指導要領解説 社会編』(大阪書籍 1972年5月)第1章総説第1節改訂の趣旨「2 各科目の改訂の要点」「世界史」において、「3 生徒の「世界史」に対する関心を高めたり、生徒の歴史的思考力をいっそう深めたりするため、次の諸点に配慮した」と記され「イ 改訂前どおり、主題を選んで学習させるいわゆる主題学習を行なうことが望ましいとした」と扱われている。つまり、主題学習は?関心を高めること、?歴史的思考力を深めることを目的として継続されたのである。

     ちなみにこの解説の記述において初めて「主題学習」という概念が登場した。この当時、学習指導要領自体には「主題学習」とは一切記されていないのである。ただあるのは、「3 内容の取り扱い」(2)における「「世界史」の目標を達成し、生徒の歴史的思考力をいっそう深めるため、歴史的な流れの学習の中で、適切な主題を設けて指導することが望ましい」(註1)という叙述のみであり、主題選定の観点、単位数に対応する主題数、主題の配慮が示された。解説においては「主題を選んで学習させるいわゆる主題学習」と述べられ、概念化された「主題学習」という用語が使われるようになり、指導方法に関する説明がなされていく。よって、ここでは『高等学校学習指導要領解説 社会編』(大阪書籍1972年5月)における主題学習の叙述について分析していく。

    文化圏学習とのかかわりについて

     「文化圏」という概念は既に昭和35(1960)年版学習指導要領でも存在したが、「文化圏学習」が大々的に唱えられたのが、昭和45(1970)年版学習指導要領からである(註2)。ここにおいて文化圏学習と主題学習を結びつけること方法が提示された。なぜならば、文化圏別に学習することによって、各文化圏の歴史が分離されてしまうことを危惧したからである。解説の「4 内容の取り扱い」においては、学習指導要領の「3 内容の取り扱い」(1)「各文化圏の歴史をまったく分離して取り扱わないで、相互の関連を考慮しながら、世界の歴史の大勢と結びつけて正しく理解させるようにする」という記述を引用しながら、留意を促している。特に、新航路・新世界の発見により世界が一体化する前には文化圏学習が分断され複数に解体されて扱われやすいので、「つねに世界史的視点を失わないように」と述べられている。具体的には「アレクサンダー大王の遠征」の歴史的意義や「シルク-ロード」の役割などを例示し、「…文化圏相互の関連を考察させることも、各文化圏の歴史を世界の歴史の大勢と結びつけて理解させるうえで効果的であろう。このようなときには、主題学習を文化圏学習に結びつけて行なうのも一つの方法である」と記され(註3)、主題学習の役割が示されている。解説の「3 内容」(3)西アジア文化圏の形成と文化の交流における「東西文化の交流」では、「・・・これらの東西を結ぶ交通路を取って、たとえば、スキタイ、匈奴、蒙古、ソグド、ペルシア、アラビア、インドなどの諸民族が、文物の交流に果たした役割について、主題学習等においてまとめさせ、さらに、東西文化の交流に関係の深い人物を取り上げて学習させるのもよいであろう」(註4)と述べられ、文化圏をつなぐ交流として主題学習の指導を促している。

    人物学習とのかかわりについて

     世界史の指導方法として「人物」が重視されるのも『高等学校学習指導要領解説 社会編』(大阪書籍1972年5月)の特徴である。各科目の改訂の要点では、「実際の指導に当たっては、世界の歴史上の人物を取り上げ、人物とその時代的背景との関連などを考察させることも考えられるとした」(註5)とあるように人物学習を導入したことを示している。この人物学習においても主題学習との関連が見られる。解説「4 内容の取り扱い」(3)世界の歴史上の人物の取り扱いにおいて以下のように記述されている。「人物の取り扱いは、系統的な学習の適当な箇所において実施するとともに、主題学習において取り上げることも考えられる。主題として人物を取り上げる場合には、単にひとりの人物を取り上げるだけではなく、さまざまな角度から複数の人物を取り上げて総合的に考察させるなど、適切な学習上の配慮を加えることによって、生徒の興味・関心をいっそう高め、歴史的思考力の深化に役立たせることもできよう」 (註6)。ここからは、人物を通して生徒の興味・関心と歴史的思考力に関して、主題学習の効果が述べられている。人物の選定基準については以下の通り。

    • 文化圏または時代を特徴づける思想、宗教などの形成者となった人物
    • 文化圏または時代を象徴的に体現している人物
    • 時代の変動期に当たり、新しい時代の形成に大きな役割を果たした人物
    • 文化圏相互の交流に大きな役割を果たした人物
    主題学習のねらいについて

     解説「4 内容の取り扱い」(2)主題学習において、その学習の説明がなされている。まずは、主題学習のねらいについて分析する。主題学習のねらいは、「「世界史」の目標を達成し、生徒の歴史的思考力をいっそう深める」ことであるとされ、さらに詳細に「系統的な学習でつちかわれた歴史的理解を基礎に、指導事項を広げたり、掘り下げたりすることによって、歴史的思考力を深め、生徒の歴史意識をさらに高い認識にまで育てる」ことがねらいだと述べられている。効果としては、「これらによって深められた歴史的思考力により、以後の系統的な学習を、より発展的に展開できる」と、系統学習→主題学習→系統学習という内容構成であることが求められていることが分かる。それを端的に記しているのが「主題学習と系統的な学習は、ともすれば対比的な学習の方法のようにとられやすいが、「世界史」の学習は系統的な学習を中心にし、両者が有機的な関連を保ちながらすすめられるものでなければならない」という表現で、「歴史的な流れの学習の中で、適切な主題を設けて指導することが望ましい」ということが分かる。

    主題選定の観点について

     昭和35年告示学習指導要領は、昭和36年にその解説である『高等学校学習指導要領解説 社会編』が刊行された。そこにおいて、主題の選定基準は?「倫理・社会」や「政治・経済」の学習と関連の深いもの。たとえば「(2) 人生観・世界観」の学習に関係のあるものや、現代の諸問題を考える際に参考となるもの。  ?政治的、経済的、社会的な観点から総合的に学習しできるもの ?できるだけ世界の地域相互のことがらに関連のあるもの の3つであった。その選定基準に従い、シルクロードと東西交渉、イギリスの議会政治の発達、西部開拓と南北戦争露土戦争と列強の世界政策、ワイマール体制とその崩壊などと5つの主題例が示された。

     昭和47年に刊行された昭和45年告示学習指導要領用の解説では、具体的な主題例に代わり新たに3つの観点a.b.c が提示され、それに関する叙述が行なわれている。ここでは、どのような観点であり、どのような教育的意図があるのかを分析する。

     まず観点aについてだが、これは「政治的、経済的、社会的、文化的、国際的な諸点から、多角的、総合的に学習できるもの」である。この観点に関して、解説では次のように述べて、観点として取り上げた意義を説いている。「世界の歴史上の事象についてより深い理解を得」させて、「歴史的思考力を深める」ものであると。この観点と意義は、昭和35年版用の解説の観点の「政治的、経済的、社会的な観点から総合的に学習しできるもの」を引き継いだものといえる。

     次に観点bは「世界の歴史上の事象について、地域ごとの比較考察的な、あるいは地域相互の関連的な学習のできるもの」である。この観点は今回の改訂の目玉である文化圏学習と大いに関係している。上述したが文化圏学習は、各地域の歴史が他の地域と断絶して教えられるというマイナスの側面も孕んでいる。この事態を主題学習によって克服しようというのである。文化圏学習に主題学習を組み合わせることにより、「各地域ごとの発展のしかたの特色や地域相互の関連を把握」することができ、「歴史上の事象に関する比較考察および関連思考を深める」効果が期待されているのである。また、この観点は文化圏学習だけでなく、人物学習にも寄与するものである。それは何故か。上述した人物学習における人物選定基準を見てみよう。?文化圏または時代を特徴づける思想、宗教などの形成者となった人物 ?文化圏または時代を象徴的に体現している人物 ?時代の変動期に当たり、新しい時代の形成に大きな役割を果たした人物 ?文化圏相互の交流に大きな役割を果たした人物、とある。つまり、人物の選定基準における4基準のうち3つが文化圏に関連する人物である。歴史上の人物について興味関心をもたせ、学習を深化させるものとして主題として人物を取り上げることが要請されていることからも、この観点bは文化圏学習・人物学習と三重の効果が期待されている観点だといえよう。この観点bと昭和35年版用の解説の観点のかかわりについては、「できるだけ世界の地域相互のことがらに関連のあるもの 」を継承したものであるといえる。

     そして観点cは「世界の歴史上の事象の発展を、時代別、地域別にある程度大きくまとめて学習できるもの」である。この観点は昭和35年版用の解説には無い観点であり、ここにおいて初めて登場したものである。解説には「世界の歴史上の事象については、系統的な学習においても、それぞれの時代に関連して取り扱われるが、その変遷のようすを、時代別、地域別にある程度大きくまとめて総合的、発展的に考えさせることは、歴史上の事象に対する生徒の理解を深める上で有効」と述べ、時代別、地域別に「大きくまとめて」考えさせることをねらいとしていることが分かる。

    主題数、配当時間、実施上の留意点、学習活動、単位数について

    解説において主題数と配当時間に関しては以下のように記されている。3単位で履修させる場合は最低1主題を、また4単位以上で履修させる場合はそれぞれの単位数に応じて適切な数の主題を設けて学習させることが望ましい」(「3 内容の取り扱い」(2)イ)と述べられ、4単位では2〜3主題、5単位では4〜5主題が考えられるが、学校の実情に応じて適切に行なうことが望ましいとされる。1主題の配当時間は3〜6時間と示されている。 そして二つ以上の主題を取り上げる場合には「主題の配当については、観点の異なるものを取り上げ、また特定の地域や時代にかたよらないように留意すること」(「3 内容の取り扱い」(2)のウ) とあり、最低1主題のみを選ぶ場合には、文化圏学習と有機的に関連させる必要性からいって、bの主題が適切と述べる。

    実施上の留意点は以下の通りである。

    • 系統的な学習との重複を避ける、専門分野に深入りしない
    • 学習方法:主題についての研究・討議・発表や資料の収集など、可能なかぎり、生徒の自発的な活動を中心に学習を展開することが望ましい
    • 長期休業における課題学習という方法も
    • 主題学習は、主題の内容、学習の時期・方法や資料などについての事前の準備がじゅうぶんになされて初めて学習の効果が期待される

    学習活動では生徒の自主性が尊重されている。学習指導要領の「3 内容の取り扱い」(4)カでは、受動的な学習を避け、生徒の自発的な学習の展開などを通して、学習効果を上げるように努めることが示され、「たとえば、主題学習の展開などにおいて、生徒の自発的な学習が生かされるよう、学習指導に創意くふうを図ることが大切 」と示唆されている。

    履修に当たっての注意事項としては以下の通り。4単位以上で履修させる場合には、主題学習をより多く行なうことになっていることに留意すべきでるとし、したがって、4単位以上で履修させた場合には、それぞれの単位数に応じて適切な数の主題を設けて学習させるなどして、歴史的思考力を深めるとともに、「世界史」の学習に対する関心を高めることができるよう、指導計画の作成と運営において周到な配慮をし、効果的な指導を行なう必要があると述べる。

    小括

    昭和45年版用の解説『高等学校学習指導要領解説 社会編』では、昭和35年版用の解説で「適当な主題(中略)を選び、政治的、経済的、社会的な観点から総合的に学習させる」とされていた指導方法が、「主題を選んで学習させるいわゆる主題学習」とされ明確に「主題学習」が確立された。昭和35年版で導入された契機はA科目とB科目の差異化にのためであったが、一本化された後も関心を高め歴史的思考力を深めるための学習方法として継承された。昭和45年版で特徴的なのが、文化圏学習・人物学習との関係である。文化圏学習の地域ごとに断絶されやすい傾向をカバーするため、比較考察・地域相互関連の主題設定が強調された。また主題として人物を扱うことも提唱された。内容構成としては、系統学習と系統学習の間に主題学習を行なうことがよいとされており、単位数に応じた主題数や主題ごとの配当時間、授業形態に関する記述もなされた。

    (1)文部省『高等学校学習指導要領解説 社会編』大阪書籍 1972年5月 299頁
    (2)同書 5、12、144-145頁
    (3)同書 167-169頁
    (4)同書 158頁
    (5)同書 12頁
    (6)同書 174頁