タバコというモノの歴史
- タバコの栽培方法
- タバコの種子は繊細なため、苗床で育て、ついで畑に移植する。
- 生育にともなって花枝部の切除などをおこない、頃合いをみて幹ごと刈り取る or 下位の葉から順次摘み取って収穫する。
- 収穫した葉の乾燥はタバコ栽培でもっとも特徴的なプロセス。水分を除去するだけでなく、化学変化によって独特な味と香りを生み出す。
- 陰干し(空気乾燥、エア・キュアリング):バーレー種
- 天日干し(サン・キュアリング):オリエント種
- 直接的な火力乾燥(ファイアー・キュアリング)
- 循環熱風火力乾燥(フルー・キョウアリング):黄色種
- 乾燥させた葉タバコをさらに加工して、種々のタバコ製品・商品が作られる
- タバコの異常性
- タバコは「新大陸」を起源とし、いわゆる「コロンブスの交換」により、旧世界にもたらされる。タバコが世界中に蔓延している現在、極めて「短い」歴史しか有していない。
- 世界史の長いタイムスパンで考えれば、大規模な商業ベースでタバコ、とりわけ紙巻タバコが身近にあるという状況は、むしろ異常。
- 本著の目的
- タバコの異常な状況を歴史的に相対化する視座を提示すべく、紙巻タバコ普及以前のタバコの多様なあり方に注目し、生産よりも消費の側面において焦点をあててさまざまな史資料やデータを根拠に簡潔に論ずる。
- 日常の消費行動は従来の史料の範疇ではとらえにくいので、文芸作品を意識的に用いて叙述を具体的にする
①未知との邂逅
タバコの始まり
- タバコの植生
- アメリカにおけるタバコ消費の起源
- なぜ人類はタバコを栽培してきたのか
タバコとの出会い
- コロンブスの史料とタバコ
- 今日まで伝わるのは、コロンブスの航海日誌の写本を参照して、ラス・カサスが転記した抄録・摘要
- 「大海原で、男がただ一人乗る丸木舟に出会った。・・・・・・乾燥した草の葉を2、3枚持っていた。この葉はすでにサン・サルバドール島で贈り物としてわたしに届けてきたことがあり、彼らの間では貴重品にちがいないと考えられる」
- 「集落を往来する大勢の人々が・・・・・香煙の出る草を持っていることに気付いた」
- 航海日誌の写本を敷衍して書き上げたラス・カサスの『インディアス史』
- 「いくつかの枯れ草を、一枚のやはり枯れた葉っぱでくるんだもので・・・・・その筒の一方に火をつけ、反対側から息と一緒にその煙を吸い込むものである。この煙を吸うと・・・・・・体の疲れを感じないという。・・・・・・彼らはタバーコと呼んでいる」
- 「タバーコを吸う癖のついたエスパーニャ人たちを見かけた。そのようなことをするのは悪癖であると私がなじると、もはや今ではそれを吸うのをやめることは、自分の手におえないのだ、と彼らは答えた。」
- 今日まで伝わるのは、コロンブスの航海日誌の写本を参照して、ラス・カサスが転記した抄録・摘要
先住民の喫煙―葉巻・パイプ・タバコチューブ
- パイプ
- タバコチューブ
- 「葦の茎」で作られ、市場で売られる。
- ディアス『メキシコ征服記』:アステカ王モクテスマ2世が芳香油と「タバコという草を混ぜ合わせたもの」が詰められた「模様の書かれた筒」の火をつけて喫煙する
- チューブに詰められたものはイツィエトルでニコティアナ・タバクムと推測されている
- ピシエトルはニコティアナ・ルスティカと推定され、蛇をも眠らせる「薬草」、「用途の広い草」とされる。
噛みタバコと嗅ぎタバコ―非喫煙方式
万能薬の福音
- タバコはどのようにしてヨーロッパに受け容れられたか
世界への伝播
- アジアへの伝播
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- 日本への伝播
- 日本、1600年前後、フィリピン経由
- 日本への伝播
- 世界中を覆いつくすタバコ
- タバコの浸透
- 最初ヨーロッパが手にしたタバコは、17世紀前半までに驚くべきスピードで世界を周航、先に伝播した国や地域を飛び石として隅々にまで浸透。
- アメリカ先住民のタバコの複雑な機能のなかから、ヨーロッパ文化が医薬としての側面を切り出して強調したため、これに対応して世界各地の医薬体系へタバコは組み込まれた
- タバコ伝播の要因
- ヨーロッパ化されたタバコ=各地の医薬体系を文化的レセプタとして結合 →初期の異文化バリアを各地で容易に突破、依存性が浸透を保証する →伝播・受容の連鎖が自動的に世界中を覆いつくす。
- タバコの浸透