雑録

歴史-文献

次の演習のネタ集め用メモ「戦前期軍港都市呉への帝国民の訪問」(軍港都市観光・進水式・海軍記念日・博覧会・海軍省海軍軍事普及部)

前回までのあらすじ 4月冒頭の演習の授業では、旧軍港都市呉の文化遺産を活用したコンテンツツーリズムについて報告した。5月の演習では戦前期の呉に焦点を当てて研究を進め報告することとなった。現在行われている旧軍港都市呉への訪問と過去の帝国民の軍港…

【レジュメ】髙橋香織「軍港都市・呉の戦後史―旧軍港市転換法と自衛隊誘致を中心に―」、『北陸史学』67号、55-77頁、2018

概要 「はじめに」で先行研究の整理が行われ、第1章で海軍進出に伴う主要産業の喪失による海軍・呉市民間の相互依存関係の構築が論じられ、第2章では戦後呉市経済の混迷と軍転法設置について、第3章第1節では軍転法の限界について述べられる。 だが第1章、第…

加藤政洋「『呉花街案内』を読む」(上杉和央編『軍港都市研究Ⅱ』、清文堂、2012年、321-323頁)

『呉花街案内』に関するコラム。従業員の女性426人分の個別データが掲載されている所が最大の史料的価値であるとしている。 『呉花街案内』とは 呉市で1935(昭和10)3月から5月にかけて開催された「国防と産業大博覧会」の会期に合わせて発行されたB6の書籍。…

村中亮夫「地形図と空中写真からみる呉の景観変遷」(上杉和央『軍港都市研究Ⅱ』清文堂、2012年、45-79頁)

呉市の地形図・空中写真を用いて、その土地利用の年代的変遷を論じる。 第1節 呉の地理的環境 第2節 呉の景観変遷 (1)呉鎮守府設置の経緯と設置前の景観 (2)呉鎮守府開庁後 (3)呉鎮守府拡大期 (4)第二次世界大戦終結前後 (5)高度経済成長期 (6)20世紀末~21…

加藤政洋「軍港都市の遊興空間」(上杉和央編『軍港都市研究Ⅱ』、清文堂、2012年、281-320頁)

軍港都市には遊興空間が存在し、そこは消費の局面では空間的に分化しており、海軍の社会性が刻み込まれていた。 はじめに 第1節 軍港都市の遊郭 (1)『全国遊郭案内』における軍港都市 (2)遊郭の立地と景観 (3)私娼街の問題 第2節 軍港都市の花街 (1)遊郭との…

上杉和央「連続と断絶の都市像-もう一つの「平和」都市・呉」(『複数の「ヒロシマ」 記憶の戦後史とメディアの力学』、青弓社、2012年、103-138頁)

本論の趣旨 呉市は、海軍が培った技術を用いるという連続性と軍・軍需目的とは異なるという断絶性の両面性を保有している。この矛盾を解消させる手段が平和産業港湾都市であり、戦前との連続性・断絶性どちらを主張する時にも使用できる便利な概念であった。…

林美和「呉市における戦後復興と旧軍港都市転換法」(河西英通編『軍港都市研究Ⅲ 呉編』、清文堂出版、2014年、309-332頁)

本稿の趣旨 敗戦後の呉市は海軍依存からの転換を目指し企業誘致と産業育成に努め成功したが、冷戦により再軍備への忌避感が無くなると軍港都市のプライドを取り戻した。しかしそれは再び海軍に依存していく契機となり、失われた30年により製造業が衰退すると…

河西英通「「国防と産業大博覧会」の頃」(河西英通編『軍港都市研究Ⅲ 呉編』、清文堂出版、2014年、272-277頁)

本稿の趣旨 1931年6月に刊行された『呉市主催国防と産業大博覧会誌』を中心に「国防と産業大博覧会」の概略と特徴を述べる。 以下、本文内容まとめ 「国防と産業大博覧会」は戦前呉の一大ページェント 1935年3月27日から5月10まで二河公園と川原石海軍埋立地…

齋藤義朗「軍港呉と進水式-昭和前期の臨時イベント-」(河西英通編『軍港都市研究Ⅲ 呉編』、清文堂出版、2014年、233-238頁)

本稿の趣旨 呉海軍工廠において進水式は呉市全体を挙げた一大ビッグイベントであったが、情勢緊迫化で進水式の公開は秘匿化された。 内容まとめ 進水式のイベント化 「式場内では、記念絵葉書販売や臨時郵便局での記念スタンプ押印なども行われたが、式典は…

【文献サーベイ】呉市海事歴史科学館 研究紀要の分析

博物館には4つの機能があり、それは①調査研究、②収集、③保存、④展示である。 博物館では調査研究が行われており、その成果は紀要で報告される。 すなわち研究紀要を分析すれば、その館がどのような研究をしているのかが分かるのである。 科学ショーのイベン…

吉田裕、森茂樹『アジア・太平洋戦争(戦争の日本史23)』、吉川弘文館、2007

参考になった箇所をまとめておく。 帝国日本の欠陥 明治憲法体制の問題点 「統帥権独立」の始まり 明治憲法の分立制に対する井上毅の説明 明治憲法体制下におけるリーダーシップ 陸海軍の対立、陸軍省と陸軍参謀本部の対立、海軍省と海軍軍令部の対立 陸海軍…

呉市史編纂室編『呉市史』第三巻(呉市役所、1964年)

『呉市史』の第三巻は明治16年から大正15年までの呉海軍について記載してある。 以下、呉市の通史に関する箇所をまとめておくこととする。 鎮守府開庁以前 明治16年 海軍省水路局の基本調査の開始 「日本の沿岸を東西二部の海軍区に分けた(常泊所-東京湾・長…

上杉和央「軍港都市<呉>から平和産業港湾都市<呉>へ」(坂根嘉弘編『西の軍隊と軍港都市: 中国・四国 (地域のなかの軍隊 5)』、吉川弘文館、2014年、104-130頁)

本論の内容 軍港都市としての呉は空襲と敗戦により断絶したが、占領政策の変化と自衛隊の創設により軍隊の街として連続しており、「赤れんが」という海軍イメージの利用により、空間的な広がりを見せている。 はじめに 平和産業港湾都市 「平和産業港湾都市…

【文献サーベイ】史学雑誌「回顧と展望」(2018-2020)における海事・海軍・軍港都市に関する文献のまとめ

※掲載順 『史学雑誌』127編第5号(2018.5) 佐藤理恵「維新期佐賀藩海軍とその終焉」(『佐賀大学地域学歴史文化研究センター研究紀要』一二) 佐賀藩海軍の動向を追い、明治新政府海軍への収斂を展望した 山田裕輝「幕末期萩藩の海軍建設とその担い手」(『年報…

高橋昭夫「第Ⅳ章 戦後北海道の光と影(現代)」 関秀志他『新版 北海道の歴史 下』2006年、283-387頁

第一節 戦争・敗戦 一、北海道空襲 及び 二、敗戦 第二節 米ソの影・米軍占領と北方領土 一、飢えとヤミ市 二、米軍が上陸、間接統治 三、北海道社会党の実力 四、農地改革 五、北方領土返還をめざし 第三節 田中道政とその時代 一、初めての民選長官誕生 二…

榎森進「これからのアイヌ史研究にむけて」(北海道大学アイヌ・先住民研究センター『アイヌ研究の現在と未来』北海道大学出版会、2010年、20-58頁)

アイヌ史研究に関する問題点のメモ 現在のアイヌ史研究で重要なこと(21頁) 「「アイヌ民族を取り巻く現状を正しく見据えた研究」をしていかなければならないということ」 問題意識の欠如(21頁) 「〔……〕研究者の関心のある問題をアイヌ民族を取り巻く現在の…

伊藤之雄『原敬』(講談社選書メチエ、2014年) 「原敬を考える意味−はじめに」および「第一部」(17-122頁)

原敬を考える意味−はじめに (17-28頁) 本書の趣旨「原の第一次大戦後の新状況への対応」(18-19頁) 「本書では、原の生涯をたどりながら、彼が第一次世界大戦後の新状況にどのように対応していったのかを見てみたい。そのことで、理想を持ちつつ現実的に対応…

遠山茂樹『明治維新』(2018年、岩波文庫) 雑考

戦後歴史学・階級闘争史観・明治維新は単なる封建勢力内の権力移動という論調の明治維新。 この1冊だけ講読するのではなく、近年の新書などではどのように明治維新が描かれているかとかの対比をすればよかったかもしれない。 大衆向け新書⇒講談社現代新書(板…

遠山茂樹『明治維新』(岩波文庫、2018年) 第五章「明治維新の終幕」(313-334頁)

明治維新を、天保12(1841)年の幕政改革から明治10(1877)年の西南の役の期間における、絶対主義形成過程と捉える歴史叙述。 概要 倒幕派の背景には尊攘思想があったので、明治新政府は対外膨張を孕んでいた。征韓論は、対外膨張VS国内統治の対立ではなく、権…

遠山茂樹『明治維新』(岩波文庫、2018年) 第四章「天皇制統一政権の成立」(225-312頁)

概要 王政復古の大号令の思想は公議政体論と共通するため、慶喜の新政府への参加の是非が問われたが、薩長は強行的に旧幕府との戦争を引き起こした。故に新政府は批判を受けたため、自己の権力を正当化するため五箇条の御誓文や政体書を出した。だが、それら…

遠山茂樹『明治維新』(岩波文庫、2018年) 第三章「幕府の倒壊」(125-223頁)

概要 尊王攘夷運動は8月18日の政変、禁門の変により挫折した。第一次長州征伐に際し、奇兵隊などを組織したことで、藩主を擁する藩庁側に銃火を浴びえることができ、封建道徳的名分論に関して倒幕派は尊攘派よりも深みを増した。一方、条約勅許により開国は…

遠山茂樹『明治維新』(岩波文庫、2018年) 第二章「尊王攘夷運動の展開」(59-124頁)

概要 欧米列強の外圧よりも幕末日本にブルジョワ的萌芽があったという内在性を重視している。 当初、尊王攘夷論は幕府を強化するための理論的根拠だった。尊王攘夷はいつから反幕府となったのか。それは継嗣争いに敗れた改革が井伊攻撃の口実を違約調印に求…

遠山茂樹『明治維新』(岩波文庫、2018) 第一章「天保期の意義」(pp.37-58)

戦後歴史学・階級闘争史観・明治維新を絶対主義革命と捉える。 第一節 問題の所在 明治維新の起源は天保期(p.37) 「19世紀3,40年代の天保期の政治過程の中に、すでに明治維新の政治的本質の原型が形成されていた」 天保期の特徴(p.37) 「封建的土地所有と耕…

三谷太一郎『日本の近代とは何であったか』(岩波新書、2017) 第三章「日本はなぜ、いかにして植民地帝国となったのか」(pp.143-204)

植民地帝国日本の始まり 「遼東半島還付が日本政府や国民に与えた深い挫折感は、日清戦争後に出現した植民地帝国の実体そのもの(いわば即時的な植民地帝国)を、自覚的な植民地帝国(いわば対自的な植民帝国)に変える内面的動機となりました。これによって日本…

遠山茂樹『明治維新』(岩波文庫、2018年) 序論(pp.19-36)

この本を読むにあたっては戦後歴史学についての知識が必要。 一 明治維新史の学問的確立の条件 明治維新史を含め日本近代史が最も未開拓な分野であった理由 「〔……〕第一に基礎史料が充分に公開されなかったこと。公開された少数のものも、その多くは、学界…

加藤聖文『「大日本帝国」崩壊』(中公新書、2009)

本書の趣旨 大日本帝国とは何だったのか、その本質はどこにあるのか、どういうかたちで滅亡していったのか、そのことが現在のわれわれにとってどう関わっているのか、これらを明らかにする。 以下 参考になった箇所抜き書き 満洲国崩壊の意義 「満洲は朝鮮や…

鈴木多聞『「終戦」の政治史1943-1945』(東京大学出版会、2011) 第四章「ポツダム宣言の受諾」(151-214頁)

本章の趣旨 日本降伏の要因に、原爆要因やソ連要因だけではなく、本土決戦要因と条件要因を加えて考察する。 本章の視覚(1) 昭和天皇の決断に最も大きな影響を与えたのは、実は本土決戦要因であった。 実際、8月10日の御前会議において、昭和天皇は、降伏理…

鈴木多聞『「終戦」の政治史1943-1945』(東京大学出版会、2011) 第三章「鈴木貫太郎内閣と対ソ外交」(109-149頁)

第3章の趣旨 米ソの軍事的圧力が、日本をソ連に接近させたという観点から、日本の軍事・外交政策の双方を再検討する。 そして、その政策は戦争終結の時期や条件の問題とどのような関係にあり、その中で、昭和天皇はどのような政治的役割を果たしたのかについ…

鈴木多聞『「終戦」の政治史1943-1945』(東京大学出版会、2011) 第二章「東条内閣の総辞職」(57-107頁)

第二章の概要 1944(昭和19)年7月7日、絶対国防圏の一角であるサイパン島が陥落し、7月18日、東条内閣は総辞職する。第二章は、反東条内閣は必ずしも和平運動ではないのではないかという疑問からスタートし、東条内閣瓦解の原因を明らかにする。 第二章で明ら…

鈴木多聞『「終戦」の政治史1943-1945』(東京大学出版会、2011) 第一章「統帥権独立の伝統の崩壊」(9-56頁)

第一章概要 1944(昭和19)年2月11日、陸軍大臣東条英機(首相、陸相)は参謀総長を、海軍大臣嶋田繁太郎は軍令部総長をそれぞれ兼任(併任)したが、これは異例の事態であり、統帥権独立の伝統に反したものだった。一章では、統帥部(大本営)の改革論に着目し、国…