細谷雄一『国際秩序』(中公新書 2012年)

  • この本の趣旨
    • 国際秩序を「勢力均衡」と「価値観の共有」という二つの要素で解き明かす。

国際関係の間に秩序がもたらされ平和になるにはどのような条件が必要か。その一つが「勢力均衡」で、各国が同程度の軍事力を保有することで、抑止力となり、戦争状態は回避される。だが「勢力均衡」しか秩序の要素が無いと、対外膨張が起こり、バランス・オブ・パワーが崩れると、秩序は乱れる。ここで重要なのが、「価値観の共有」である。具体例として挙げられるのが、民主主義と自由経済という西欧から発生した「普遍的価値」である。だが、この「価値観の共有」も、「勢力均衡」という前提があって初めて機能することができる。「勢力均衡」なき秩序など秩序ではない。今まで、世界を動かしてきた「中心」であった大西洋世界では、この「勢力均衡」と「価値観の共有」が成り立ってきた。だが、今世紀世界の中心となりつつあるアジア・太平洋世界では、西欧の普遍的価値観が中国などに通用しない。そこで日本はアメリカ・中国と「勢力均衡」をはかりながら、アジア・太平洋世界において普遍的な価値観を共有できるように働きかけていく必要がある。