新課程研究会〜教科書分析を通じた指導ポイント〜 in河合塾麹町校

  • 講師…坂本勝義
  • 内容…新課程の学習指導要領と教科書記述の変更点が如何に入試に反映されたか

学習指導要領を分析する意味

  • センター試験は学習指導要領に対応している
  • 私大の入試は、学習指導要領の変更に伴う教科書記述の変化の影響を受ける。

日本史Bでは何が変わったのか

  • 資料活用の重視
    • 日本史Bでは資料活用が重視された。これは情報化社会の影響を受けたものである。様々な情報が存在する中、情報の正誤を見極め、処理する能力が求められている。この能力は日本史でも養うことができる。歴史は様々な文献から叙述される。そのため、資料を多角的にとらえることによって、どのような立場の人間がどのような意図をもって情報を発信したのかを捉える能力を養うことができる。
  • 能動的・主体的な判断力
    • 今回の改訂のキーワードとして、能動的・主体的な判断力を養成することが求められている。具体的には、レポート、ディベート、プレゼンなどである。このことは、クリティカルシンキング、つまりは情報を批判的に捉えることの重要性を背景としている。このような考え方は入試にも反映されており、センター2013年の第3問Aの第2段落の文章が物語っていると考えられる。
  • 近現代学習の重視
    • 今回の改訂で重視されたのが近現代であり、前近代については歴史を大観する能力を養わせるようになった。近現代重視であることはセンター2013年にも反映されており、4割が近現代の問題になっている。近現代が重視されるようになった理由としては、現代社会の諸事象の問題は歴史的な背景を起因としており、現代と過去のつながりを意識したものにさせるような配慮が施されているからである。

新課程の山川出版『詳説日本史』の記述の変更点

  • 鎌倉時代の叙述量の増加
  • 大正時代の記述が詳細化
  • 戦後 独立回復後の解説

入試との関連性

  • 新出用語は狙われやすい
    • 教科書改訂により新たに出現されたワードは入試でも狙われやすい。きちんとした大学の問題作成者は教科書を読み込んでいるので、教科書改訂により変更された点を反映して出題しえくることが多い。
  • トップレベルの大学は近現代重視。ただし近畿は原始・古代。
    • 難関私大は戦後史どころか1990年代、または2000年代の問題も出してくる。よもや政経である。具体的にはバブル経済リーマンショックなどである。そのため、1990年代以降の学習にまで時間配分をきちんと回す必要がある。しかし、この近現代重視の傾向に対し、地元に古墳や遺跡があることからそのような分野を研究する人材が多くいる関西の大学は原始・古代を出題する傾向にある。
  • 出題傾向の雑問化
    • 入試の出題はあるテーマに基づいて歴史が叙述されていることが多かった(そのためリード分を読むことが勉強になるとよく指導されたものである)。だが近年はテーマ性は薄れ、雑問化の傾向にある。しかも出題の傾向が政治史に偏る状況にあり、その雑問で社会経済史や文化史を聞くという出題形式になっている。
  • 世界史・地理・政経などの科目横断的な学習
    • 入試問題において現代史の領域では90年代、ゼロ年代の問題が出題されている。そのため、日本史の知識だけでは追い切れないところが多い。また、学習指導要領における科目横断的な能力の重視により、日本史の問題においても地図問題(歴史地理)、外交史(世界史との関連)の出題の増加も見られる。このため、政経・世界史・地理などの社会科系科目との連携・協力をはかる必要がある。