ISLAND(体験版)の感想・レビュー

空想科学SFタイムリープ・並行世界・民俗伝奇・閉鎖空間・謎解きミステリー。体験版結構面白い。
シュタゲ・ジャコス・ひぐらし水月を混ぜ合わせたような雰囲気が良い味出してます。
未来からやってきたと自称する記憶喪失の青年が風土病が蔓延し因習はびこる離島に救済をもたらす。
フローチャートシステムを用いて数多の選択肢で分岐した世界を行ったり来たりでござい。
月姫Fateに負けじとバッドエンド直行フラグまっしぐら。各エンドに意味があるので回収がやっかい。
しかしヒロイン母のSF空想科学の解説とデスヒロインの猟奇ホラー展開は読んでて印象深かった。

雑感

  • 時空跳躍パート
    • 主人公くんは記憶喪失の青年。心に刻まれているのは何かを救済しなければならないという衝動のみ。バッドエンドを見ると「第21次人工レゾネーター計画」の関与者であることが判明しますが、具体的な内容は体験版では語られません。正規√を進んでいくと、主人公くんがヒロインと知り合ったこと自体がバタフライエフェクトを決めて過去に矛盾を生じさせつつあるということで、命が狙われたりします。選択肢を少し間違えただけで巫女ヒロインに殺されてバッドエンドになった時は初期型月作品を彷彿とさせました。また主人公くん自身が理性的に行動した結果、自ら命を絶たせる選択肢を登場させた時には思わず関心。そんなわけで主人公くんが世界の矛盾などを無視してヒロインたちを救いたいと思うように仕向けると物語は進んでいきます。主人公くんが「自分はただの記憶喪失で補填のために未来人だと思っているのでは?」と疑念を抱くシーンがあるのですが、そこでヒロインの母が相対性理論による過去跳躍を詳しく解説するところはかなりグッときます。タイムリープの空想科学する展開はシュタゲの二番煎じかなぁとも思いましたが意外と独自性も感じられてイケますよ。


  • 伝奇パート
    • タイムリープの他に作品展開の軸となっているのが「民俗伝承」と「風土病」をモチーフにした離島という「閉鎖空間」での伝奇パートです。ジャコス・ひぐらし水月をミックスしたような感じ。本作の中では「村の指導的な存在である御三家」と「日光に当たると皮膚が硬直して崩れる煤紋病」が作品を貫く設定として登場してきます。かつて本土の人間から「煤紋病」で迫害を受けた際に「御三家」が登場して島民を守ったというのが伝承の大まかな筋です。政治担当の枢都家・産業担当の御原家・宗教担当の伽藍堂家というノリですが、さらにインセスト・タブーの悲劇が加わります。御原家の兄妹が近親相姦すると惚れていた枢都家の娘が村民に暴露し仲を引き裂き、兄が悲嘆にくれると伽藍堂家が転生を唱えるという内容。メインヒロインの御原凛音はこの伝承に自分と主人公くんを重ねているというわけですさ。選択肢によっては凛音のためだけに生きる事を決意し、メインヒロインの母から凛音のことを託され、凛音を支え続けるセカイ系子作りエンドを迎えることも可能です。正規√では民俗伝承と現実を重ねるのはやめろと厳しい言葉を投げつけ凛音からビンタを食らって体験版エンドとなります。


  • 猟奇系ヒロイン伽藍堂紗羅
    • 作品の中で特に異彩を放っているのが伽藍堂紗羅です。メインヒロインやツインテールヒロインとは別枠さを感じます。作品で重要なイベントとなりそうな「5年前の事件」及び「タイムリープ属性」の伏線を担っているキャラだからとも言えるかもしれません。初登場の時には本気で主人公くんを殺害してバッドエンドをもたらすキャラとして出現しますし。さらに体験版2周目から選べるようになる個別抜粋シナリオではその猟奇性を際立たせるものが語られます。紗羅の母親がキチガイとしての扱いを受け入たこと、紗羅はその母親の役割を担いたいこと、5年前の神社放火事件の犯人は紗羅だと島民全員が疑念を抱いていることなどが伏線として張られます。そして極め付けは「友達の肉」パーティー。主人公くんが水死体事件について話に行くと、紗羅から料理を振る舞われるのですが、その肉は紗羅が友達と語ったマーヤの肉だったのです→ヒャッハー。そんなわけで民俗伝承伝奇と空想科学SFを掛け合わせた紗羅がどのように物語を転がしていくのかが気になるところです。