まいてつ「ハチロク√」の感想・レビュー

地元を「蒸気機関車の修理・保全・運用を一体とした拠点」として産業開発するはなし。
鉄道の利点である公共性と大量輸送をアピールし、廃線となった九州の鉄道を繋げる計画を打ち出す。
ちなみに工場は水質汚染と関係ない近隣地域に誘致し、そこから鉄道で製品を輸送する形になりました(共存共栄)。
主人公くんとハチロクのトラウマである鉄道事故がやはりシナリオの焦点となりますが、わりとあっさりめ。
レイルロオドとマスターの絆であるシーリングの場面がカットされたように感じるのは私だけですかね?
ラストは主人公くんとハチロクが鉄道技術を継承していくよエンドで幕を閉じる。

ハチロク√概要


  • 蒸気機関車の台車が歪んでしまったよ問題
    • SLを復活させた後、機関士に専念する選択肢を選ぶとハチロク√に入れます。ここでは「ハチロクに牽引させる客車をどうするか問題」や「煙害が環境汚染に繋がるのでは?というクレーム問題」が起こります。しかしシナリオ的にはさほど大きな問題には至りません。後者の煙害問題については私も結構疑問に思っていたので本編で触れてくれて嬉しい限り。集排機能は高度な技術革新が行われていたんですね・・・→けど焼肉列車ってどうなのかしらん?まぁそれはそれとしてハチロク√前半のメインは台車問題です。機関車ハチロクの下部あたりが歪んでしまって運航が難しくなってしまったのです。ここでハチロクが主人公くんの根本的な目的である「工場誘致を撤回させる」ために自らを犠牲にしようとするところは印象深いです。ここからの問題解決までの流れが結構よい。(1)ハチロクを犠牲にしたくない主人公くんはハチロクの静態保存を考える→(2)しかしハチロク型そのものは希少価値のない大量生産型であるため静態保存を展示して集客するのは難しい→(3)あれ?大量生産型ってことは各地にまだ残機があるんじゃない?→(4)わりとあっさり発見されてボディ換装へ!



  • 大九州鉄道構想
    • ここまでのイベントにおける諸問題の解決が結構ご都合主義的カモ?と思っていたらライターさんが市議会論争の描写でセルフツッコミを入れてくれます。そしてそれを論争の解決手段にも繋げてきたので、割とふむふむと感心しました。その場面とはこうです。ライバルヒロインに「再現可能性」を問わせることによって、(お前たちの問題解決ってその場限りのご都合主義ダヨナ?次に問題が発生した時にもそんなにうまく解決するのかい?)とメタ的なニュアンスを醸し出させるのです→答えに窮する主人公くん。そこへメインヒロインのハチロクの支援射撃タイム。廃線によってインフラがズタズタになってしまった九州だけど、払い下げを受けて私営で維持されている鉄道はまだ残っている。それを繋げて地元を鉄道の修理・保全・運用の拠点とすれば、量産型であるハチロクの修繕部品及び技術技能を集めることができる。さらに地元産業の育成にも寄与し、経済の活性化にも貢献できると唱えるのです。これがのちの大九州鉄道構想と呼ばれるものに発展していきます。また工場誘致問題に関しては、鉄道が公共性と大量輸送のメリットを持っていることから、水質汚染とは関係のない鉄道沿線地域に工場を設立して、九州各地へ輸送する戦術をとることになります。



  • トラウマ鉄道事故問題
    • ハチロク√で外せないのが鉄道事故問題。やはり主人公くんが家族を亡くして天涯孤独となった事故は、ハチロクが故意に脱線転覆した事故と同じものでした。ハチロクは主人公くんの家族を殺してしまったのは脱線転覆を進言した自分の責任であると思い悩みます。一方主人公くんはハチロクに好意をもった理由で苦悩します。ハチロクが人形であるため自分が置いて行かれない(孤独にならなくて済む)と錯覚しそれに甘えているだけでは?と自問自答するようになります。微妙にかみ合わなくなってしまった二人でしたが、そこに雨天時における強行運転の試練が降りかかります。運転中異常をきたした鉄道部品を確認するために運転をハチロクに任せて出ていく主人公くん。戻ってみるとハチロクは「置き去りにされた」というトラウマが発動しPTSDに陥っていました。そこで主人公くんは気づくのです。ハチロクもまた自分と同様に鉄道事故で置き去りにされていた(※当時の機関士や周囲の人物との絆から)のだと。こうして主人公くんは鉄道事故の時と同じような雨天運航をハチロクと乗り越えることによってトラウマを克服するのでした。以上により鉄道事故を乗り越えた二人は結婚し「子どもを成すことはできなくとも技術の継承で自分たちの生きた証を残すよエンド」を迎えましたとさ。