間野山研究学会 第2回「「コンテンツ」×「地域」~地方発・最新の取り組み」

各報告を聞いて、自分の印象に残った事や考えた事項などのまとめ。

目次

報告1「コンテンツビジネスとコンテンツツーリズム~アニメコンテンツを巡る権利者・地域・ファンの幸せな関係とは?~」

  • 重要なのはブランディング
    • コンテンツツーリズムには製作者・地域・ファンの三構造がある。だがコンテンツ製作会社にとって、コンテンツツーリズムによる利益は薄い。だが単純な利益だけでなく、コンテンツツーリズムが盛り上がることによって、コンテンツの賞味期限が延びるし、コンテンツがブランド化されて価値を生むようになる。それ故、コンテンツのブランディングという側面の価値を考慮に入れる必要がある。
  • 【質疑】二次創作はどのような位置づけについて
    • 製作者・地域・ファンの3構造の関係性を分析枠組みとしていたが、二次創作の視座が欠けている。二次創作はコンテンツの賞味期限を延ばし、作品のロイヤリティを高め、キャラクターへの愛着や新たな物語を生み出していく。しかしその一方で二次創作は製作者の利権を侵害してしまう。作品のブランディングにおいて二次創作はどのような位置づけとして考えられるか?
  • 【応答】
    • 二次創作も重要な要素だが、ここでの発表では研究の視座に入れていない。

報告2「韓国コンテンツツーリズムの現状と課題」

  • 政府の主導性が強い
    • 韓国ではアニメの地位は低い。旅行行動についてもドラマなどのロケ地訪問が中心である。また日本のクレヨンしんちゃんのようなものにあたるアニメキャラクターを使ってコンテンツ産業を利用しようとしているが、それは政府主導の押し付けの側面が強い。コンテンツ制作会社にキャラクターを使わせろと圧力をかける場合がある。
  • 韓国が消費する日本の性的娯楽映像
    • 韓国では性的娯楽映像の生産・流通・消費が禁じられている。そのため韓国人男性は日本の性的娯楽映像を(違法に)視聴している。それ故、韓国人男性はそれらの映像を見て、ロケ地で追体験するため、日本を訪れている。また、韓国人男性が日本人女性を消費する行為の背景には、植民地的反動が指摘される。韓国は格差社会であり、底辺層の男性は抑圧されているが、その怨恨を日本人女性を消費することによって晴らしているのであることが韓国人研究者により説明された。

報告3「アニメの力を信じて!埼玉県観光課の挑戦」

  • 埼玉県観光課の取り組み
    • 埼玉県観光課が成立してから今までの取り組みを紹介する報告。アニメで埼玉県の観光を振興させるための具体的な実践が参考になった。埼玉県の観光政策に衝撃を与えたのが『らき☆すた』の存在であり、そこから埼玉県は秩父三部作やクレヨンしんちゃんを主軸とする埼玉アニメツーリズム、アニ玉祭などを展開していった。県が取り組むということは、当然成果を出すことが求められる。官公庁では新聞報道やマスコミの反響が評価されやすいので、イベントごとに新聞記者やマスコミに報道してもらえるよう心掛け、記事を書いてもらったら必ずお礼の電話を入れるなどの密接なコミュニケーションが重要。
  • 【質疑】アニメを観光に利用することに対する職員の理解及びアニメコンテンツがない地域
    • 観光課の職員全員が必ずしもアニメに理解があるわけではないと思われるが、職員の理解とモチベーションの維持をどのようにしているのか。また埼玉県の全ての地域に観光資源としてアニメコンテンツがあるわけではない。そのような地域の観光政策はアニメに力を入れると置き去りになってしまうのではないか?
  • 【応答】課長による職員の教育とノウハウの応用
    • 課長自らが職員に対してアニメが観光にもたらす影響を説き、理解を浸透させるための努力を日々行っている。現在、殆どの職員が課長の趣旨を理解している。アニメが無い地域の観光については、アニメ観光で培ったノウハウの応用やゆるキャラなどのキャラクターコンテンツ展開にその手法を利用することが出来る。

総合討議

  • ルパン三世で町興しをしようといている北海道浜中町の商工会の人が、各報告者と情報を交換した。
    • 全てをホスト側が用意しようとするのではなく、ファンと共に創り上げていくことが重要。ロイヤリティが高くなれば、ファンは地域に協力してくれるし、インフラ未整備による遠距離アクセスも「二ッチな」需要を生み出すことが出来る。必要なのは、細く長く、観光客に訪れてもらうことであり、一挙に観光客を集める必要はない。大量に訪れたところで宿泊施設などの不足により、オーバーツーリズムとなってしまう。長期的なスパンで物事を考えることが重要。