『PARQUET』(ゆずソフトSOUR)の感想・レビュー

貧困により人格移植実験に身体を売った結果1つの身体に2つの人格を持った少女の話。
茨木リノは天涯孤独で貧苦に喘ぎ厭世的になって自分の身体を実験に売った。
城門ツバサはホスピスであり死の恐怖から逃れるため人格移植に手を染めてしまう。
こうして茨木リノの身体に城門ツバサの人格が移植され二人は一人になったのである。
移植前後の記憶を失っていたツバサは記憶を回収すると罪悪感を抱き人格を消滅させリノに返そうとする。
だがリノはツバサが人格乗っ取りをしようとしたこと等を全て同意していたのだ!
解決方法は実験時に作られたリノの複製体を見つけ出しツバサの人格を再移植すること。
無事に再移植は成功し、リノとツバサは別個体となり、初対面してハッピーエンドとなる。

一つの身体に二つの人格。昼と夜とで人格をチェンジしながら会えない交流を通して「家族」となる

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  • 貧困故に厭世的な少女とホスピス故に存在証明したい少女
    • 舞台設定は近未来であり、知識や技能を電子データとして人体にインストールできるようになった世界観。主人公は複数の人格を寄せ集めて天才を作る実験により創出された人工生命体。傾きかけた会社を立て直すために利用されるのですが、見事それを果たします。私腹を肥やす経営陣を入れ替えし、会社を健全化し、自分がいないほうが企業が回ることを悟った主人公は、自己の生存理由を求めたい年頃になり社会へ出ることとなったのです。そこで出会ったのが一つの身体に二つの人格を持つ少女であり、以後この少女を中心にストーリーが展開されます。
    • 人格の一人目は、夜の人格の茨木リノ。元々の肉体はリノ単独のもの。リノは天涯孤独となったが故に経済的に困窮し、メンタルが削られ次第に厭世的になっていきます。他者と縁という舫を結べなかったリノは、生きることに意義を見出せず、全てを承知で人格移植実験に自己の人体を売ったのでした。こうしてリノの身体に城門ツバサの人格が移植されることとなります。
    • 人格の二人目が、昼の人格の城門ツバサ。ツバサは所謂ホスピスであり病院暮らしが長く、余命幾許も無い状況でした。死にたくない、自己の存在を証明したいと願ったツバサは研究に励み延命方法を必死で探ります。当初はできるだけやって死を受け入れる覚悟も示したのですが、結局死の恐怖には耐えられず人格移植に走ってしまい、リノの身体に乗り移ることになります。ツバサは全ての記憶を継承できたのではなく、移植に伴う記憶を欠落していました。

 
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  • 会えないが故の人格交流と生命への意志
    • 移植後は昼の人格:城門ツバサと夜の人格:茨木リノで住み分けが成され、それぞれが人格チェンジの際に「申し送り」という交流を図ることになります。この過程でツバサとリノは直接会えなくても仲を深めていき、次第に家族としての情を抱く様になるのです。しかし仲良くなれば仲良くなる程、ツバサは罪悪感に苛まれます。移植時の記憶を喪失しているツバサは、自分がリノの人格を乗っ取ろうとしていたかもしれないという事実に責め立てられるのです。それ故、本当の事実確認をするため、ツバサは自己の記憶を取り戻すことを目的としており、シナリオもそれを原動力として進んでいきます。そして種々のイベントを通した結果、記憶を取り戻し、案の定、真実に直面するのでした。
    • 全てを知った城門ツバサは、自分が死を受け入れられなかった弱さが、人格乗っ取りを招いたのだとショックを受けます。そして贖罪として自分の人格を消し去ることで、茨木リノに身体を返そうとします。しかしリノは、人格移植の際に全てを説明されており、それを委細承知した上で、実験を受けたのです。そして生きる気力に乏しく、もうどうなってもいいと厭世的になっていたリノは、ツバサとの交流を通してメンタルが癒されていったことを語ります。天涯孤独であったリノにツバサという家族が出来たのです。ツバサの人格を失いたくない!助けて主人公!!
    • 主人公は複数の人格を集めて天才を作る実験のために製造された素体でした。このような素体はたくさんおり、人体実験に身体を売ったリノの複製も作られていました。なんだ、人格が入れられていない、元の素体の身体あるやんけ。と、いうことでこの空き素体の中にツバサの人格を再移植。こうして一つの身体に二つの人格があった状況は、分離されたのでした。今までお互いのことを大切にしながら直接対面することができなかったリノとツバサ。主人公のおかげで身体を手にし、直接対面することが叶いました。これにて人格を巡るシナリオはハッピーエンドと相成りました。


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参考