創作彼女の恋愛公式 体験版(Aino+Links)の感想・レビュー

一度はヒット作を書けたが行き詰ったワナビがヲタク系高校ノベル科に再起を賭ける話。
主人公は幼少期の初恋を糧に文章修行に努めてノベルゲーでヒットする。
だが一発屋で終わってしまったため、スランプを克服するべくヲタク高校に進学する。
主人公のスランプを物語の原動力とするためスランプを克服すると話が終わってしまう。
それ故、プレイヤーはいつまでもスランプな主人公を読まされるというストレスに晒される。
第1話で初恋のケジメをつけプロットは書けるようになった所までは良かったが……
第2話の声優演技編はなんと時間軸が12月まで進み、それでもスランプが克服されることは無かった。
創作がコンセプトなのだからつまらぬ日常テキストを控えて芸術論に振っても良かったんじゃない?

「創作」の「公式」なのに方法論や技法は皆無で薄っぺらく、内容も既存作品の寄せ集めでオリジナリティは無い

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  • 第1話「お前をヲタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ」
    • 主人公は一発屋ワナビ。一度はノベルゲーでヒット作を飛ばすも後はナシのつぶて。主人公自身は衝撃的なノベルゲーをプレイしてショックを受け、それ以来書けなくなったと自己分析しています。そのためスランプ克服を目指して、幼少期にメインヒロインと交わした約束に縋って、ヲタク系高校ノベル科に進学します。そこで久方ぶりにメインヒロインと再会。第1話はこのメインヒロインとの初恋にケジメをつけることがテーマとなります。メインヒロインは一般文芸における第一人者に成長しており、書けば売れる高校生ベストセラー作家となっていました。新しい作風に挑戦するため、オタク層を読者に取り込もうと試みます。こうしてお前をヲタクにしてやるから俺をリア充にしてくれ的な展開となり、メインヒロインにヲタ知識を注入していくこととなります。ここら辺シナリオに結構矛盾があって(一応作中で説明はされているものの)メインヒロイン自身が幼少期にヲタク高校に進学しようねと誘ったのに、どんな学校か調べようとすらしていなかったりなんだりツッコミどころ満載。またヲタク知識のメタ的表現において既存の作品を揶揄しているのにも関わらず、その文法でこのエロゲ自体も書かれているので自己矛盾に陥っており、ちょっぴりチープ感が漂います。しかしながら第1話で過去の恋情にケジメをつけるという点はしっかりと描写されており、主人公とメインヒロインが互いに好きでしたと述べあい、新しい関係を構築するところとかは割と丁寧な演出でした。メインヒロインとの交流により主人公は少しだけスランプを克服しプロットまでは書けるようになります。

 
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  • 第2話「言の葉舞い散る夏の風鈴」
    • 上記のように共通√ではヒロインたちとの交流を通して徐々にスランプを克服していくんだろーナ……と思っていた時期が私にもありました。第2話では売れっ子声優の偽装恋人となり演技のためのキャラ解釈をすることがテーマになるのですが、なんとこのネタだけで作中の時間軸を12月まで引っ張るのです。どんだけの期間キャラ解釈してんねん。収録期間マジ長ぇッス。そして第2話ではもう「創作」分野のテーマ性はほぼ皆無になってしまいます。キャラ解釈なのにそれがメインではなくとってつけたかのような要素に堕します。しかもキャラ解釈における結論が、原作者の解釈をそのまま丸コピーするのではなく、それを理解した上で声優自身の演技として昇華させるというありきたりなもの。その上、原作者の解釈に主人公自身が辿り着いたのではなく、原作者の友達であった居候先の叔母さんに答えを教えてもらうというもので唖然としてしまいました。キャラ解釈論をやるなら、もう少しちゃんとやって欲しかったものよ。
    • この声優ヒロインは猫かぶりのギャップ萌えがウリとなっています。天使かと思われた声優の性格は実は腹黒であり、それが分かって幻滅したけれども、声優業に対して真摯であったことが主人公の心を打つことになります。最初はヲタク的に声優の表面から惹かれたけれども、ヒロインの本質を好きになっていったことで、素を出せずに苦しんでいた声優ヒロインの心の拠り所となっていくという展開になります。第2話のエンドロール後の時点で作中の時間軸はクリスマスまで進んでいます。主人公は声優ヒロインに対して改めて告白するのですが、それは実ることなくアッサリと振られて体験版は終了。正直声優ヒロインでここまで引っ張るとは思わなかったです。
    • あと残りキャラとして、ヒキコモリ系ヲタクイラストレーター従妹と、ブルジョワ淫乱官能小説好きお嬢様が存在しています。第2話でもチョロチョロと出番はありましたが、本格的な出番は無かったので、おそらく第3話と第4話でスポットライトが当てられるのでしょう。そう考えると個別ルートに入るのは高2進学時か?主人公のスランプが今のところシナリオを動かす原動力となっているので、共通√が終わるまでは克服されないであろうことを考えると、このままずーっとスランプであり続ける主人公をプレイヤーは見せられることとなります。辛いね。

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参考