ゴールデンマリッジ「一乗寺透子ルート」の感想・レビュー

透子ルートはマネーゲームを題材にした企業買収がテーマだが・・・
個別ルート短い!ご都合主義展開!なんかあっさり!
ヒロインと競馬は斬新だしギャンブルの経済的特性とかの解説とかは面白かった。
カネが増えればそれでいいという利潤追求の資本主義に対して疑問を呈しましょう。
利潤追求は資本主義社会では間違ってはいないが、前提としての社会経済が間違っている。
カネは手段であり、新たな価値を生み出すことが重要・・・といったところか。

一乗寺透子シナリオの概要と物語の展開


  • 競馬デート
    • 透子シナリオ読んでて斬新に感じたのが競馬イベント。はつゆきさくらの主人公くんも競馬が好きだったが(というかマキバオーが)、競馬の楽しみ方からギャンブルの経済的考察に繋げていくテキストは上手いなぁと感じます。以下引用。

ギャンブルはお金を払って束の間の昂揚感を楽しむ娯楽。でも今日の私は「大負けしにくい」賭け方をしていた。いわば儲けを気にした守りのギャンブル。リスクを怖れず攻めていき、その結果としての的中という「楽しみの最大幅」は最初から捨てている。……本来であれば「負けた金額」も「結果がでるまでの昂揚感」という楽しみ支払った正当なコストだけど、ギャンブルはそれを「損」だと思うようになる。今まで支払った損を諦めきれるなら……でも人は「損をしっぱなしの自分」をなかなか認められない。だからギャンブルに嵌りすぎると「儲かるまで辞めない」というスパイラルに陥る。



  • 敵対的買収
    • 透子シナリオのメインテーマとなるのが敵対的買収。透子の家の企業は父親が独裁をふるうワンマン経営でした。そこへ不満を蓄積させた頭取がクーデターを起こすのですね。地味に根回しをすることで透子パパを代表取締役から追い落とします。さらに資金援助のバックボーンとしてブラック金融投資家の存在をちらつかせ、透子に身体を迫るという展開に持って行きます。しかし残念なことに、この企業的買収のシナリオが薄すぎるように感じてしまいます。ここでは「資本主義経済において常に利益を生み出そうとするシステムを構築してそれに従えばそれでよいという思想を打ち倒すこと」と、「ブラック金融投資家との経済バトル」が醍醐味になるはずなのですがどちらも尻切れトンボ感が漂います。経済バトルは殆ど展開されることもなく、投資家に犯罪の証拠をちらつかせるとすぐに手を引きフェードアウト。経済思想についても、解任された透子パパたちが自分たちの理念を実現するため、一から企業し直すという手段を取ることになります。資本主義という経済システムに疑問をなげかけるというパターンは昔からよく使われる手法ではあるが、やはりこう考えさせられることはあるわけで。今の現状が既に綱渡り気味の非常勤講師のこの身にとってはこのまま黙って朽ち果てていくのではなく、再び人生を賭けてみる踏ん切りにはなりそうかもしれない。

経済。お金は……呪いです。本来何かと交換する利便性のために、存在したモノが、独立した価値を持つようになってしまった。お金があれば解決する。お金がなければ解決しない。全ての中心にはまず、お金があると―――。でもそれは、お金を扱う、私たちの思い込みです。



  • 家族との和解
    • 現代家族論はどんなに『暗夜行路』状態でも『和解』してしまうものです。むしろ『和解』するまでの問題のこじれかたの提示と解決する手法に表現の腕の見せ所があるのでしょう。しかしながら、未だに両親とうまくいっていない自分にとっては、家族とうまくいかないヒロインに共感を得つつも、最後には和解するので「あーあ」となるのですよねー。透子の場合もそうです。家族に対する「見栄」や「気兼ね」が扱われており、素直に話そうにも親としてのプライド、子どもとしてのプライドが邪魔をしてしまう。そんな透子の家庭は上記の通り、会社を乗っ取られ、両親の誇りやプライドは一度全て崩壊しました。スクラップ&ビルドですよ!今まであったプライドは綺麗に消え去り、会社が無くなったことで透子は両親と良好な関係を構築することができたのです。今度は上手く会社を経営してみせると再チャレンジするパパ。一方、透子は自分でゲームを作りたいと消費系ヲタから供給サイドへの転換を目指すのでしたとハッピーエンドを迎えます。