イブニクルの感想・レビュー

面白いと思う。
が、なんという「あのね商法」!
続きが気になる人は続編を買ってね。

  • 雑感
    • シナリオについて
      • シナリオは良好。ひたすらにエロを求めると言いつつ「資本主義の原理」と「箱庭理論」を描く。「欲望の統制と解放の相剋」を表現しながら「社会の停滞と発展」に迫っている。(※作中においても国名や人物名の元ネタに言及しておりルネサンスを扱っていることが分かる)。そして最後はお約束の「世界観を構成するシステムそのものに挑戦する」というメタ的な展開に発展し、胸が熱くなる。さらに、作中では物語の主題・要旨・テーマを「空語(からがたり)」という名称で抽象化する試みを実践しており、なかなか面白かった。しかし、結局「冒険はまだまだ続く」と続編エンド。分割商法としては『ランスクエストマグナム』とかもありましたね・・・。
    • マップ移動は冒険してる感じがして好き
      • やっぱりマップ移動しながら地図を埋めていくのはナイス。お使いRPG的なイベントをシカトしながら別の所へ行こうとするのも醍醐味。寄り道しまくりプレイは基本ですよねー、敢えて別の場所に行くし、序盤では倒せないモンスター倒そうとする。単なるクエスト貰ってダンジョン入ってひたすら階層を重ねていくのよりもマップ移動の方が世界中を冒険している感じがしてグッド。しかし地図が全部埋まってしまった後に一抹の空しさを感じるし、お使いイベント感も結構あった。
    • イベント端折られ
      • ひたすらにエロを求めるといっておきながら、プレイヤーが見たいであろうシーンが端折られる場面が多くて残念。宿屋に泊まると定型文以外に初回のみ面白イベントが発生するのだが数クリックで終わる。その展開が結構グッとくる設定なだけに、なんでCG描いてくれないの?と思うことしばし。あとセカイを救おうと気負うことになった主人公くんを癒すための温泉シーンも夜伽場面は描かれない。そして折角だから全員プレイは入れてくれよと思った人は手を挙げてください。二次創作へのネタ振りか?あと物語の序盤ではバッドエンド展開の選択肢が結構でるのに、最後の最後で「せかいのはんぶんをやろう」的な選択肢が出なくて残念。そしてラスボスよりもフィールドで普通に出てくる恐竜さんの方が強い。レベル上げが楽しすぎて大怪獣もボス戦もあっさり倒せてしまい、一番苦労した敵がフィールドモンスターというオチ。

概要

  • 序盤 〜行きすぎた人間の欲望を勧善懲悪するはなし〜
    • 主人公のアスタは育ての親でもあった双子のお姉さんズを嫁にしようとします。しかし一夫一婦制が慣行となっていたので、2人を嫁にできません。けれども騎士身分になれば、優秀な子種を後世に残すという名目のもと、重婚が出来るという設定です。アスタは嫁を増やすために騎士となるべく出世街道を目指すのでした。そんなアスタは騎士になるため様々な問題に取り組んでいくことになります。この流れで社会の秩序を乱そうとしている「人間の欲望を解放させようとする組織」と対決することになっていくのです。「政治的な権力欲」、「利己的な拝金主義」、「化学調味料依存とカニバリズム」、「死者の復活と父子相姦」などの問題を解決しながら順調に出世し、嫁を増やしていきます。しかし、人間の欲望の解放は悪い側面だけではなかったのです。


  • 中盤 〜宗教統制による人間の欲望の抑制と社会の停滞〜
    • 勧善懲悪だけで終わらないことによりストーリーの深みが出ています。それは序盤では打倒するべき目標であった「人間の欲望」が実は「社会を発展させてきた」という側面をもつということです。すなわち世界史でいうところの「カトリックが抑制してきた人間の欲望が解放されルネサンス」という展開ですね。相手の組織は戦争を引き起こすことが目的なのですが、その理由の一つに戦争による技術革新があったのですね。宗教統制により欲望が抑えつけられ社会の発展もなく日々を諾々と生きることは、死んでいないけれども生きてもいないディストピアだと敵の幹部は主張するわけです。アスタさんたちはその主張を認めつつも、急速な欲望の解放は暴走を伴うものであり、競争を維持しつつも調和的な発展を唱えて、敵を討ち取ることになります。
      • あと資本主義の形成にはルネサンスによる欲望の解放以外にも、禁欲的な勤勉性もありますよと。『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』的なノリです。カトリックでは蓄財が否定されてきましたが、カルヴァン派では肯定されます。カルヴァン派は予定説をとり、神に救済される人物はもう既に決まっているのですが、救済されるという確信を得ようとします。つまりは現世での職業に励んで成功することが救われる証明となったのですね。こうして利潤を蓄積したがことが資本の形成につながり、近代資本主義を生む要因になったのです。


  • 終盤 〜箱庭理論〜
    • 終盤は箱庭理論ということでセカイを構成した形而上学的存在に挑んでいくことになります。敵の総帥は前代の教皇であり敬虔な信者だったのですが聖典の解読を続けていくうちに聖母様が淫乱ド変態痴女であることが判明しショックを受けセカイを創り変えようとするのです。一方で主人公くんたちのセカイは創造神により作らされた数多あるセカイの一つであることも判明します。つまりは創造神という、より高次の存在により、ただの女がセカイを創る力を与えられたのだと。高次の創造神は1人の女性に苦悩を押しつけ、なおかつ人間たちの想いを踏みにじり高みの見物に興じているのです。セカイのシステムに反発したセカイの始祖のドラゴンは、主人公くんたちを別次元のセカイへと送り込みます。最終目的は創造神への反逆。セカイのシステムを構成する高次元への神へNOを突きつけることが出来るのでしょうか!?と冒険はまだまだ続くよエンドになりました。

各戦闘キャラ雑感メモ

  • 主人公 アスタリスク
    • ドラゴンハーフ。作中の世界観では当初ドラゴンが支配者であり人類は寒冷な大陸に押し込められていたが、解放王が人類を引き連れ別の大陸へ移住をはかり、人間が各地へ伝播したという設定。その時の解放王がドラゴンのトップと婚姻関係を結び、その子孫がアスタという流れ。そしてアスタの実父は、セカイに戦争が引き起こされようとしたときに、自国にモンスターをおびき寄せメガンテすることで、人間同士の争いの危険性を訴える。その際にアスタは記憶を喪失し、田舎のドラゴン姉妹のもとへと預けられる。この2人を嫁にするために、アスタは旅へでかけることになり、冒頭へと繋がる。最終的に嫁は10人。
  • 孤独騎士 ラミアス
    • 脳筋かわいい。アスタの最初の嫁。騎士として優秀な母と兄を持つことから、騎士団では浮いた存在であり、ぼっちとなってしまう。凌辱される女性を助けるために単身敵地へ乗り込んだものの、媚薬を打たれてピンチになった際にアスタと婚姻関係を結んで難を逃れる。母と兄はバーサーカーな戦闘狂であり、より強い相手を求めるためにダークサイドに落ちてしまった。そんな兄はラミアスが母に生き写しであることを感じ、騎士を辞めさせるために酷な態度をとってしまったと後悔する。その兄のラミアスに対する心情吐露の場面がラミアスイベントでは結構グッとくる。
  • 第二王女 リッシュ
    • セカイの不思議に憧れる奔放な性格であったため嫁の貰い手がつかずプラプラとしていた。王の務めを全うする姉にコンプレックスを抱いており、その反動によりセカイを転覆させようとする組織の討伐に乗り出していく。本作のメインヒロイン枠。
  • 可哀想かわいい グリグラ
    • 孤児。斥候職担当。ゲーム進行で一番役に立ったのではないでしょうか?雑魚殲滅のスキルにより最終ダンジョンでもフィールドモンスターとの皆無で罠も完全回避。序盤では敵サイドに属しており、レンジャー職の学校の斡旋で敵対勢力の下でいいように酷使され最終的に使い潰される。地自分が「いらん子」だったことが分かった時のグリグラの絶望感の描写の所が好き。可哀想は惚れたってことよ。嫁にして幸せにしてあげましょう。
  • ヒキオタニート キャス
    • 幼少期に自分の部下に裏切られたと思い込んでいたトラウマ可愛い。キャスは軍師としての才能があったため、先の大戦で幼少ながら兵を率いることになったのだが、部下からは反発されることも多かった。騎士には向いていないと散々言われ続けていたのだが、それは幼少のキャスを戦争に駆り出さないための方便であった。そして大戦の際にはキャスに能力向上のスキルを使わせた後は放置して玉砕する。全てはキャスを戦争に巻き込まないためであったが、これによりキャスは対人関係に深いトラウマを抱えることになってしまったのである。そんなわけでキャスは常識人で頭脳労働担当ながらもヒキオタニートと成り果てていたところをアスタにより救済される。同じくぼっちであったラミアスとの共闘も燃える展開。