クロノクロック「グランドエンド(クロ√)」の感想・レビュー

形而上学的な存在である神が抱いた寂しさを癒すために犠牲となるはなし。
堕天した時空の神に恋愛感情を教えると主人公くんが死ぬというループを繰り返します。
「並行世界フラグメント収束」が発動し、全ヒロインは救済された√の記憶を保持してnew game.
ヒロインたちは主人公くんを死なせない為に神に抗うのですが、主人公くんは神を選ぶ。
最後はクロが主人公くんを死なせないため、孤独へ還り、感動の別れが演出されるのですが……
はい、また結局は再会できましたよエンド。安易に復活させるのはホントウにどうかと。

グランドエンド概要


  • 時空の神クロノスと神の手先のクロ
    • クロは「時間を5分間だけ巻き戻せる時計」に宿った時空の神の手先です。クロの本体は時空の神クロノスであり形而上学的な存在でした。しかし神の手先であったクロが主人公くんとフラグを構築しながら恋愛感情を育んでいくと、時空の神クロノスにも本来なかったはずの感情が芽生えていきます。そう、孤独のうちにあったクロノスは寂しくなってしまったのです。そのためクロノスはクロを手放すことを絶対に認めようとはしません。しかし、そんなことを全く知らない主人公くんは、クロノスとクロを分離させるように画策しては死んでいきます。主人公くんが死ぬとクロが力を発動させてタイムリープし、ニューゲームという展開です。プレイヤーは主人公くんがループしていることを知らされておらず、堕天し人間化したクロに人間の心情を理解させるイベントを読まされていくことになります。



  • 並行世界フラグメント収束ではお約束!→ 個別ヒロインはグランドエンドのためのパーツ化
    • クロ√ではタイムリープを繰り返しているため、個別ヒロインたちは自分たちが救済された記憶を保持しながら物語冒頭にまで巻き戻されてきます。この作品では枝状に分岐する並行世界として時間軸を設定しているため、各ヒロインの数だけ未来はあるという解釈。個別√でヒロインたちとの夜伽のシーンがなかったのもグランドエンドに巻き戻されるための伏線。ついでに真琴√が非常に短いのもクロ√のための演出。そんなわけで折角の個別ヒロインたちが全体の物語構成のためのパーツに陥ってしまっているという構造です。個別ヒロインたちは確定してしまった主人公くんの死をセカイに観測させないように神に抗っていきます。けれども主人公くんは「堕天したクロに人間にとって大事なものを伝える意志」を固めておりヒロインたちを蹴散らしていきます。選ばれなかった個別ヒロインたちに対して無邪気に人を好きになるとはどういうことか?を尋ねて回るクロの残酷さよ。そして真琴は主人公くんを力尽くでねじ伏せようと襲いかかってきます。真琴シナリオが短かったのは、真琴は主人公くんとイチャラブする前に巻き戻されてしまったという設定であり、これからの時間を獲得するために、主人公くんが神を選ぶのを諦めさせようとするのですね。



  • 別離を描いたのに安易に復活させるという風潮について
    • 主人公くんを死なせたくないという個別ヒロインたちを薙ぎ払い、主人公くんはクロを選んで死ぬ未来を選択することになります。何度も同じループを繰り返し、主人公くんは今回もまたクロノスに処刑されることになるのでしょうか?→神との対話に挑みましょう。主人公くんはクロノスに対してクロを解放せよと弁舌を振るおうとするのですが、何かがおかしいことに気づきます。そうなのです、ここへきてやっと、主人公くんは神であるクロノス自身が「寂しい」という感情を芽生えさせていたことに気づいたのでした。つまりクロノスは寂しいから人間界と接触できるクロを手放したくなかったのですね。神の孤独を知った主人公くんは、それなら自分が孤独のセカイで神と共に生きることを決意します。男をみせた主人公くんでしたが、何度もループしているうちに成長していたのはクロも同じでした。クロは主人公くんを生かすために、クロノスに自分を捧げることを決意するのです。主人公くんのために散っていくクロ・・・。確かにクロと主人公くんの別れは感動を誘うのですが、クロが復活することが安易に匂わされており、エピローグであっさりと復活してしまうというオチでした。