雑録

千恋*万花「常陸茉子シナリオ」の感想・レビュー

伝奇パートの犬神の呪いを題材に「自我を放棄し諦念に安住する少女」を救済するはなし。
茉子が恋に目覚め近代的自我の確立をしていく所はともかく、伝奇パートがおざなりな様に感じます。
結局茉子√だけでは犬神の謎も完全には解けませんでしたしね。他√で回収されるのでしょうか?(※レナ√で回収されます)
特に終局部におけるシナリオの投げっぷりは、もう少し何とかして欲しかった感があります。
キャラゲー要素はそれなりにきちんと面白いですよ!(私服チェンジや主君の巫女の隣でおなぬーとか)

常陸茉子のキャラクター表現とフラグ生成過程

  • 自我を放棄し諦念に安住する少女
    • 常陸茉子は忍者ヒロイン。巫女ヒロインに仕える家系に生まれ、家事全般を担当しています。少女漫画が大好きで人を食ったような発言もするのですが、本気でレスポンスされると恥ずかしがってしまうお年頃。巫女ヒロイン(芳乃)への奉仕を使命としてきた茉子は、共通√で呪い事件が解決すると自分の存在意義を再定義する必要性に迫られます。茉子はこれまで自己を封建的な束縛に縛りつけることによって思考放棄してきました。「自分は巫女に仕える家系だから」ということを言い訳に、主的意志を投げ捨てていたのです。自己を放棄し主君にゆだねることは、一時の安住に繋がるでしょう。しかしそれは歪んだものが放つ甘美だったのです。奉仕を理由に自分を機械人形とみなし、恋することを諦める茉子を変革するのは、我らが主人公くんというわけです。「複数シナリオライターあるある」でお馴染み「主人公くんの人格がシナリオによって全然違うぞ!」が発動し「やたらと積極的な主人公くん」が茉子をグイグイと口説き落としていきます。主人公くんに必要とされることによって自己を肯定できた茉子は、封建的束縛に身を委ねることを辞め、近代的自我を確立することができたのです。



  • 犬神の謎
    • ※追記;レナ√で真相が明かされます。自分は茉子√を完全にミスリードしてしまいました。犬神の姉が惚れるのは朝武(兄)ではなく朝武家始祖です。一応以下の文章は加筆訂正して残しておきます。
    • 伝奇パートの整理。戦国時代において、朝武家の兄弟間で家督相続争いがあり、家督を継いだ弟に対し兄が呪いをかけました。この呪いを実行するためには、呪いを宿らせるための媒介(憑代)としての「玉」と、この媒介に捧げるイケニエが必要でした。この「憑代」の生贄となったのが犬神であり、前世はシスコンだったようです。このシスコンの犬神は、姉が朝武(兄)武家始祖に惚れており、人間に利用されることになるのが分かっているのに関係を続けることに対して疑念を抱いていました。そのため死してなお、姉が朝武(兄)武家始祖に捧げた恋愛感情という想いはどのようなものであったのかを知りたかったのです。茉子の一族は朝武(兄)の末裔であるという設定が突如判明し、犬神は茉子に対して「他者を好きになるとはどのような感情なのか」を問うことになるのですね。茉子は主人公くんと恋愛関係を重ねることで、犬神に好きになった者への無償の愛を教えていきます。こうして犬神が徐々に改心していったため、茉子たちは媒介である「玉」に憑依している犬神を、代替物の媒介に憑依させ直そうと「新たな媒介」を探すことになります。
    • この媒介探しを通じて、慰霊碑巡りなどが行われ、戦国時代の伏線が回収されかけるのですが、残念ながらここからシナリオ放り投げタイムがはじまります。突如☆交通事故☆発生!!犬神は茉子を救うのですが、これを機に暴走してしまい媒介探しは中止となります。そしてバーサーカーと化した犬神とのバトル展開になり、幻術により茉子はかつての「自己を放棄していた機械人形としての自分」を見せつけられるのです。しかし主人公くんの呼びかけにより、恋慕が茉子に近代的自我を確立させたことを想起させます。これにより犬神の暴走がいったん止まり、その隙に主人公くんと茉子が二人でムラサメを振るい除霊をするのでした。ハッピーエンドとなりますが、犬神の謎は伏線回収されないまま。犬神の前世、犬神の姉と朝武(兄)の関係などは語られず終局を迎えます。