雑録

千恋*万花「ムラサメちゃんシナリオ」の感想・レビュー

地域の発展のために町おこしを行おうと観光振興計画を練るはなし。
観光政策に重要なのは「地域特有の観光資源」。リサーチの結果「歴史文化観光」に力を注ぐ!!
物語の舞台における「歴史・文化資源」は「巫女姫様の舞」と「ムラサメソード」。
共通√で解呪に成功した主人公くんたちは、引き抜いた宝刀(ムラサメソード)を再び奉納することに。
登場人物たちが一致団結して観光開発を行い大団円を迎えるところはお約束展開ながらグッとくる。
特に主人公くんがムラサメちゃんのために宝刀奉納の儀式に向けて努力する姿は見せ場となる良い装置。
ムラサメちゃんが親への裏切りの悔恨から解放され、500年の咎を赦されるシーンがステキ。

ムラサメちゃん(本名:綾)のキャラクター表現とフラグ生成過程


  • 観光振興計画
    • ムラサメちゃんは500年の時を経た刀の精霊(付喪神的存在な刀の管理者)。宝刀「叢雨丸」を引き抜いた主人公くんの持ち霊となり、怪異との戦いの際には刀に憑依して神威をまとわせます。こうして共通√では「憑依合体ムラサメちゃんin叢雨丸!」→「オーバーソウル・ムラサメちゃん」として大活躍するのです。しかし呪詛が解消され個別ルートに入ると、主人公くんが宝刀を引き抜いてしまったことが経済的な問題となります。それは「観光資源」であった「叢雨丸を引き抜こうイベント」が無くなってしまったことにより、外国人観光客が激減し、地方自治体が財政難に陥ってしまったことでした。これだから観光産業だけで食っているところは!!きちんと地元で産業を多角化し地域で貨幣獲得できる手段を複数開発しておかないとモノカルチャー経済になってしまうのですね。このままではデトロイト夕張市の二の舞いになってしまうます。これを危惧した地方自治体は「町おこし」に取り組むことになります。
    • 我らが主人公くんズも観光開発の一翼を担うことになり、地域共同体のために尽力します。箱モノ誘致・ゆるキャラ・特産品などなどが挙げられるのですが、まずは観光客が何を求めているのかを知る必要があります。外国人観光客にリサーチしたところ、観光の目的はズバリ「歴史・文化」観光でした。ガラパゴス化した独自の歴史的発展と文化を楽しむことを目的としていたのです。これを知った主人公くんは、呪いを解いて役目を終えた叢雨丸をもう一度封印し「叢雨丸を引き抜こう」イベントを復活させることを試みるのでした。・・・いやまぁ、シナリオの構造上仕方ないとはいえ、結局のところ観光資源の新たな開発はできず、一周回って「引き抜こうイベント」を復活させることしかできなかったのか・・・と思ったのは私だけではないはず。



  • 宝刀奉納の儀式とムラサメちゃんの過去
    • 宝刀を奉納するためには二つの問題がありました。それは「ムラサメちゃんが宝刀の管理者としての役割から解放されること」と「主人公くんが儀式を完遂すること」でした。まずはムラサメちゃん問題ですが、なんと神社の御神体は「呪術によって腐敗を免れたムラサメちゃんの死肉」であったことが判明します。こうしてムラサメちゃんは肉体を手に入れることができました。しかしムラサメちゃんには人間に戻ることを躊躇する理由があったのです。それは「ムラサメちゃんが両親を裏切ってしまったという自罰の悔恨を持っている」こと。ムラサメちゃんは自ら進んで宝刀のイケニエとなったのですが、それは不治の病から早く解放されたいからという逃避だったのです。ムラサメちゃんの両親はイケニエとなることに反対し、残されたわずかの時間でも有意義に過ごそうと提案してくれたのですが、ムラサメちゃんはそれを蹴ってしまったのですね。故にムラサメちゃんは「両親の想いを踏みにじってしまったという自罰の意識」に苛まされることになったのです。このようなムラサメちゃんを主人公くんは肯定し続けトラウマから解放します。500年の歳月を経て氷と化した内面を徐々に溶かしていくところはわりと好きな描写です。
    • 続いて儀式問題。叢雨丸を再封印する催しは「町おこし」のための一大ビッグイベントとなり、大勢の観光客を呼び寄せるためのエサになりました。主人公くんには儀式を失敗することはできないというプレッシャーがかかります。しかしムラサメちゃんのためにはなんのその!!祖父に剣術を指南してもらい、特訓に励む日々を送ります。愛する女のため、お世話になった神社のため、自分の帰郷を受け入れてくれた一族たちのため、主人公くんは刀を振るう!こうして主人公くんの頑張りが地域共同体のうねりとなり、副次産業の活性化にも繋がっていきます。祭り当日、奉納を行う神社には一目見ようとやってきた多くの観光客の姿が!!巫女ヒロインの舞に続いて主人公くんが奉納の儀式をバシッと決めます。再封印された叢雨丸からは主人公くんとムラサメちゃんに対して感謝と激励の言葉が送られます。こうしてムラサメちゃんは叢雨丸の管理者としての役割から解放され、人間として主人公くんとともに生きていくことになったのでした。ラストは両親に対して後悔の念を持っていたムラサメちゃんが主人公くんの両親と祖父に受け入れられ、新たな家族を構築したエンドを迎えます。