史料判読能力養成講座003 幕末外國関係文書を読む その1「古文書でまず見るべき箇所はどこか?」

歴史は結局、一次史料にアクセスできるか否か。つまりは語学。日本史の場合も古文書を読めねばどうしようもない。
語学は自助努力であり、古文書は辞書を引いた回数による。字が読めなければどうしようもない。
古文書の文字を一つ一つ、くずし字用例辞典とくずし字解読辞典で調べるのは根気が入り、気の遠くなる作業だ。



  • 古文書の説明
    • 端、表(縦書き文書の前の方)、奥(縦書き文書の後ろのほう)、端裏書、宛所、差出、花押の説明。文書を折って、上に来た表面をウハ書。その文書を包むのが、包紙。包紙の一番上に宛名を書く。
  • 花押のエピソード
    • 現在も内閣の閣議書や法律の公布書では花押が使われるらしい。大臣になると花押を作りませんかと営業が来る。これに対し、伊江朝雄は断った。それはなぜか?伊江というのは沖縄の出身。琉球人で名前に「朝」が入っていると王族の証明。故に、伊江朝雄は既に花押を持っていた。
  • 古文書でまずチェックすべきこと
    • 年代・宛先・差出人・内容
  • 年代
    • 安政五午年三月朔日
      • そもそも五が六にしか読めない。
      • 数字の下に干支が来る・・・。確かに古文では十干・十二支で年代を表すというのは習う。
      • 朔日は「一」を表す。萩原朔太郎で習った。講義では「晦」の対義語として解説していた。
  • 宛先
    • 亜墨利加合衆國全権兼コンシュルゼネラール トウンセントハルリスへ
      • 「墨」の字で墨西哥(メキシコ)を解説
      • 「子」を「ネ」と読ませる。
      • コンシュルゼネラールとは何か→総領事かと
    • どうして書簡がハリス宛だと思ったの?
      • 変体仮名で「江」つまりは「ハルリスへ」と書いてある。
    • トウンセントとハルリス どっちがファーストネームでどっちがファミリーネーム?
      • そのままで書いてある?のでトウンセントがファーストネームで、ハルリスがファミリーネーム
  • 差出人
    • 堀田備中守+【花押】
      • 「備」読めない。人偏までは分かる。作りの部分が「支」みたいな感じ
      • 「守」読めない。ウ冠までは分かる。ひらがなの「る」にしか見えない。官位官職を知っているので、かみ・すけ・じょう・さかん、で「守」と類推。
      • 実名の諱は花押なんですね。
  • 差出人と宛名の書面上の位置について
    • 身分・地位によって上下が決まる。堀田正睦はハリスを同格と見なしているので、ハリスを自分の名より上に書いていない。
    • 書礼式について
      • 差出人と宛名の身分上の関係性。例えば知行宛行状の場合、将軍が大名よりも上にくる。
    • 外交の場合は「敵礼」 礼に敵う 誰と誰が同格なのか?
      • 朝鮮国王と同格なのが将軍。琉球国王と同格なのが老中。しかし朝鮮国王と琉球国王は中国から冊封を受けているので同格。日本は天皇を中華皇帝と同格と比した。
      • 一方、朝鮮は朝鮮式華夷秩序を唱え、清に服属しながらも、清は夷狄で蛮族であり、明を正統的に受け継いでいるのは自分たちだと認識した。