講義速記録

極東蘇聯史013「満洲引揚げと残留孤児問題」

(1)残留孤児 (1)-1.満洲引揚の問題点 満洲移民 満洲移民は1936年国策化以降 100万戸(500万人)を目標に推進 「移民」か「開拓民」か 1939年に満洲移民のリーダー会議があって自分たちを「移民」と言わないでくれと云った。 移民にはマイナスイメージが付きま…

極東蘇聯史012「シベリア抑留(2) シベリア抑留のうち普通ではない事例」

今回のシベリア抑留は、普通じゃない抑留、特殊なケース。 前半は、刑務所に入った人々。彼らは抑留と見て良い。 後半は樺太にとどまった人たち。彼らの場合は抑留に含まないと考えられるのでは?というおはなし。 (1)ハバロフスク監獄(刑務所) (1)-1.菅原道…

極東蘇聯史011 「シベリア抑留」

(1)シベリア抑留とは何か (1)-1.抑留の概要 主要参考文献 富田武『シベリア抑留者たちの戦後』 長勢了治『シベリア抑留全史』 なぜ研究がなかったのか? 1.資料的な問題 ロシア側の文書 そもそも公開されていなかった ロシア語が読めてロシアに行けても無…

国史概説012「昭和と平成史」(最終回)

今回のテーマ 戦後札幌経済史から昭和史と平成史を見る! はじめに 0-1 戦後経済史の時期区分 戦後改革・復興 1945年〜1955年 高度成長期 1956年〜1973年 低成長期 1974年〜1990年 (バブル経済 86年12月91年1月 51か月間) →バブルの名称は終わった後の呼称 …

極東蘇聯史010 「日蘇戦争 樺太編(2) 真岡市街戦&千島編 占守島の戦い」

前回の復習 国境付近(北緯50度)の戦い、恵須取市街戦 国境付近は正規軍日本軍VSソ連軍 恵須取は正規軍五本群+義勇戦闘隊(男たち)VSソ連軍 義勇戦闘隊は全日本で組織されていたが、実際に戦ったのは恵須取のみ、 (1)樺太 (1)-1,真岡の市街戦 8/20 未明 ソ連…

国史概説011「昭和(2) 植民地工業化論」

(1)統治者たちの植民地研究 戦前日本は植民地を持っていたので、植民地研究が行われていた。 (1)-1.満洲 外地は朝鮮、台湾、樺太、南洋群島(公式植民地) 微妙なのが関東州。日本が発表する統計だと関東州とは貿易 満洲は外国 満鉄附属地については日露戦争後…

極東蘇聯史009 「日蘇戦争 樺太編(1)北緯50度の戦い、恵須取市街戦」

今回は国境(北緯50度線)での戦いと恵須取市街戦をやります! (1)日ソ戦争の開始 (1)-1 日本領樺太の状況 科研費があって共同研究を進めている 最近は樺太研究する人が増えてきている そうするとかならず1945年のはなしになる 基本的な樺太におけるストーリー…

国史概説010「昭和史(1)1930年代と戦争」

010〜012は昭和史関連 第1回 1930年代と戦争 第2回 植民地近代化論 第3回 北海道経済史 (1)戦争の区分と名称 1930年代当時における日本が起こした戦争の呼称 満洲事変 支那事変(日支事変) 大東亜戦争(共栄圏と結びついている) ※今現在歴史を研究する際 → 日…

国史概説009 明治国家の陸海軍は政党政治・総力戦体制に適応できず制度疲労して崩壊

今回のテーマ 日本の国家体制は戦時体制となるがそれはどのようにできてくるのか 1)組織 天皇の軍隊 → 皇軍 陸海軍は天皇に直属する軍隊 → ただ天皇の軍隊という言い方は、あくまでもタテマエとして天皇が率いているということになっているだけ。 天皇親政…

極東蘇聯史008 「日蘇戦in満洲その2 戦闘をしなかった事例」

前回は日ソ戦の全体構造と実際に戦った事例を扱いました。 今回は日ソ戦で戦わなかった事例をご紹介します、とのこと。 (1)五味川純平の体験 (1)-1 東部国境陣地から内線陣地へ 五味川純平(本名、栗田茂) 1916年 大正5年 大連生れ 東京商科大学入学するも中…

国史概説008 「明治国家は天皇超政だったから纏め役が必要で政党政治になったが、結局政党政治は滅び纏め役が不在となってしまった」

権力分立体制・内閣制度・政党政治 概要 明治国家は権力分立体制であり、それには必然性があった。 権力分立体制をまとめるために、内閣制度と政党政治があった。しかし政党政治は敗れ去り、纏め役が不在となってしまった。 前回の復習 根本的な矛盾 タテマ…

極東蘇聯史007 「日蘇戦in満洲その1〜戦争の全体構造と実際に戦った事例〜」

今回から1945年8月以降をやります 今回は全体の構造と戦った事例 次回は戦ったとは言えない事例 戦ったか戦ってないかはわからない。 現場にいた人達の証言なので、個々のケースを集積しながら見ないといけない 研究で全体像を明らかにした例はない (1)戦争…

国史概説007 明治国家は天皇超政だし全然中央集権ではない件について

今回から(近代)の講義の趣旨 日本の近代史を構造的に理解するのに必要な知識について3回に分けてお話しする。 明治国家がどのような理念として作られその実態はどうだったのか? 判で押したように中央集権国家を目指してると習っているが我が国は全然中央集…

極東蘇連史006「終戦工作」(日本の降伏の原因は原爆落されたからではなく、終戦外交をソ連に依存していたので、ソ連の対日参戦を受けて、ポツダム宣言受諾に動いたという話)

第6回は「終戦工作」のおはなしでした。 (1)ドイツ降伏後の終戦工作 (1)-1.終戦工作の定義 鈴木多聞『「終戦」の政治史 1943-45』(東京大学出版会、2011) 【おススメの本らしい】 国内の意見調整 ※終戦が難しかった 負けてる戦争を敗戦国日本の側から終わら…

国史概説006 近世身分社会における触穢の観念について

4.被差別身分を考える 前回までの復習 領主的土地所有 → 将軍から封じられた土地から年貢を徴収する。蔵米知行制は実際に土地所有していなくても、領主的土地所有に内包される。 百姓的土地所有 → 土地で生産し、生産物から年貢を納める。身分として町人と…

史料判読能力養成講座006 幕末外國関係文書を読む その4「朝廷の権威を利用しようとした堀田がしっぺ返しを食らうことになるその直前」

前回までの復習 Q1.ソコモトとは誰か? A1.ハリス Q2.「江戸表より申越し」を解釈せよ A2.この時堀田正睦は天皇から日米修好通商条約の勅許をえるために、上京していた 堀田in京都 ←江戸 ↑(移動) ハリスin下田(静岡) 京都にいる堀田正睦へ、江戸に下田からハ…

極東蘇聯史005「ヤルタ協定」

ヤルタ協定と日本外交 密約は日本側に知られていたのか? (1)小野寺電報 (1)-1.ヤルタ密約 ヤルタ密約を日本政府は知ることができたのか → 最近の研究によると情報が日本に伝わっていた。 樺太は「返還」=ロシアの固有の領土とされている。千島列島は「引き…

国史概説005 身分制社会について 〜領主的土地所有と百姓的土地所有〜

1.身分制社会とは何か。 「民族」にもとづく身分制度 民族にもとづく 征服民族が被征服民族を劣位とする 「職能」にもとづく身分制度 職能にもとづく 同じ集団内で賤しい職業として賤視 差別とは その人が選べない その人の責任が全くない だから差別 生まれ…

史料判読能力養成講座005 幕末外國関係文書を読む その3 「堀田正睦、条約勅許の為に上京の折、江戸からの知らせでハリスが再出府したことを聞く」

前回までのあらすじ 敬意表現の復習 闕字<平出<抬頭 欠画、改名 改名の具体例 → 松田伝十郎が松田七郎左衛門と改名した。 松田伝十郎とは、間宮海峡見つけた人。報告した人が間宮林蔵。三丹交易を取り仕切った人が松田伝十郎。 三丹交易とは→とにかく中国…

極東蘇聯史004「関特演」

前回やったことと今回やること 前回はノモンハン事件 今回は関特演(1941年のはなし)→日ソ中立条約と関特演−関特演は条約違反か− (1)日ソ中立条約 (1)-1.中立条約違反はどちらか? 後々までずっと問題になって1945年の日ソ戦の時問題となる 【資料1】江口圭一…

国史概説004 近世史を考えるには

そもそも「日本」とは何か? 日本史の中で近世史がどのような特質を持っているのか? 身分の問題。日本近世史のなかで身分制度の問題を触れる。 日本の近世社会がもった特質にもつながる。今日は俯瞰的な話 そのあとは身分制度としての近世のはなし。 「日本…

史料判読能力養成講座004 幕末外國関係文書を読む その2〜外交上の儀礼体系と敬意表現〜

本日のメニュー 外交上の儀礼体系について 文書形式における敬意表現について 本文読解 外交上の儀礼体系について コンシュル セネラールについて 総・領事 コンシュルが領事 セネラル(ジェネラル)が総 総領事の下に領事がいる 大使-総領事-領事-書記官(一等…

極東蘇聯史003「対蘇戦論とノモンハン事件」

前回までのあらすじ 日ソ戦争を考えるうえで、ノモンハン事件を考えておくことは重要。 前回までの時間で1935年までは日ソ関係は非常に有効 満洲国をソ連は認めないけれども、東京で蘇連と満洲が交渉して北鉄を譲渡している→存在は認めている。 1937年以降は…

国史概説003 書き換えられる歴史の具体的な事例について

自分の問題意識に「なぜ」を問いかけ、「根本思想」を育てよ! 前回までの復習 やったこと 歴史学のトレンド 時代区分論 歴史をなぜ書き直すのか → 自分自身を知る 今を知る 重要なのは「根本思想」 この世に対する問題意識 自分の生き方に対する問題意識 教…

史料判読能力養成講座003 幕末外國関係文書を読む その1「古文書でまず見るべき箇所はどこか?」

歴史は結局、一次史料にアクセスできるか否か。つまりは語学。日本史の場合も古文書を読めねばどうしようもない。 語学は自助努力であり、古文書は辞書を引いた回数による。字が読めなければどうしようもない。 古文書の文字を一つ一つ、くずし字用例辞典と…

極東蘇聯史002「中東鉄道をめぐる日ソ関係」

今日話すこと 満洲をめぐる日ソ関係 (1)中東鉄道 (1)-1.沿革 チタからシベリア鉄道が伸びているが中国と接続したい 不凍港:ウラジオストクへ行きたい 中国と繋がればモノは豊富 中国清朝内を通っている これが中東鉄道 シベリア鉄道から分岐し、ウラジオス…

国史概説002 時代区分論及び歴史に対する「問い」の話

前回 史学史を振り返る 時代区分論もちょっと入った 【2】時代区分論について 基本的に マルクス主義史観 社会構成体 発展段階説 古代-奴隷制 中世-封建制 近代-資本制 現在の認識では・・・「進歩していく」ことは考え難い マルクス史観はヨーロッパを軸に…

史料判読能力養成講座002 変体仮名読解

【1】変体仮名について 仮名とは 現行の活字は50音。50音にひとつのひらがな・カタカナがあてられている。戦後の現代かなづかいは、ひとつの音にひとつの音をあてることを原則としている。 例外:ず・づ、は・わ、お・を 金田一京助先生について 知里真志保…

極東蘇聯史001 戦間期情勢

(1)ロシア革命とシベリア出兵 (1)-1日蘇関係史の研究 概要 日ソ戦争とは→1945年の戦争を指している 今回は最初なので戦間期の日ソ関係史 戦間期:ロシア革命(1917)〜1930年代のはなし 重要な出来事はロシア革命があったのでシベリア出兵に参加したこと 1925…

国史概説001「日本における歴史学研究の趨勢について」

【1】歴史学のトレンド 1.戦前 重野安繹・久米邦武らによる漢文編年史 漢学者:当時の漢学者はただ歴史書を読むだけでなく、中国由来の考証学(明末清初)を担う 歴史学はランケから始まるというイメージがあるが・・・日本ではそうではない。 水戸藩の『大…