『さくら、もゆ。 -as the Night's, Reincarnation-』「共通ルート」の感想・レビュー

感受性が強く感情の変動が激しい少女たちを、魔法少女として使役し、夢の世界を浄化せよ。
現世における負の感情が夢の世界で顕現するというファンタジーな世界観設定。
主人公くんは夜の世界の治安を維持するため、ファンタジー世界で不可思議体験をしていく。
そして任務を果たす過程で、自己の感情の欠落に苦悩しながらも、その煩悶と向き合うのだ!
ここでは、そんな『さくら、もゆ』の体験版以降の共通ルートをメモしていく。
ハルと幼馴染ズの再会後、街探検の場面で選択肢分岐し、個別√に入る。

共通√ 夢世界で顕現した現世での負の感情は最終的にどこに行き着くのか。

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  • 柊ハルの帰還
    • 主人公くんは夜の世界で悪夢を駆る「魔法少女」使いの新人。過去の時間軸において、師匠的存在のあさひさんが夜の世界の危機を救うため、主人公くんたち幼馴染グループを魔法少女として使役していました。世界は救われ、メンバーたちは成長して大人となり、あさひさんとも関われなくなったのですが、自称精神年齢オコチャマな主人公くんは高校生になっても夜の世界に出入りができたのです。そんななか、幼馴染グループの一員であった柊ハルが地元に舞い戻ってきます。ハルは孤児院から里子に出されたものの、諸事情により出戻りとなったのです。そんなハルも主人公くんと同様に高校生になっても夜の世界に出入りできたのでした。さらにはもう一度魔法少女に戻りたいとのたまいます。共通ルート【1】ではそんな柊ハルと共に魂の浄化を行います。


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  • 自我を持つ負の感情
    • 作中の設定では、現世(昼の世界)での負の感情が夜の世界で顕現してしまうという世界観です。通常の場合、主人公くんは顕現した悪夢を捕縛するだけで済むのですが、解決しきれないと負の感情そのものが自我を持つようになってしまいます。ここでは両親に見捨てられても自分が悪いと思い込み自殺しようとしてしまった幼女の事例が取り扱われます。母親が別の家庭で違う子どもと幸せそうにしている姿を見せつけられた幼女は、家族を捨てたバスの運転手である父親に轢死させてもらおうと道路に飛び出すという中々の闇っぷり。もう既に手を付けられなくなってしまった負の感情は、夜の世界でも解決されることなく切り取ってしまう以外に方法がありません。夜の世界で感情を切り取れば、現世で苦悩することはなくなりますが、一方で当該人物の感情を殺してしまうということにも繋がります。このことに対して主人公くんは割り切ることが出来ないのです。



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  • 刻の終着駅
    • 切り取られた感情は最終的にどこへ行くのか?ここからがファンタジーモノの真骨頂となります。宮沢賢治銀河鉄道ッスね。魂の導き手である汽車のナナちゃんは、魂が行き着く果てに連れていくまでに、仕事と称して様々な夢世界を回ります。主人公くん、ハル、そして夜の世界の住人である十夜は、これを手伝うことに。最果ての地で魂の行き着く先を見送ることで、主人公くんのお仕事の概要を提示するという手法になっています。ここでのポイントは、主人公くんの仕事を手伝うことが、柊ハルの不安も救うことになっていたということです。ハルは出戻りで転入してくるわけですので、新しい環境に馴染めるか心配だったのです。さらにハルは極度の見栄っ張りであり、他者に対しては優等生として振る舞っていたのでなおさらでした。このファンタジー世界でのお手伝いを通して、ハルもナナちゃんに勇気づけられていたという寸法です。こうしてハルは無事に戻ってくることができ、幼馴染メンバーズにも自然に受け入れられたのでした。

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