前近代西アジア史【1】古代オリエント

1.新石器時代

→道具として磨製石器があらわれた時代。

  • 特徴
    • ①最後の氷期の終わり…およそ1万年前。温暖化して、現在とほとんど変わらない地形・気候となる。
    • ②住居…石斧の発明により森林伐採がたやすくなり洞窟から離れて平地に小屋を建てて住む。
    • 磨製石器…砥石を使って表面を磨いた石器。新石器時代の農耕開始ととともに発達。磨製の石斧・石鎌・石包丁・石臼などの農具の他、工具・武具などが製作・使用された。
    • ④土器の使用 → 穀物の採取と調理法が改善される。顔料で文様を描いた彩文土器の世界各地への普及。
  • 初期農村
    • 低湿地の湧き水→イェリコ(前7000年以前)
    • 天水 → ジャルモ(前6500年頃)

2.農耕と牧畜のはじまり

(1)獲得経済から生産経済へ

  • ①獲得経済…自然界の鳥獣・魚類・植物などを食料として手に入れて営んだ生活。狩猟・漁労・採集。
  • ②環境の変化への対応
    • 約1万年前に氷期が終わり、地球は温暖化。多様な環境に適応することが求められる。
    • 約9000年前~8000年前頃? 西アジアで麦の栽培とヤギ・羊・牛などの飼育が始まる!
    • 農耕・牧畜の開始! → 積極的に自然環境を改変する能力を身につけ、食料を生産する。
  • ③生産経済…生活に必要なものを作り出す経済活動。農耕・牧畜の開始により人類の生活は獲得経済から生産経済に移り、生活の安定化をもたらした。→人口の飛躍的な増加。文明発展の基礎の構築。※定住の開始

(2)新石器革命

  • 農耕・牧畜の開始にともなう人類史上の一大変革。新石器の使用開始と同時期であったことから新石器革命と呼ぶことがある。
    • ※日本について…新石器文化と農耕・牧畜の広まりには差があり、日本は縄文時代において土器や磨製石器を  使用しながら農耕・牧畜を行っていなかった。→新石器時代でも農耕棒畜をしていない例

(3)冬麦

  • 冬麦は冬型植物なので栽培が困難ではない。→人類が最初の農業文化をきずくことになるきっかけ

(4)各地域の農業の特徴

  • ①西アジア…およそ9000年前に麦の栽培開始。羊を早期に家畜化。遅れて牛・豚等の家畜飼育を開始。
  • ②欧州…7000年前頃から麦栽培、家畜飼育開始。スカンディナヴィアやシベリアは磨製石器を使用したが農耕牧畜せず。
  • ③東アジア…7000年前頃アワや稲が栽培され、食用の豚や犬が飼育された。
  • ④東南アジア…4500年前頃の磨製石器が出土。イモ類やバナナの栽培。

(5)乾地農法

  • 雨水に頼り肥料を用いない略奪農法の段階。連作不能になるまで地力を使いため、耕地を移動する必要があった → 都市への成長には至らず。

3.都市の出現

(1)都市

  • ①出現の背景:生産物の増大→余剰生産物→物資の交換→交易の拠点→都市
  • ②出現の時期・場所:前4千年紀(前4000~前3001)・アジアの幾つかの地域
  • ③オリエントの場合
    • 大河の沿岸。灌漑農業
    • 城壁と神殿→政治の中心地 Cf.ウルのジッグラト
(a)灌漑農業…耕地に必要な水を人工的に供給・分配する農業。
  • 治水などの土木工事の必要性 → 初期農村の定住化
  • 生産性の拡大 → 余剰生産物の発生
  • 分業の開始(神官・戦士・商人・職人など) → 階級の分化
(b)大河のほとり(ナイル川ティグリス川・ユーフラテス川、インダス川黄河・長江)
  • 西アジアではティグリス川・ユーフラテス川のほとりで灌漑農業が他に先駆けて行われ、初期農村から神殿を中心とする都市へと成長する。→ 都市国家の形成
  • 国家の誕生…一部の支配階級が、多数の人間を統一的に支配するための政治機構が生まれる。

(2)文明

  • 金属器時代…都市が発生した頃から青銅器使用が始まる。斧・刀剣・容器・装身具・留め針など
  • ②文字使用…祭祀、財政・会計事務などのため。文字記録が存在するか否かで歴史時代・先史時代を区分。
  • ③美術・工芸品…権力や富を誇示するものとしてもてはやされる。
  • ④文明…都市生活のなかで、諸文化が融合したなかから生み出された生活様式など。

4.メソポタミア文明

メソポタミア→ティグリス・ユーフラテス両川流域の沖積平野(※灌漑農業に基づく村落文化が発達)

(1)シュメール人

  • ③文化
    • a. 文字使用 → 楔形文字を粘土板に記す。
      • 読み書き能力のある人材が支配階層を形成 → 神殿の神官・王宮の書記など
      • 最古の文学『ギルガメシュ叙事詩
        • →シュメール語で書かれたウルクの英雄王ギルガメシュの活躍を描いた叙事詩。各地の聖書や神話の原型となり洪水伝承などに影響を与えた。
        • →洪水伝説…世界創造説話の型。人類に対する神の怒りと選ばれた少数者への忠告からの大洪水の開始と少数者の救いというパターンを取る。旧約聖書のノア、ギリシャのデウカリオン、インドのマヌ、中国の禹などが洪水伝説の主人公として有名。
    • b. 学問の発達

(2) 諸王朝の興亡

  • ☆地形的特性
    • 氾濫しやすい天井川
    • 都市国家間の戦争
    • 四方に開けた土地による異民族の侵入
  • ②ウル第三王朝

5.諸民族の侵入と鉄器の開発

(1)インド=ヨーロッパ語系諸民族の侵入

  • ①原住地…ユーラシア大陸北部の森林・草原地帯 → 前2千年紀(前2000~前1001)に南下・大規模移動
  • ②特徴…馬にひかせた戦車・強力な軍隊

(2)ミタンニ「先住のフルリ人が馬を飼育」

  • 建国;北メソポタミア(前15世紀) → 終末期の歴史しか明らかにされていない。
  • シリアをめぐる攻防
    • ミタンニVSエジプト → ヒッタイトの台頭 → ミタンニとエジプトは同盟へ大転換
  • 滅亡

(3)ヒッタイト「鉄製の武器と戦車で強勢を誇る!!」

  • 前17世紀半ば頃…小アジアのハットゥシャ(現ボアズキョイ)を都に建国
  • 前16世紀初め…古バビロン王国(バビロン第1王朝)を滅ぼす。
  • 前13世紀…シリアをめぐってエジプトと対決!
    • →カデシュの戦い(前1286年頃or前1275年頃)…エジプト王ラメス2世VSヒッタイト王ムワタリ。記録で確認できる最古の講和条約を結んだことで有名。
    • 前12世紀…滅亡。「海の民」侵入や内紛が原因だとされる。

(4)カッシート「バビロニアを支配してバビロンの伝統文化を継承!」

  • 前18世紀以降 ザクロス山中からメソポタミアに入る。
  • 前16世紀~前12世紀…バビロン第三王朝を建国し、バビロニアを支配。
  • 前12世紀…エラム人により滅亡。

6.交易する諸民族

(1)東地中海沿岸の地理的特徴

  • 交易の拠点 ← メソポタミアから地中海・紅海・エジプトへのルート上。
  • レバノン杉 → 人気が高く各地へ輸出。エジプトへ出荷したビブロスでは港市国家が形成。

(2)海の民

  • 前13世紀末~前12世紀初めにかけて東地中海一体を混乱させた諸民族集団の総称。
  • ヒッタイト滅亡 → 鉄器技術が拡散し、セム系民族が興隆!

(3)フェニキア

  • ①シドン・テイルスなどの港市国家を拠点。造船・航海技術を用いて地中海貿易で繁栄。
    • 都市国家テイルスは植民都市としてカルタゴを建設し、西地中海交易で繁栄する。この地中海をめぐる争いがローマとのポエニ戦争に発展する!

(4)アラム

(5)ヘブライ

(6)ナバテア

7.アッシリア帝国

(1)世界帝国の建設

  • アッシリア人(語源:都市アッシュールの商人)の特徴
    • 拠点;メソポタミア北部(都;ニネヴェ)。 産業;小アジアとの貿易  一時ミタンニに服属
    • 軍事力強化…鉄製武器で武装した戦車・騎馬隊 → 前9~前8世紀頃から征服戦争に乗り出す
  • アッシリアの膨張
    • サルゴン2世(位722/721~前705)…イスラエル王国を滅ぼし、バビロニアを併合。
    • アッシュール=バニパル(在位669/668~前627)
      • エジプトとエラムに遠征し、最大版図 → オリエント世界の統一 (諸地域「世界」の帝国)
      • バビロニアの諸都市に伝承される文書を収集し、ニネヴェに大図書館を造った。→大図書館から大量の粘土板が発掘、中島敦の小説『文字禍』のモチーフともなる。

(2)アッシリアの統治の特徴 ~過酷な支配~

  • ①中央集権的な統治
    • 征服地を属州に区分して総督を派遣して直接統治。
  • 駅伝制…広大な領土を統治するために整備された交通・通信網。一定の間隔に宿駅は置かれる。
  • ②過酷な支配
    • 徹底した破壊・強制移住・過酷な徴税  → 諸民族の反乱を招きニネヴェ陥落(前612)

(3)四王国分立時代

  • 新バビロニア(カルデア)…都はバビロン。メソポタミアを支配。セム系。ネブガドネザル2世がバビロン捕囚を行う。
  • メディア…都はエクバタナ。イラン高原を支配。印欧系。新バビロニアと組んアッシリアを倒す。
  • リディア…都はサルデス。小アジアを支配。印欧系。最古の鋳造貨幣。
  • エジプト…都はサイス。セム系。第26王朝(サイス朝)。