前近代東アジア史【2】春秋戦国時代

  • 春秋・戦国時代…周の東遷(鎬京→洛邑)から秦の統一までの時代
    • ※春秋は孔子の祖国「魯」の年代記『春秋』に由来し、戦国は縦横家の『戦国策』に由来。

1.政治史

(1)春秋時代(前770~前403)

  • ①周の東遷~晋が三分して韓・魏・趙が諸侯として認められるまでの時代。
  • ②周王の権威はまだ残っている。有力諸侯は「尊王攘夷(周王を助けて外敵を打ち払う)」と称して諸侯を招集し、盟約の儀式を利用して主導権を握ろうとする。
  • ③覇者の例
    • 斉の桓公…初めて周王に覇者として認められる。商工業を発展させ北上する楚を討つ。
    • 晋の文公…桓公に次いで覇者となる。長い亡命ののち即位し、周の内紛を鎮め、楚を破って晋の覇権を確立した。

(2)戦国時代(前403~前221)…韓・魏・趙が諸侯として認められてから秦の統一までの時代。

  • ①もはや周王は諸侯に無視されるようになる。諸侯は王を称して他国を併合し領域国家を形成。
  • ②戦国の七雄
    • 斉…周の功臣太公望が封じられた国であったが、家臣の田氏が下剋上。製塩業。
    • 楚…中国南部の広大な領土支配。稲作を基盤に青銅・鉄の製造、漆器・絹などの産業
    • 秦…孝公に仕えた商鞅が富国強兵策「変法」を実施し、強大化する。
    • 燕…中国勢力の東北拡大の拠点となる。銅・銀などの好物資源に恵まれる。
    • 韓…晋の家臣であったが、魏・趙とともに自立。
    • 魏…晋を三分して成立。三国の中では真ん中。
    • 趙…晋を三分して成立。三国の中では一番北。

2.社会経済史

  • ①農業
    • 鉄製農具・牛耕→耕地開発の進展。集団農耕から家族単位の小規模経営へ。
  • ②商工業
    • 青銅貨幣が用いられ新興商人の成長。
      • 刀銭・円銭・布銭(※「農具」をモチーフ)・蟻鼻銭など
    • 手工業・交易の中心となる経済都市の発展。
  • ③戦国時代における各国の富国強兵策
    • 競争を勝ち抜くために、君主の権力を強化。
    • 農業・商業・手工業の振興。
    • 戸籍を整備して家族単位の小農民を直接把握! → 徴兵・徴税
  • 下剋上の風潮
    • 諸侯が臣下にとってかわられる! 

3.諸子百家

  • ①新思想や新政策を提唱する思想家や学派が数多く出現。
  • ②時代背景
    • 社会の流動化→ 世襲的な身分制や氏族のまとまり崩壊 → 個人の能力の重視!!
    • 諸国の君主は自己の支配の正当化が必要 → 諸子百家が唱える社会秩序とその実現方法を統治に利用。
      • ※出身地や身分にとらわれず有能な人材の登用を行う!!
  • ③代表的な諸子百家
    • a.儒家
      • 孔子…「仁」(人が自然に持っている他人への親愛の情)による統治。
      • 孟子性善説:人の本性は善であり、悪は人の外に存在する後天的なもの。
      • 荀子性悪説:人の本性は悪なため、礼により民を教化する必要がある。
    • b.道家
      • 老子…人間としての正しいあり方は、無為自然(意識的には何もせず、万物をありのまま生み育てる無限の働き)であり、柔弱謙下(自然に身をゆだね、他と争わず身を低くする水のような在り方)が人間の理想である。
      • 荘子…知恵や執着を捨てて心を空しくし己を忘れて自然の働きと一体化。何ものにもとらわれない絶対的自由の境地。あくせくとした社会や政治から逃れ、名声も悪もなさず、悠々として天から与えられた寿命を全うせよ。
    • c.法家
      • 商鞅…孝公に仕えて変法。什伍の制(連帯責任制)や郡県制の施行。孝公死後刑死。
      • 韓非…法家思想の大成者。李斯に殺害された。
      • 李斯…始皇帝に仕えて諸政策を立案。焚書・坑儒を行った。
    • d.墨家
      • 墨子…兼愛(無差別平等の人間愛)・非攻(戦争を否定)・防衛戦のスペシャリストとなる。
    • e.陰陽家
      • 鄒衍…陰陽五行説。陰・陽の二原理と木火土金水の五要素で宇宙や社会を説明。
    • f.縦横家
      • 蘇秦…合従策。秦に対抗する六国が縦に連合して秦と対抗。
      • 張儀…連衡策。六国それぞれが個別に秦と同盟を結ぶ→各個撃破されてしまう。
    • g.兵家
      • 孫子…戦乱期に戦略・戦術および国家経営を論じる。
      • 呉子孫子と並び立ち「孫呉」で有名だが、著作については詳細不明。
    • h.名家
      • 公孫竜…名称と実体の関係を追求する論理学を説くが詭弁に陥る。「白馬は馬にあらず」
    • i.農家
      • 許行…君主も民も平等に農耕すべき。

4.文化史

  • ①主な著作
    • 『春秋』…魯の年代記孔子がその成立にかかわったとされる。五経の一つ。
    • 詩経』…中国最古の詩集。周の祭祀の歌や民謡を戦国時代に儒家が編纂。五経の一つ。
    • 『楚辞』…戦国時代の楚の韻文集。屈原らの作品を集め漢代に編集され現在に至る。
  • ②漢字
    • a. 漢字の形成
      • 甲骨文字…殷
      • 金石文…周
      • 篆書…秦
      • 隷書…秦で作成。漢で普及
      • 楷書・行書・草書…後漢
    • b. 表意文字の特性
      • 表意文字…一字一字に意味がある→言語や方言の違いにかかわらず意味内容を記録・伝達できる。
      • cf.表音文字…一字一字が音だけを表す。かな文字やアルファベット。Ex.「か」や「K」に意味はない。
      • 漢字による地域統合 →「中国」地域のまとまり。「東アジア」としての文化圏。