雑録

倫理 源流思想【5】古代中国

  • なぜ中国古典思想を学ぶのか
    • 自己とは何か→他者関係における存在・社会の一員→人と人とのつながりの中で人生を考える→人間関係に配慮する知恵 = 中国の先哲の思索

1.中国思想の源流

(1)周王朝封建制

  • 紀元前12世紀末 周王朝 封建制(土地分与による支配システム);血縁関係
  • 血縁関係の重視と祖先崇拝 → 周の支配;礼(天の祭りや血縁関係による身分秩序)

(2)諸子百家の時代

  • 紀元前8世紀 周王朝衰え春秋戦国時代 →諸侯の富国強兵策 →人材を求める
  • 諸子百家…春秋・戦国時代にかけて登場した時代に対する諸政策を説いた思想家たち。

2.仁の思想

(1)孔子の教え

  • 意義
    • 血縁的秩序 → 他者への愛・円滑な共同社会 →普遍的な人間関係の理法
  • 探究
    • 現実社会のなかでの人間としての正しいあり方や幸福

(2)仁とは何か

  • 仁…人間としてもっとも望ましいあり方 = 他者を愛すること 
    • →孝悌:親子や兄弟のあいだの自然な情愛 (親子の愛と年長者への恭順)
    • →信愛の情をさまざまな人間関係に広めていくことが仁の実践

(3)仁のあり方

  • 克己…自分の欲望やわがままをおさえること
  • 恕…自分の望まないことを他人にもしないようにする思いやり
  • 忠と信…自分を偽らず、他人をあざむかないこと

(4)礼…仁が行為として外面にあらわれたもの

  • 克己復礼…「己に克ちて礼に復るを仁となす」→礼の意義を強調
  • 孔子以前の礼=古代中国における身分秩序にのっとった行為の規範
    • 孔子は人間のしたがうべき普遍的な決まりであると考える。他人に接するときには敬意を払うべきで、それを行動で示すべきであること。仁と礼を兼ね備えるのが人間の理想。

3.君子の徳

(1)君子と小人

  • 君子…仁と礼を兼ね備え、道を求めて不断に修養するもの
    • →常に正しく生き、義を志す。他人に協力できる
    • →人間としての調和のとれた教養 偏りのない徳=中庸
  • cf.いろいろな中庸
    • アリストテレスの中庸
      • 欲求や感情において過度や不足の両極端を避けて、適切な中間を選ぶこと。例えば、勇気は無謀と臆病の中間にある適切さが良い。
    • 仏教の中道
      • 快楽と苦行の両極端を避け、どちらにも偏らない中正な道。
    • 儒教の中庸
      • 過不足の無い適度な態度を常に保つこと。ものの見方や行動が一方に偏らない、ほどよい中間を得ていること。
  • 小人…君子を志さない者、常に利を求め、うわべだけの協力

(2)儒家における政治の在り方

  • 修己治人…道徳を身に修めた君子が為政者となって国を治める
  • 徳地主義…君子の感化によって天下に調和がもたらされる

(3)その他の諸子百家 墨家

  • 墨家墨子の兼愛(自他を区別しない博愛主義の愛)
    • →兼愛交利説…儒教の教えは肉親の愛情など上下関係的なものであり、差別的なので別愛と呼んで批判。兼愛は無差別平等の愛であり、他者を愛することは相手の利益につながり、そうすれば他者も我に愛をもたらし、相互の利益が実現する。
    • →非戦論(非攻説)…人を殺せば不義で死罪なのに戦争で人を殺せば英雄として正義とするのは矛盾であるとして、侵略行為を批判した。
    • →他、倹約(節用説)などを説く。

4.儒教の展開

(1)性善説

  • 孟子性善説…人間は本来、善におもむことうする存在であるという考え方。
    • 四端説…人間は生まれながらに4つの善良な芽生えを持っており、それを学問によって修養すれば、誰でも四徳を身につけることができる。四徳を身につける中で強い精神力である浩然の気を身につけることができ、どんな困難でも徳を実践しようとする理想的な人物を大丈夫という。
      • 惻隠の心(他人の不幸を見逃せない)→ 仁
      • 羞悪の心(自分や他人の不善を憎む)→ 義
      • 辞譲の心(他人を崇敬する → 礼
      • 是非の心(善悪を見分ける → 智

(2)王道政治

  • 五倫の道…人間関係を成り立たせている基本的な秩序。親・義・別・序・信
    • →父子の親(親愛)/君臣の義(礼儀)/夫婦の別(男女の区別)/長幼の序(兄妹の順序)/朋友の信(信義)
  • Cf.五倫・五常儒教の重要な徳目となる
  • 王道政治…仁義に基づく理想的な政治。人民のことを第一に考え、徳にもとづいた政治を行う。
  • 武力や謀略により民意に背く暴政(覇道政治)が行われた場合は、易姓革命が行われる。
    • 易姓革命…「天が命を革め、王の姓を変える」。民意に従わない君主は天命を失い追放。

(3)性悪説

  • 荀子性悪説…人間は本来私利をむさぼり、他人を憎む性質を持つ。
    • →規範としての礼によってその性質を矯正していく必要がある。
  • 荀子から法家へ
    • 荀子の弟子の韓非子らにより法家(法律と刑罰によって社会の安定をめざす)
      • 商鞅…秦の孝公に仕え変法を実施。孝公死後、反対派により自分が制定した車裂きの刑で処刑された。
      • 韓非子…法家思想を大成したが、韓非子を妬んだ李斯により殺害された。
      • 李斯…始皇帝に仕え、法家思想に基づく政策を進言し、統一を完成させた。焚書坑儒
  • 荀子と法家の違いって何?
    • 荀子が古代の聖王の定めた礼儀に従えば、必ず人民は教化されて天下は治まるとした点で、法による秩序を重視した法家の思想とは異なる。

5.儒学の成立

(1)経典研究

(2)朱子学…周敦頤創始→朱子大成

  • 理気二元論…理(天地万物に内在する宇宙の原理)と気(万物の元素である運動物質)によって世界の構造をとらえる考え方。
  • 性即理…天から与えられた人間の本質(性)が理であること。
  • 気質の性…現実の人間は物理的な気に妨げられた状態(=気質の性)にあり、善をなせない。ヒトは肉体的欲望である気質の性がわざわいして本来の性を発揮できない。
  • 居敬窮理…つつしみによって人欲を捨て(居敬)、万物による理を窮め(窮理)、宇宙の理と一体化する。
    • ※居敬窮理によって、ヒトが本来の知に至ることを「格物致知」という。
  • 聖人…居敬窮理により理と一体化した理想の人格。

(3)陽明学…陸九淵が創始→王陽明が大成

  • 心即理…万物の根源の理を人間の心の中に見いだす。生まれながらの心の本体がそのまま天理である。
  • 致良知…心が善悪是非を判断するはたらき(良知)のままに生きることが人間の道であるという考え方。
    • 朱子学が居敬窮理により万物の理を窮めんとしていたことと対比せよ
  • 知行合一…良知は行為によって実現されるので、実践をきわめて重視する考え方。

6.道家の思想

  • 道家…道徳や道徳に基づく統治を自然に反する人為的なものと批判→自然との一体化が理想

(1)老子の思想

  • 大道廃れて仁義あり…道徳は社会の混乱に対し人間が作り出したもので自然に反する。
  • 自然が理想なのは、何で?
    • 道(タオ)…万物の根源。道は無。万物は無から生じて無に帰る。
    • 宇宙は無から有が生じ、有から無に帰る永遠の運動
    • このような宇宙の中では、人間が願い、思うことに絶対的なものは何一つ存在しない。そのため、人為的に働きかけるのをやめる。
    • 人間としての正しいあり方は、無為自然(意識的には何もせず、万物をありのまま生み育てる無限の働き)であり、柔弱謙下(自然に身をゆだね、他と争わず身を低くする水のような在り方)が人間の理想である。
    • 老子の国家の理想は?→小国寡民…人間が自然のままに生活できる村落共同体。

(2)荘子の思想

  • 万物斉同…万物は本来、平等一体であること。おのずから調和している。
    • 人間の知恵や判断は全体のほんの一部に過ぎない。
    • 人間の知恵や判断は絶対ではない。 自己の利害や執着から不自由や苦しみが生じる
  • ではどうすればいいの?
    • 心斉(知恵や執着を捨てて心を空しくする)と坐忘(己を忘れて自然の働きと一体化)
    • 逍遥遊(何ものにもとらわれない絶対的自由の境地)に達する。
    • その理想の人間が真人。あくせくとした社会や政治から逃れ、名声も悪もなさず、悠々として天から与えられた寿命を全うする。
  • Cf.胡蝶の夢
    • 蝶の夢を見て目覚めたが、自分が夢で蝶になっていたのか、蝶が夢で自分になっているのかが分からない。どちらが自分でも蝶でもよく、与えられた現在を楽しんで生きればよい。万物斉同・逍遥遊を象徴したことば。