『蜜柑』の感想

蜜柑といえば芥川龍之介の汽車の窓から蜜柑をなげる低賃金肉体労働者(女工?)の話が思い浮かびますが、それではないです。蜜柑と未完をかけているそうな。


主人公の素は小説家。ある日、蜜柑屋という古本屋に迷い込んだ。そこは様々な作者が未完のうちに投げ出した作品が収集してある場所だった。当然、素の作品もあり未完を収束に導くため再びペンを執っていく。収束に導くための物語の構想は3つで全6章。つまり12の短編を積み重ねていく。物語の互換性と設定にちと混乱してしまう。


登場人物は素の他に瑠璃、杏、希、繭実の4人である。

  • 瑠璃:モデルは後輩の女の子。両親が死に杏に引き取られる。
  • 杏:高校時代の恩師。素の孤独を癒した。
  • 希:素が生み出した創造上の理想的なヒロイン。
  • 繭実:故人。素は彼女の為に物語を作っていた。素の織り成す物語に不確定要素を生み出す。


希ルートでは、現実と向き合うことを決意して物語の束縛から抜け出し、杏と懇ろな仲になる。
繭実ルートでは、これからも亡くなった繭実のために物語を捧げてることを決意する。


◆構想1「病床にて」
素は未知の病により、入院することになる。杏は女医、瑠璃は患者、希は看護婦。
希は明るく快活だがどこか陰のあるという設定。実は素は天才音楽家のクローンの実験パターン体であり、治療ではなく観察として隔離されていたのだ。希はかつて素の前に存在し今は亡くなった別のクローン体と恋に落ちていたのだ。最初は、素にそのクローン体を重ねていたのだが、次第に素に惹かれるようになる。素は、奇跡的にクローン細胞を保つ手術に成功し回復するルートと希に忘れ形見を残すルートがある。


◆構想2「怨毒の槐」
素は元芸術家で資産家のお嬢と苦難の末結婚する。杏は秘書、瑠璃は妹、希はお嬢。
希は繭実と双子であり、出産時に母親死んだ。父は娘と引き換えに妻が死んだことを悔やむ。そのため希を溺愛し、繭実は地下牢に隔離して憎悪の対象とする役割分担にした。杏には繭実の世話を言いつける。次第に虐待はエスカレートしていき性的虐待にも及び、それをとめた杏は手篭めにされる。『月姫』の琥珀さんのように怨恨に狂った杏は家を潰そうとし、繭実を促して皆殺しを計画する。最期には怨恨の果てに館が燃える。



◆構想3「いつわりのおとこ」
昼のない夜ばかりの世界に迷い込む。杏はメイド、瑠璃は女主人、希は無感情。
素は瑠璃に希を抱けと命じられ、希を抱くようになる。希は性行為のうちに感情に目覚めていき、その存在を高めていく。繭実はそんな希とは対になる存在。彼女らは均衡のパワーバランスを保たないと存在できない。希の存在が希薄であったが故に消滅しないよう感情を与えるべく性行為を要請されていたのだ。繭実は自分が消されてしまうのではないかと焦るが、彼女らはテーゼとアンチテーゼがアウフヘーベンされて次なる存在に昇華する運命だった。素は両者を愛し3Pを行って、彼女らの魂を導く。