佐野しなの『僕は彼女の9番目』(電撃文庫)の感想・レビュー

サンタクロース女体化でオレ系少女と主人公の少年を取り合うハーレム小説。
サンタの女体化は筒井康隆『最後のクリスマス』でもやってるんですよ?
(正確にはサンタに寝取られて恋人が孕ませられようとしている状況なのだが)


どっかの漫画のお助け女神事務所よろしく女体化サンタクロースが現れて主人公の少年が「しばらくそばにいてほしい」と願ったことから同居生活が始まる。良くある展開だねとも思えるが、読みどころは女体化サンタは「個」として認められず、あくまでも「サンタクロース」として存在しているということ。少女は自分が個人であるとは考えておらず、むしろその方が仕事の役割上、情を引かなくて良いと考えていた。ところがどっこい、主人公たちと学校で馬鹿騒ぎをしているうちに個人としての社会認識が生まれてきてしまう。初めての感情に女体化サンタはきゅんきゅんしちゃうの。今までは、他人の幸せを感じればうれしかったのにもかかわらず、主人公とオレ系幼馴染少女がよろしくやっているのを見て、どす黒い嫉妬の感情も生まれていく。けれどその人間臭さが生きるってことなんじゃない?精霊っぽい存在である女体化サンタに人間の感情を植えつけた罪は重いぞ。これからどうなる?で次の巻に続く。