高等学校学習指導要領改定案 地理歴史科世界史B科目における「主題学習」について

新しい学習指導要領改定案では世界史Bにおいてどのような変更がなされたであろうか。
注目すべきはその目標において最終的な目標が「"日本国民"としての自覚を養う」となりよりいっそう日本が強調されるようになったことや、内容において帝国主義の扱いが内容(4)「諸地域世界の結合と変容」から内容(5)「地球世界の到来」に組み替えられ、帝国主義の膨張の結果としての世界大戦と体系付けられたこと等があげられる。そのようななか、とりわけ「主題学習」が重要視されるようになったのが、今回の改定案の特徴である。では、実際にどのような記述がなされているだろうか。科目「世界史B」の学習指導要領の記述は1:目標、2:内容、3:内容の取り扱い、という構成になっている。ここでは、各内容ごとに内容の取り扱いを見ていくこととする。

3-(3)「内容の取り扱い」における主題学習

3 内容の取り扱い

(3) 主題を設定して行う学習については,次の事項に配慮するものとする。
3-(3)-ア 学習の実施に当たっては,適切な時間を確保し,年間指導計画の中に位置付けて段階的・継続的に指導すること。また,主題の設定や資料の選択に際しては,生徒の興味・関心や学校,地域の実態等に十分配慮して行うこと。

3-(3)-イ 内容の(1)について

内容の(1)については、中学校社会科の内容との連続性に配慮して,主題を設定すること。その際,アについては,この科目の導入として位置付けること。イ及びウについては,適切な時期に実施するようにすること。

2-(1)世界史への扉
自然環境と人類のかかわり,日本の歴史と世界の歴史のつながり,日常生活にみる世界の歴史にかかわる適切な主題を設定し考察する活動を通して,地理と歴史への関心を高め,世界史学習の意義に気付かせる。

  • ア自然環境と人類のかかわり

自然環境と人類のかかわりについて,生業や暮らし,交通手段,資源,災害などから適切な歴史的事例を取り上げて考察させ,世界史学習における地理的視点の重要性に気付かせる。

  • イ日本の歴史と世界の歴史のつながり

日本と世界の諸地域の接触・交流について,人,もの,技術,文化,宗教,生活などから適切な歴史的事例を取り上げて考察させ,日本の歴史と世界の歴史のつながりに気付かせる。

  • ウ日常生活にみる世界の歴史

日常生活にみる世界の歴史について,衣食住,家族,余暇,スポーツなどから適切な事例を取り上げて,その変遷を考察させ,日常生活からも世界の歴史がとらえられることに気付かせる。

3-(3)-ウ 内容の(2)のエ,(3)のエ及び(4)のオについては,次の事項に留意すること。

3-(3)-ウ-(ア) それぞれの項目の内容に示された事項を参考にして主題を設定し,生徒の主体的な追究を通して,歴史的思考力を培うようにすること。

2-(2) 諸地域世界の形成
エ 時間軸からみる諸地域世界
主題を設定し,それに関連する事項を年代順に並べたり,因果関係で結び付けたり,地域世界ごとに比較したりするなどの活動を通して,世界史を時間的なつながりに着目して整理し,表現する技能を習得させる。

3-(3)-ウ-(イ) 内容の(2)のエ及び(3)のエについては,年表や地図その他の資料を活用して説明するなどの活動を取り入れること。

2-(3) 諸地域世界の交流と再編
エ 空間軸からみる諸地域世界
同時代性に着目して主題を設定し,諸地域世界の接触や交流などを地図上に表したり,世紀ごとに比較したりするなどの活動を通して,世界史を空間的なつながりに着目して整理し,表現する技能を習得させる。

3-(3)-ウ-(ウ) 内容の(4)のオについては,文字資料に加えて,絵画,風刺画,写真などの図像資料を取り入れるよう工夫すること。

2-(4) 諸地域世界の結合と変容

オ 資料からよみとく歴史の世界
主題を設定し,その時代の資料を選択して,資料の内容をまとめたり,その意図やねらいを推測したり,資料への疑問を提起したりするなどの活動を通して,資料を多面的・多角的に考察し,よみとく技能を習得させる。

3-(3)-エ 内容の(5)のオについては,内容の(5)のアからエまでに示された事項を参考にして主題を設定させること。

2-(5) 地球世界の到来
オ 資料を活用して探究する地球世界の課題
地球世界の課題に関する適切な主題を設定させ,歴史的観点から資料を活用して探究し,その成果を論述したり討論したりするなどの活動を通して,資料を活用し表現する技能を習得させるとともに,これからの世界と日本の在り方や世界の人々が協調し共存できる持続可能な社会の実現について展望させる。

帝国主義と社会の変容
科学技術の発達,企業・国家の巨大化,国民統合の進展,帝国主義諸国の抗争とアジア・アフリカの対応,国際的な移民の増加などを理解させ,19世紀後期から20世紀初期までの世界の動向と社会の特質について考察させる。

イ 二つの世界大戦と大衆社会の出現
総力戦としての二つの世界大戦,ロシア革命ソヴィエト連邦の成立,大衆社会の出現とファシズム世界恐慌と資本主義の変容,アジア・アフリカの民族運動などを理解させ,20世紀前半の世界の動向と社会の特質について考察させる。

ウ 米ソ冷戦と第三世界
米ソ両陣営による冷戦の展開,戦後の復興と経済発展,アジア・アフリカ諸国の独立とその後の課題,平和共存の模索などを理解させ,第二次世界大戦後から1960年代までの世界の動向について考察させる。

グローバル化した世界と日本
市場経済グローバル化とアジア経済の成長,冷戦の終結ソヴィエト連邦の解体,地域統合の進展,知識基盤社会への移行,地域紛争の頻発,環境や資源・エネルギーをめぐる問題などを理解させ,1970年代以降の世界と日本の動向及び社会の特質について考察させる。