伊藤剛「「ソワカちゃん」から「初音ミク」へ」『ユリイカ』第40巻第15号2008

この文章の趣旨。初音ミクを元に産み出された『魔法少女ソワカちゃん』を題材に、書き込みを通してコミュニケーションをはかることのできる動画共有サイトという場をキャラ表現の実験場と見なし、「キャラ」という表現制度の解析を進めることを大きな目標としている。以下本文書き抜きメモ。

  • ボーカロイドにおいては、アニメやマンガといった物語表現に先行して「比較的に簡単な線画を基本とした図像で描かれ、固有名詞で名指しされることによって『人格のようなもの』としての存在感を感じさせる」という要件が満たされ、まず「キャラ」が存在した。
  • エピソードを物語るテクストをほぼ欠いたまま、それでもキャラの「存在感」、「固有性」を増すような動きが可能であることを示している。
  • 「ミク」というキャラは、コミュニティによってその存在感を担保されてしまっている。そのため「設定」や「属性」はコミュニティの成員の共通認識になりえたものに限られる。(中略)これはむしろ逆にコミュニティの了解に縛られ無数の「物語」の前に開かれていながら固有の「物語」を持つことが出来ない。
  • 魔法少女ソワカちゃん』に見られるような多層構造は、あるいは今後webで発表される「マンガのようなもの」の新しい形態を示唆するものなのかもしれない。