玉城琴也、森崎亮人『キスアト 体験版』(戯画)の感想・レビュー

キスアトは、美術学園+喫茶店を舞台にした冬ゲー。
主人公くんは年度末製作を完成させるために努力を重ねながら芸術家肌のキャラたちを攻略していく。
やっぱり理性があり比較的落ち着いていて頑張っている主人公くんは好感が持てる。
また箱物としては専門性も一種の醍醐味であり、それをきちんと描けているところはとても良い。
体験版はバレンタインイベント終了までプレイできる。

体験版の概要

  • 美術モノ+喫茶店モノ
    • 本作は美術学園と喫茶店という箱物が舞台になっています。箱物は薄っぺらい舞台だと深まりを見せずただのキャラゲーに堕することになりがちです。そのため専門性をいかに絡めてくるかで物語が面白くなったりつまらなくなったりします。美術モノの4コマで『芸術家アートデザインクラス』がありますが、「美術」をネタにしてユーモア溢れる感じ?で描いているのでただのキャラモノとは一線を画しているかと思います。本作もただの舞台設定の装置としてだけでなく、美術モノの苦悩や葛藤などを冒頭の部分では垣間見せているので期待が膨らみますね。
  • 主人公くんの人間像と物語の目的
    • 主人公くんは彫刻・陶芸・建築などの「立体」を専攻する美術学園生。チャラ男ではなく落ち着いており工芸に対する情熱も持っているので、良い感じになっています。一昔に大量生産されたキャラゲーだとプレイヤーが感情移入しやすいように主人公くんが無個性で怠惰な人物設定になっていましたが、やはりそれはツマラン。娯楽でも何でもあるテーマや主題を描くためには主人公くんの造詣は大事です。主人公くんは高い学費を払って貰ってると自覚し、喫茶店で住み込みのバイトをしながら頑張る姿はナイスです。
    • 上記のような人物像設定の主人公くんが何をするかが物語りの原動力となりますよね。この作品では「年度末制作」を作成することが物語りの目的となっています。主人公くんはその制作のために共有のアトリエを学校から借り受けるのですが、共有者は一癖も二癖もある人物ばかりだったのです!という流れになっています。攻略対象となっているのは、やはり「美術モノ」なだけあって、芸術家肌な人格となっており、そのようなキャラたちとの交流を深めていくことで、様々な煩悶や葛藤を解消させていくことになります。

キャラクター表現

  • 月夜
    • 絵画の天才少女で本作のメインヒロイン。ほわほわとした緩い天才肌として描かれています。甘い物が大好きで主人公くんがバイト先で作ってきたおかしを、主人公くんの手から直接食べてしまうほどの無防備・無邪気さがニヨニヨできます。しかしながら、天才肌であることは周囲からの妬みや羨望、やっかみを受けることもまた事実です。学生ながら数多の賞を受賞し、既にプロである月夜は周囲から遠ざけられ格好のゴシップネタになっていたのです。当然、そんなことをされれば月夜の方からも壁を作ってしまうことになるわけで、交友範囲は極めて狭いものとなっていました。月夜の友人はヒロインBである梓以外には皆無であり、他には世間ずれしているアトリエの共有使用者であるまどか先輩が居るばかりとなっているのですね。絵に才能があるからこそ、他には何もないのであり、周囲からの期待に絶えず応え続けばならないというプレッシャーとストレス。そんな月夜の苦悩をどう救済してあげるのかが本編の注目ポイントです。

 

    • ヒロインB。メインヒロインの保護者的な親友でツンデレで黒髪ロングストレート。『大図書館の羊飼い』でいったら玉藻的ポジション。主人公くんと同じ「立体」専攻者であり、ブラコン。周囲の女子達からはお姉様属性で親しまれている、という典型的なキャラクター表現となっています。まぁこういうヒロインBは普段はしっかりしているものの、メンタル弱くて傷つきやすいのでそこを支えてあげればフラグは成立さ。梓はメインヒロインの月夜のお母さん的な立場で接しているけれども、それは私生活がだらしない月夜を自分が面倒を見ているという一種の歪んだ優越感としても読み取る事が出来るのではないでしょうか。なぜなら月夜の才能に関する談義となった時に、主人公くんが才能に憧れはするけれども嫉妬しないと応えたとき、梓はそんな主人公くんを見直したからです。おそらく梓は自分に無いものをもっている月夜や主人公くんに劣等感を感じて自滅していくのではないでしょうかと勝手にシナリオ予想してます。

 

  • まどか
    • 世間擦れしており分かってる感のある炉利枠の先輩。どこか達観したところがあり飄々としたところがあると書けば分かりやすいでしょうか?「情報」を専攻しており、卒業制作を控えて共有アトリエに泊まり込むこともしばしばです。主人公くんを異性としてカウントしておらず、下着姿で寝袋に入ることもあったのですが、主人公くんが先輩の体でも欲情することを白状すると、一転して照れ照れするところが可愛らしいです。聡明で先が見えるからこそ諦観している部分があり、その諦観している部分の隙をつかれると狼狽して可愛さを見せるというパターンですな。主人公くんが卒業制作で作ろうとしている寄せ木細工についてもパソコンで図面を引いて見せてくれたりと仲良しっぷり。先輩という立ち位置を生かして卒業ならではのシナリオになるといいんだけどなーと思います。

 

  • 有紗
    • フィンランド帰りの帰国子女で主人公くんのはとこ。主人公くんが下宿している親戚の喫茶店でのバイトの同僚でもあり学園では1個下の後輩。イントネーションがカタコトであり、容姿もバタ臭いところがあるので周囲からは遠巻きにされがち。一方で有紗の方も人見知りなためろくに友人ができず主人公くんの所にきてはかまって貰うのであった。その姿はまどか先輩曰く、校内では工芸作品を作る兄とそれを眺める妹としてもっぱらの噂になっていたのだとか。主人公くんに対しては最初から好感度マックスであり、主人公くんはそれを感じつつも意識的に性的な目線でみることは避けているという状況です。主人公くんも有紗も家庭環境の様子や自分たちの境遇を分かっているので迷惑や我が儘などをかけないように暮らしていますが、だからこそお互いの間では本音をぶつけ合おうねという「ワガママ同盟」なるものも良い感じですね。体験版ではこの有紗が2年次からの選択コースを選ぶために、共有アトリエに相談しにくるところで終わります。どんな展開になるか楽しみでしょうがない。