サノバウィッチ「戸隠憧子」シナリオの感想・レビュー

記憶消去系モノ。日常生活の記憶がこぼれ落ちていく恐怖を克服させてヒロインを救え。
同系統のものとしては、efの眼帯、プリコレのイモウト、ガンスリの条件付けなどがある。
この作品独自で差別化している表現としては、戸隠先輩が人化した元使い魔だということ。
恋を知りたいから人化したが恋を知ってしまったが故にがらんどうになってしまったという展開。
他のシナリオではみられないくらい主人公くんが積極的で戸隠先輩を救済する。
また使い魔の七緒が大活躍し要所をきっちり締めてくれます。七緒は攻略できないんですかね?

戸隠憧子シナリオの概要


  • 日常生活に空虚を感じる先輩の悩み
    • 戸隠先輩は1個上の先輩で甘やかし系お姉さん枠。共通√では生徒会長の引き継ぎ問題で登場してきます。共通での絡みが少ない先輩とどのようにしてフラグを構築していくのでしょうか?それは戸隠先輩が主人公くんの異能をキャンセル出来る存在であることから始まります。主人公くんは異能として他者の感情を感じ取れる特性を保持し、それによって悩まされてきましたが、戸隠先輩にはその異能が発動しなかったのです。主人公くんにとって戸隠先輩は自分の異能を気にすることなく接することのできる貴重な相手となるのですね。ある時オカ研部に恋愛相談が持ちかけられたことを契機に二人で恋愛の勉強をしていくことになりました。結構哲学的な命題にチャレンジしていく二人ですが、ある程度好感度蓄積がなされると戸隠先輩は自分が空虚な人間である悩みを打ち明けてくるのです。生存理由が肯定できない思春期ガールには承認欲求を満たして上げればフラグは成立さ。主人公くんは戸隠先輩が空虚だったとしても、頑張り続けている姿勢や真っ直ぐに努力できる真摯さに魅力を感じると告げるのでした。以下、戸隠先輩の空虚を感じる様子を引用。

「わたし、自分の時間ってどうやって過ごしたらいいのか分からなくて……実際に自分の時間を持つと持て余しちゃって。結局、勉強や料理ぐらいしかすることがなくてね。なんか、つまらなくて退屈だって改めて気づいた。それって、つまりわたし自身がつまらなくて退屈な中身のない人間ってことだから。」


  • 七緒先生のコミュニケーション講座
    • 日常生活に空虚さを抱いていた戸隠先輩ですが、主人公くんとの交流を経て、そのからっぽな自分を満たしていきます。先輩は主人公と肉体的情交を深めることを望むのですが、主人公くんはなかなか先輩を抱く決意をすることができません。それは主人公くんが異能に依存して生きてきたことに原因がありました。主人公くんは異能をキャンセルしてしまう戸隠先輩だからこそ気兼ねない付き合いができるようになったのですが、今度は逆に異能が使えないからこそ自分がどう思われているのか知ることができなくて躊躇してしまっていたのですね。戸惑う主人公くんに退位して綾地さんの使い魔七緒先生がコミュニケーションをレクチャーしてくれます。これにより主人公くんはコミュニケーション能力を徐々に育成していくことになるのですね!

人の心と感情はね。必ずしも一致するものじゃない。便宜上『心の欠片』と呼んでいるけれども、実際には『感情の欠片』と呼ぶ方が近いと思う。保科くんが能力で感じているのも、正確にはその場その場の『感情』だ。決して『心』ではないんだよ。キミは今まで相手の感情にダイレクトで触れてきた。だから相手の反応に対して敏感で臆病になっているところがある。だがそれはあくまでも感情であって心ではない。たとえ好きな相でも悪印象を持つこともあるし、嫌いな部分だってある。一時的にマイナスな感情を抱いたからといって、必ずしも好きではなくなったと言えないだろう?もしキミの能力がその先輩に使えたとしても、相手の心まで伺い知ることはできないんだよ。キミが触れるべきは感情ではなく心。そのために必要なものは能力ではなく知ろうとする意志。『心』なんてものは本人じゃないと知りうることはできない。いや、もしかしたら、本人ですら知り得ないことなのかもしれない。だからこそ、ぶつかってみないと分からないことも多いんだと思うよ。実際にはコミュニケーションで読み取るしかないだろうね



  • 記憶欠落系物語
    • 戸隠先輩が主人公くんの異能をキャンセルできてしまうのはどうしてでしょうか?戸隠先輩はかつて魔法少女の使い魔であり、主人公くんのママンと契約を交わしていたことが判明します。使い魔の最終目標は人化すること。戸隠先輩はかつて見事に人化に成功した使い魔の事例だったのです。戸隠先輩が人間に憧れたのは、コンビを組んでいた主人公くん'sママンが恋する姿をみて興味を持ったからでした。そのため戸隠先輩は改めて最初から人間としての生命を生きようと、人化するに当たっては過去の記憶を封印し、幼少期から人間の成長を辿ることになったのです。この記憶を封印する際に使用したのが自分の感情でした。故に戸隠先輩は羞恥心が微妙に欠如し結構下ネタを連発するあけっぴろげな性格になっていたのですね。しかし主人公くんとフラグを構築し情交を深めていくにあたって感情が暴走してしまいます。記憶の封印として使用されていた感情が過剰供給されてしまうのです。こうして戸隠先輩は幸せになればなるほど記憶を封じてしまい、記憶を思い出せなくなっていったのですね。とうとう廃人状態になった戸隠先輩を主人公くんは必死で支えていきます。主人公くんに対して辛い思いをさせたくないからと拒絶の姿勢をみせる戸隠先輩に主人公くんはかなり積極的な意志で介入します。がらんどうな人間であり生存理由がないと嘆く戸隠先輩に俺のために生きろと命令し、覚醒を促すのでした。こうして主人公くんに励まされた戸隠先輩は生きる力を取り戻し、立ち上がります。封じていた使い魔時代の記憶を完全に消滅させることで、感情による封印というシステムそのものを破壊したのです。こうして正常な感情を取り戻した戸隠先輩でしたが、同時に羞恥心も芽生え、どうして今まであんなに性に開放的だったのか恥じ入る姿が見どころとなっています。主人公くんは戸隠先輩の記憶問題に介入した際、異能を喪失してしまうのですが、七緒や戸隠先輩との交流で身につけたコミュスキルで前向きに生きていけるようになりました。最後には婚約指輪を贈ってハッピーエンドを迎えます。