ノラと皇女と野良猫ハート(体験版)の感想・レビュー

「死への存在」であることから目をそらし日常性に埋没する大衆を目覚めさせるはなし。
冥界からやってきたパトリシアちゃんが人間に対し滅びをもたらし死の尊さを啓蒙する。
テキストはぶっ飛んだギャグゲーバカゲーなのだが、要所要所に本格的なシリアス場面がぶち込まれる。
典型的な少女救済モノであり悩みを抱えた少女たちの解放が物語の目的となりそう。
主人公くんは社会不適合者たちの居場所を維持するため他界した母が残した家庭塾で奮闘する。

体験版概要


  • 冥界皇女パトリシア
    • この作品ではメインヒロインが冥界の皇女という設定で、「死への存在」であることを意識しなくなった大衆を啓蒙しにやってきます。大衆は「死への存在」であることから目をそらし、雑談や好奇心に心奪われて日常生活に埋没してしまっています。そんなダス=マンと化した人々にパトリシアは滅びを与えることで、死の尊さを教えようというのです。大衆は自分自身の固有の存在を見失い大多数の不特定な匿名の誰でもない人間のひとりとなってしまっています。その状態に対して、「死」は本来の自己に目覚めて存在することを促します。どうして「死」が本来の自己を覚醒させるのでしょうか?それは死が誰とも変わることのできない最も固有な可能性だからであり、死の可能性と向き合うことによって、人間はもっとも固有な自己の存在に目覚めることができるのです。そんなわけでパトリシアは現世へとやってくるのですが、あいにくのところ季節は春であり生命の息吹にさらされ気持ちが悪くなってしまいます。主人公くんはそんなパトリシアと出会うのですが、ボーイミーツガールが吐瀉物から始まるのですね。要はゲロを吐かれるわけです。現世のことをよく知らないパトリシアの様子を眺めて楽しむことが製作者サイドのねらいだと思われるのですが、見事に成功しており、エロ本を魔導書と思い込む一連の展開は結構好きです。



  • 主人公くんがパトリシアの眷属となり猫化するはなし
    • パトリシアを除く攻略ヒロインのたちは主人公くんと過去の絆を保有しており最初から好感度マックス。彼女らの中でも物語を動かす原動力となるのが、黒髪ロング堅物生真面目ガール黒木さん。黒木さんは主人公くんを攻略するために研究しつくした分厚いレポートを携え、告白の練習と称して主人公くんに襲い掛かってきます。好意を伝えようとするのですが、あくまでも練習と言い訳し続けため、「主人公くん攻略レポート」を魔導書と勘違いしたパトリシアの介入を招く結果になりさぁ大変。黒木さんの高らかな告白は主人公くんによりごめんなさいされ、パトリシアはどさくさのうちに主人公くんと接吻し、眷属にする契約を結んでしまいました。こうして主人公くんは接吻すると猫になるという性質を帯びることになったのです。



  • ヒロインたちトラウマ抱えすぎ
    • 主人公くんの亡母は個人家庭で塾のようなものを経営していました。そこは家庭環境に問題を抱えた社会不適合者見習いの子供たちが集う聖域となっていたのです。主人公くんグループのメンバーたちもそこの塾に集った仲間でした。現在も堅い絆で結ばれていますが、抱えている問題は結構シリアス。体験版において特に強調されているのが、真面目少女黒木さんと見た目ギャル子の明日原さん。黒木さんは母子家庭であり、母親は子供を自分の思うままにコントロールすることに生き甲斐を感じる人物でした。幼少期に主人公くんグループから引き離したのも母親であり娘を塾にぶち込んで勉強付けすることに喜びを感じています。一方でギャル子の明日原さんですが、彼女は中卒で上京したものの3週間で出戻りした少女でした。人生に敗北しUターンして地元に戻っても諾々と時間を消費するだけの毎日。そんな明日原さんをサポートしたのが主人公くんの家庭塾であり、明日原さんの高校受験の面倒を見てあげて、無事に合格に導いたのでした。しかし明日原さんは見た目ビッチであるため、誰にでも股を開くと思われてしまっています。体験版では彼を寝取ったと因縁をつけられ暴行を受ける様子が匂わされています。そして最後に多くは語られませんでしたが、主人公くんと同居するシャチも人外属性(機械化重武装装備など)があるようで主人公くんの求愛を断ったことを後悔するなどいろいろ問題を抱えていることがうかがわれます。体験版のラストは主人公くんの母親の命日にみんなで海で花火をするシーンで幕を閉じます。主人公くんは守ろうとするアジールとしての家庭塾、死への存在を啓発するパトリシア、トラウマを抱えるヒロインたちが見どころですね。