凍京NECRO「並行世界演算編(サブコン√)」の感想・レビュー

電子情報思念体(サブコン)がメインヒロインの死を覆すためグランドエンドに至る選択肢を演算するはなし。
今までの個別√はサブコンが演算してプレイヤーと共に見た並行世界という展開。
エチカにチェーンソーを捨てさせ父から習った武器を選び取らせるとグランド√に入れる。
早雲とエチカで共闘しミルグラムを打ち倒せ。
崇高なる死に方を求めるミルグラムの美的価値観を崩壊させ死なせないことが自殺志願者への罰となる。
こうしてイリアはサブコンにより復活し、凍京-大阪メガフロート合体エンドを迎えるのであった。

サブコン√概要


  • イリアの死を防ぐにはどうすればいいだろうか?
    • この作品の重要なモチーフとなっているのが「Substance-Concept」(通称サブコン)という情報思念体です。この思念体はメインヒロイン宝形イリアの特異な共感能力により具現化しました。サブコンはイリアと交流することで、その意識を拡張させていきます。これまで見てきた個別√はサブコン(とプレイヤー)が選択肢を演算してみた結果という設定です。しかしどの選択肢を選んでも、早雲かエチカかイリアは死んでしまうわけです。全員が死なない選択肢は存在するのでしょうか?サブコンは電子情報を駆使して検索しまくります。そうしてたどり着いた先が、エチカに愛用のチェーンソーを捨てさせ「リ・エリミネーター」による近接銃術を選び取らせるセカイ。エチカにとって「リ・エリミネーター」を使用することは父親への葛藤を解消することでもありました。近接銃術を使って父親を倒すことで、エチカは自分が父親を愛しており、認めてもらいたかったのだという受け入れ難い事実を受け入れることができたのでした。
      • 電脳世界の意識が具現化するという設定は他の多くの作品にも見られますが、凍京ネクロではイリアが20世紀後半〜21世紀初頭のオタク文化に造詣が深いというキャラクター表現にすることで、既成のキャラクター記号を再構成してサブコンを形而下の存在にしているというところがちょっと面白いですよねー。


  • 自殺志願者に対しては殺さないことが一番の罰
    • 自殺志願者ミルグラム氏の目的は美的死に方。本文では「本能から解き放たれ、人間らしい人間として美しさのために死にたかった、生きる事に全く意味を感じずに済むような美しさと共に、自らの意志で芸術作品の一部となって息絶えたかった」と述べられています。このような思想を持つミルグラム氏だからこそ、臥龍岡父子に「女への愛」よりも自分を殺すことを選ばせたかったのですね。イリア√ではまんまとこの思惑にはまるのですが、サブコン√では近接銃術を選んだエチカが助けに来て、早雲とともにサムライチャンバラを繰り広げます。死闘を経て早雲とエチカが選んだ手法とはミルグラムの美的価値観を崩壊させるというものでした。ミルグラムが自殺志願者となったのも、宗教画の修復士という過去があり人肉と血液で描かれた宗教画を修復した過去に起因していました。この独自の美的価値観そのものを脳内物質をいじることで崩壊させてしまうのです。こうしてミルグラムを殺して殉教者として祀りあげるのではなく、ただの発狂者として捕縛することに成功するのでした。


  • 凍京−大阪メガフロート合体エンド
    • イリアの共感能力は電子情報体をサブコンとして具現化させました。このサブコンのおかげで感情を媒介にした新物質を使って生命都市を構築することができるそうです。しかし生命都市はそれ単体では生殖できません。生命である以上、相手が必要なのです。そんなわけでイリアは大阪メガフロートに派遣され、大阪における電子情報思念体を具現化させる役割を担うのです。1年後、大阪メガフロートでも電子情報体を具現化させたイリアは、大陸大移動よろしく大阪メガフロートを移動させ凍京メガフロートまでやってきます。最終的に凍京−大阪のメガフロートが融合することで新たな都市が爆誕して世界は美しいエンドを迎えます。