あきゆめくるる「伊橋歩シナリオ」の感想・レビュー

学園闘争でリーダーとなり多くの兵を死なせてしまった少女の悔恨を解き放つはなし。
歩は政府へ寝返っており、ほぼ不死の主人公くんに再蜂起させることで、力をつける前に早期に鎮圧されるよう仕向けていた。
(歩は、政府から命に背けば不特定の異能保持者たちを殺していくと脅されていた)
主人公くんに転向がばれた歩は、闘争の際に生き残ってしまったことを悔いを撒き散らしながら過去跳躍して死のうとする。
主体的意志を確立した主人公くんは、過去改変して死のうとするヒロインの「生き残ってしまった現在」を肯定し続けるのだ。

伊橋歩√概要


  • 政府への転向
    • 伊橋歩は学園闘争のリーダーとして反乱部隊を率いたので、乱の鎮圧後、ループ世界へと流刑されました。その際に歩は転向し政府の犬となったのです。政府は主人公くんが力をつけることを恐れていました。主人公くんは異能として再生能力を保持していたため滅多なことでは死にません。反乱の頭首の条件として重要なことは死なないことであり、トップが生きていればいくらでも兵卒は補充され争いは燻り続けるのです。さらに主人公くんの家系は未だ権力を有していました。以上のことから、政府は主人公くんの力が強大にならぬうちに再蜂起させ、早期に潰そうとしていたのでした。歩は主人公くんが反乱を起こすように仕向けさせる役割を政府から期待されていたのですね。
    • ではなぜ歩は転向したのでしょうか。その理由として歩が持つ過去の悔恨を政府に利用されたことが挙げられます。歩は自分がリーダーとなったがゆえに、多くの兵卒を死なせてしまったことがトラウマとなっていました。そのため政府から異能保持者を殺すと脅されると、過去の瑕を抉られることとなり、精神崩壊してしまいます。こうして政府の犬が一丁上がりです。



  • 過去改変を望むヒロインの現在を肯定してあげる主人公くんについて
    • 過去の呪縛にとらわれる歩に対し、過去なんてかえちゃいなYOと真ヒロインの轟山サトリが揺さぶりをかけてきます。ここで宇宙規模の二重スリットが引用され、「過去は現在の観測方法によって変わってしまうあやふやで不確実なものなので、変えたい過去があるなら変えてしまえ」と教唆するのです。こうして学園闘争の時間軸へGO。歩の願いは学園闘争で生き残らずに死んでしまうこと。兵を死なせたのに自分だけが生き残ってしまった罪の意識を解消するには生き残らずに死ぬしかないのです。そんな病んでいる考えのヒロインを救済するのはいつだって主人公くん。これまで自分の器ではないと責任から逃れようとしていた自分の弱さを主体的な意志の確立で乗り越えた主人公くんの成長をとくとみよ。死にたがるヒロインに這いずり回って生きろよと説得を試みる場面は個人的名場面となっております。おススメ。主人公くんの活躍により強さを得た歩は罪と罰を背負いながらもそれがどうした!と生きる決意をします。ここで発動するのが物語全編を貫いているラブコメ空間思想。どんな困難もラブコメの刺激にしかならないし、それをコミカルに対処してあげるのだわと息まきます。まさにラブコメによって現在を肯定したのでした。


  • ヒロインを救済するごとに可能性世界で新たな異能を得ていく主人公くんの構図
    • 主人公くんは過去を改変しようとする歩とともに過去へと飛ぶわけですが、現在の時間軸に戻れるように工夫を凝らしていました。それが己の再生能力の利用。主人公くんは、自分の肉体の一部を量子に分解して空間に漂わせるようにしておいたのです。これによりどの空間にも具現化できるよになり、汎神論よろしく遍く全てにおいて自己を現出できるようになったのでした。この状態を指して、轟山サトリからは空間を越えられるようになったと評されます。こうしてヒロインを攻略するごとに主人公くんは異能を増加させていくことになるようです。