気が滅入っている時には退廃的な薄い本を読んでさらに陰鬱な気分に。

精神的に摩耗し、疲弊することも多い今日この頃。寝ても休んでも虚脱感。なんか何もしないのにエネルギーが身体から流れ出すような感じ。故に何もする気になれない。時間だけが無為に過ぎてゆく。感じるのは焦燥感。休みの日なのに生産的なことは何もできず、ただひたすら時間にたゆたうのみ。時間の浪費。そんなわけで退廃的な薄い本を読んだ。

いちはや『妹は虚弱体質』(2016年12月31日)の感想・レビュー


  • 代用品として自己を見なす兄
    • 兄妹モノ。同じく退廃的な兄妹モノとしては三上ミカ先生の兄妹睡姦シリーズものが有名ですが、三上ミカ先生のものがハッピーエンドなのに対して、いちはや先生の方は設定が救いようがありません。妹がとても明るい性格なだけに余計に、そのギャップが救いようのなさを強調しています。話の流れは以下のような感じ。病弱なイモウトのために行動する兄が、次第に懇ろな仲になっていく展開。しかし、兄は自分のことを「妹が回復し、きちんとした友達や彼氏を作るまでの代用品」として見なしていました。ゆえに「妹のためには何でもしてやりたかった」と、妹に求められることで身体を重ねていたので、どこか理性で自制していたのです。つい本能的に妹を貪ってしまった時には「本気でしてくれてる感じがして嬉しかった」と喜ばれるほど。



  • 代用品だからこそ健康フラグをへし折る兄
    • しかしここからが怒濤の展開。妹が虚弱体質なのは理由があったのです。なんと母親は精神的に異常であり、自己の介護欲求を満たすために、わざと大量に薬を服役させていたことが判明します。その事実に愕然とする兄でしたが、兄自身も母親と同じ道に堕ちていく描写がとても素晴らしく描けています。妹の虚弱体質は薬を止めれば治るといわれたにも関わらず、病気が治れば代用品としての自分はいらなくなるため、妹への投薬を止めようとしなかったのです。妹がいつもの習慣として薬を飲もうとした時、真実を告げるために声をかけるのですが、一瞬の躊躇の後、「忘れずに飲まないとな」と薬を飲むように促して終わるところは空白のページとともに退廃的な雰囲気を醸し出しておりとても好きです。