枯野瑛『終末なにしてますか?もう一度だけ、会えますか?♯01』(KADOKAWA、2016)の感想・レビュー

「世界なんて滅びればいいのに」と願った主人公くんが世界を滅ぼすために画策するはなし。
主人公くんは尊敬する義兄が世界の為に自分の命を懸けて死んだので、自己犠牲を何よりも嫌う。
そんな主人公くんが、仲間たちのために命を散らそうとする死霊兵器たちを担当することになる。
1巻のヒロインはティアットで、主人公くんは彼女の自己犠牲を否定するために挑んでいく。

概要

  • 世界滅びろ系主人公くん
    • 魔獣の襲撃により滅亡を迎えつつある世界で、主人公くんは軍に属して戦う地位についていました。しかしそれは世を忍ぶ仮の姿で、滅びつつある世界なのだからそのまま滅びてしまおうという危険思想の持主でもあったのです。なぜ主人公くんがそのように歪んでしまったかというと、兄が世界のために自己を犠牲にしたのに、結局は報われず、スケープゴートとして大衆に処刑されてしまったからでした。主人公くんの義兄は平和ボケをした大衆に対し、魔獣の脅威を示すことで軍が果たしている実績を示そうとしたのです。義兄が放った魔獣は主人公くんの許嫁や家族を殺していきます。そして義兄は平和な状況に魔獣を持ち込んだ戦犯扱いとして処分されたのでした。大局的に見れば世界のためになり、それに殉じて死んだ理想の死ともいえるでしょう。しかし主人公くんは衝撃を受けます。世界のために自己を犠牲にしなければならないのだったら、世界の方が滅びればいいと、世界を滅ぼしにかかるのでした。
  • ティアットはクトリに憧れるも果たせず自己犠牲だけに価値を見出すの
    • 自己犠牲を憎む主人公くんは皮肉にも自己犠牲大好き少女たちの世話を焼くことになります。1巻では特にティアットがメインヒロインを張ります。ティアットは前作におけるクトリの在り方に憧れていました。しかし、自分はクトリのような大恋愛を経てメガンテするという満足した死を迎えられないことを悟ります。では自分にできることはなにか?ティアットの前に残っていたのは、仲間のために死ぬことだけでした。こうして理想に溺れて溺死した結果、ティアットにはメガンテしか選択肢がなくなっていたのです。玉砕特攻のさなか、主人公くんはティアットに向かって説教をかまします。クトリへの尊崇の念が逆にティアットを苦しめているのだと、ティアットはティアットなりの生存理由を見出せと。こうして主人公くんによりティアットは転向。人生に意味なんてないさ、しかしそれを探すのが生き甲斐ってもんさと『鳥人大系』エンドを迎えます。