枯野瑛『終末なにしてますか?もう一度だけ、会えますか?♯02』(KADOKAWA、2016)の感想・レビュー

『すかもか』の2巻は死霊兵器少女がその種族に埋め込まれた無意識的な本能に従い自我が芽生えぬままにメガンテする話。
一部の人間に汚れ仕事を押し付けることを当然だと思う支配階級の傲慢さに革命精神を抱かせます。
主人公くんが死霊兵器少女の解放を決意する瞬間なのでした。
これ以後、主人公くんは大義の理念ではなく、死霊兵器少女を救うことが目的になっていきます。

搾取される側が何も言わなかったら、搾取する側は、死ぬまで他人から搾り取るのが当たり前って生き物に堕ちていく。誰だって際限なく甘やかされたら、堕落するんだ。

  • 主人公くんは自分自身が、日頃から自分が憎悪の対象としている存在と変わらなかったことに気付き愕然とする
    • 主人公くんは終末思想の持ち主であり世界滅びろ系です。日頃は優等生を演じて軍人に擬態していますが、その目的は増えすぎた人口よ広すぎる領土を間引いてやろうとしていたことでした。その手段として軍が保有する機密兵器を狙っていたのですが、ある時あっさりとその兵器を見つけることになります。その兵器こそがティアットたち死霊兵器少女だったのです。
    • ティアットたちは種族的に自己犠牲大好きであり、特攻玉砕して死ぬだけの運命にありました。主人公くんはティアットたちの犠牲の上に成り立つ世界などクソくらえと思うようになり彼女たちの救済と解放を望みます。
    • 主人公くんは自分だけは他者の命の上に成り立っていることを忘れないのだ!ということを自己を支える心情として生きています。しかしその価値観が大きく揺さぶられることになるのが、この2巻の面白いところ、醍醐味なのです。
    • 2巻では主人公くんが死霊兵器の幼女体を発見します。純粋無垢なる少女たちと微笑ましいやり取りが行われるのですが、幼女体だからこそ種族にしみ込んだ遺伝子的本能に忠実です。自己犠牲を尊び玉砕特攻。主人公くんが怪我を負いピンチに陥ると、死霊兵器幼女はソッコーでメガンテします。主人公くんは従来、誰かの犠牲を平然と受ける連中に反吐が出るぜと常々言っていたのですが、その当事者となってしまったのです。つまりは死霊兵器幼女の犠牲の上に自分が生き残ることになってしまったのです。さらに主人公くんにとって更なる悲劇となったのが、幼女メガンテの爆風を防ぐために死霊兵器少女ラキシュが自らの命と引き換えに主人公くんを守ってくれていたことでした。幼女は死に、ラキシュは人格崩壊。こうして主人公くんは、自分自身が今まで自分が憎悪してきた存在と何ら変わらないことに気づくのでした。ここが非常に面白く感じられるのです。