枯野瑛『終末なにしてますか?もう一度だけ、会えますか?♯04』(KADOKAWA、2017)の感想・レビュー

本当は長持ちするはずの死霊兵器少女が、使い捨てにされる理由が、明らかになるはなし。
その理由とは、かつて巨大な軍事力となる成体死霊兵器少女が殺戮に使われたからだった。
以来死霊兵器少女は消耗品として「調整」されるようになっていった。
さらに外的の脅威がなくなると死霊兵器の存在そのものが危険視され「調整」すら行われなくなる。
ティアットたちは「調整」を再開してもらうために自分たち死霊兵器の有用性を示そうとしいたが・・・
それはお門違いであり骨折り損のくたびれ儲けだったのである。

浮遊大陸間大戦争へ向けて!!の巻き

  • 死霊兵器少女が消耗品である問題
    • 死霊兵器少女たちは地上の始祖エルクの魂魄体の欠片から発生しています。そしてその魂魄の一部が具現化して幼体となって時を過ごした後、「調整」を受けて死霊兵器となります。もし「調整」を受けなければ幼体はそのまま還っていくわけです。『終末も』の舞台では、この「調整」が行われなくなっていました。これはティアットたちにとっては後輩の幼体が消滅していくことを意味します。ゆえに再び「調整」を行ってもらうために死霊兵器としての有用性を示そうとしていたのですね。
    • しかしこのティアットたちの努力がまったく徒労に終わるものであったことが判明します。なんとわざと「調整」をやめ、死霊兵器を緩やかに消滅させようとしていたのです。そのわけはかつて死霊兵器を巨大な軍事力として使用していたという業によるものでした。本当は死霊兵器を恒常的に長く使う技術も確立されていたのです。しかしその結果、殺戮という悲劇を生んでしまったのですね。それを契機にわざと死霊兵器を成体にせず、消耗品として規制することになりました。さらには死霊兵器の存在そのものを抹消するため、「調整」すら行わないようにしようと技術を喪失させようとの意図が働いていたのです。
    • これを知った主人公くんは、死霊兵器の存亡は全くもってティアットたちの生死には関わらないことに気づき、玉砕特攻をしてメガンテすることで後輩の幼体たちを救おうとするティアットを説得しようとしたのでした。
  • 主人公くんと3人?の攻略ヒロイン
    • 正妻
      • ティアット(緑)。かつてクトリに憧れていましたが、現実に諦観し、メガンテして後輩を救うことだけに生存理由を見出すことになったヒロインです。元来主人公くんは、一部の存在に責任を押し付けて臭い物に蓋をし安穏と生きる大衆を憎悪していました。それゆえ、死霊兵器少女のメガンテに依存する軍の体質を改革しようと試みていたのです。こうして主人公くんは、ティアットの自己犠牲願望を否定して、自分の命を大切にして欲しいと願うようになったのです。命を粗末にするものは、たとえ当人であっても許せない!救ってやる!!というのが主人公くんのモットーであり、その対象がティアットというわけです。正妻ヒロインですね、ティアット。
    • 連れ添い
      • エルバinラキシュ(オレンジ)。ラキシュがメガンテして人格崩壊した後、ラキシュの肉体に記憶喪失状態のエルバの魂が混じり合った存在。エルバはかつて死霊兵器が成体として軍事力を発揮していた頃の人物。その軍事力によって虐殺を実行してしまったことにより、自らの所業を悔いており、死霊兵器の存在抹消を願ったものでした。このエルバとしての魂は、ラキシュの前世の人格です。本来ならば、一つの器に二つの魂であるため競合するはずなのですが、主人公くんへの親愛の情が潤滑油となり一つの魂として溶け合っていきます。主人公くんは自分の幻覚異能を用いてエルバの親愛を得たと後悔しているのですが、当人のエルバがそれに気づいており尚且つ積極的に受け入れて主人公くんに死ぬまで連れ添う覚悟でいるのがいじらしいですね。
      • ついでに主人公くんはエルバに使った異能を、固形化してしまった前作の「すかすか主人公くん」にも発動してしまっています。主人公くんは「すかすか主人公くん」に意識を乗っ取られつつあるのですが、その状態が死霊兵器が前世の記憶に悩まされるという同じ構造になっており、主人公くんに死霊兵器のことをよりよく理解させる一手段となっています。すてき。
    • 元許嫁
      • 猫族マルグリット。会ってるのに主人公くんに存在を認識されず、すれ違ってしまっています。しかもマルグリットが主人公くんに姿を明かさないのと同じ理由で。それは主人公くんの兄が都市に魔獣を解き放った事件以後の話なのですが、両者とも生き延びるために色々なことを行ってきたので、もうこの身はかつて相手に愛してもらった身ではないと思い込んでいるのですね。嗚呼すれ違い。しかも4巻では主人公くんがマルグリットと行動を共にしているのに、まるで気づきませんでした。しかもマルグリットの前でラキシュへの想いを語る主人公くん。元許嫁に現連れ添いへの心情を吐露するのでした。